第一生命保険株式会社は、全国の小学生を対象に行った「第32回大人になったらなりたいもの」によれば、男子の大人になったらなりたいもの第1位は「会社員」、女子の第一位は「パティシエ」となった。
同調査は、1989年に第1回調査が行われ2020年12月調査で32回目を数える。
これまでの調査結果と同様に、特に男子の上位にあげられる「大人になったらなりたいもの」は僅差であった。
第1位は会社員で8.8%、2位がYouTuber/動画投稿者8.4%、3位がサッカー選手7.6%、4位がゲーム制作7.2%、5位が野球選手6.4%、6位が鉄道の運転士、7位が警察官4.5%、9位が料理人/シェフ3.4%、10位が同率でITエンジニア/プログラマーと教師/教員2.9%となり、1位から10位までが数ポイントの僅差で続いている。
女子については、第1位のパティシエが14.1%で多くの回答を集めているが、2位以下は男子と同様に僅差で「なりたいもの」が続いている(2位教師/教員 7.1%、3位幼稚園の先生/保育士6.0%、4位会社員5.8%、5位漫画家4.5%、6位料理人/シェフ4.3%、6位看護師4.3%、8位芸能人/アイドル3.8%、9位公務員 3.4%、9位医師3.4%)。
「大人になったらなりたいもの」の調査項目や収集方法に変更が加えられているため、一概に現在調査との比較は難しいものの、前回の第31回調査では、男子の「なりたいもの」第1位はサッカー選手で9.3%、2位は野球選手9.1%、3位が警察官・刑事5.8%であった。第32回調査で第1位となった会社員はランク外だった。
女子の前回調査の第1位は食べ物屋さんで15.9%、2位は保育園・幼稚園の先生9.1%、3位は看護師6.6%となっている。
さらに「大人になったらなりたいもの」1989年の第1回調査では、男子の「なりたいもの」の第1位は野球選手で15.1%、2位は警察官・刑事で7.0%、3位はおもちゃ屋さんで5.0%と、小学生男子の「なりたいもの」は2位と8.1ポイントの差をつけて野球選手だった。
女子の「なりたいもの」第1位は保育園・幼稚園の先生で12.0%、2位はお菓子屋さんで8.5%、3位が学校の先生で8.1%であった。
この調査結果を見ると、小学生が「大人になったらなりたいもの」は、自分が「知っている」仕事や職業であることが分かる。
年代によって順位の変動はあれど、男子女子ともに「知っている」ことが「大人になったらなりたいもの」の原点になっていると思われる。
「大人になったらなりたいもの」が自身が「知っている」範囲内で選択されていることが正しいとして、大学生が自己分析で問われる「やりたいこと」の選択行動と違いはあるのだろうか。
もし小学生の「大人になったらなりたいもの」の選択と、大学生の「やりたいこと」の選択の原点が共通して、自身が「知っている」かどうかにあるとすれば、「やりたいこと」の選択肢を広げるために、「知っている」範囲を広げることが求められるのではないだろうか。
1990年代後半から盛んに言われるようになった「キャリア教育」によって、インターンシップ等の手法により「知っている」ことの範囲を広げる施策は行われている。しかしながら、就職活動をスタートさせる20代前半までに広げられる職業に関する知識、経験には限りがある。
厳格な意味で職業、仕事についてリアリティを持って「知っている」を大きく広げるためには、自身が実際に職業に就き、働き、働きながら得られる知識、情報が必要となるだろう。
大切なことは、小学生に限らず大学生においても「知っている」範囲で選択した「やりたいこと」が、実際に自身で働くことを通じて得た知識、経験を基に「やりたいこと」を再定義し直した時、その「やりたいこと」を実現できる「力」を蓄えているかだと思う。
大学時代までに得た知識、経験で一旦は定めた「やりたいこと」であっても、「知っている」ことが広がることによって、「やりたいこと」が変わる可能性は大きくある。逆に、就職活動を迎えてもなお「やりたいこと」が定まっていなくとも、実際に働き出し「知っている」ことが広がり、「やりたいこと」が定まる可能性もまた大きくある。
「やりたいこと」が定まった時に、動き出せる「力」を如何に日頃から蓄えるかが、主体的なキャリア形成、豊かな人生には必要だと思う。
【引用・参考文献】
・「第32回『大人になったらなりたいもの』調査結果」第一生命保険株式会社(2021)
・「第31回『大人になったらなりたいもの』調査結果」第一生命保険株式会社(2020)
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