コラム「何のため、誰のために働くのか」が明確な会社の特徴。

「何のため、誰のために働くのか」が明確な会社の特徴。

ジム・コリンズ「ビジョナリーカンパニー」からの示唆

近年、新卒者として入社した会社を数カ月から数年といった早期に退職する若年者が増加傾向を示している。
学校を卒業した新卒者を4月に一括で採用し、採用した新卒者を全員一律に教育を施し、長期的に雇用する日本的雇用慣行が崩れたと言われて久しい。
日本的雇用慣行においては、学校を卒業して直ぐに会社に入社し、長期雇用を経て、定年を迎え、会社を去るまでの40年余りを同じメンバーで過ごすため、疑似家族と見做されるまでの凝縮した人間関係が社内で形成されていた。
会社は従業員の雇用と賃金を保障する一方で、会社≒家の発展のために貢献することを求めた。
従業員としても、会社≒家が発展することで、自身と「仲間」の賃金や福利厚生が増加することを期待し、会社と「仲間」の従業員とが一体感を感じながら、働くことが出来ていた。
日本的雇用慣行が❝あたり前❞と思われていた時代においては、人生の多くの時間を共有する「仲間」と一緒になって、自身と「仲間」の生活を豊かにするため働き、結果的に会社の利潤も獲得するというように、「誰かのため」の対象が身近な「仲間」に向けることもできた。

しかしながら、近年は、長期勤続を希望しない若年層の就業意識も一因となり、会社を疑似家族と見做す傾向は後退を続けている。
疑似家族の後退と伴に上司、先輩、同僚、後輩等を「仲間」と見做す意識も危機に瀕している。
ここから「仲間」と一緒になって、「仲間」のために「働く」という、「誰のため」の意識の一つが失われたといえる。

一般社団法人日本能率協会が2018年に発表した「入社半年・2年目 若手社員意識調査」によれば、所属している「会社」および従事している「仕事」が「社会に役立っている」と感じている社会人の9割以上が、所属している会社と仕事に対して「とても満足」していることが明らかにされている。
働く上で、「誰かの役に立っている」と感じられることは、会社や仕事に対して「満足感」を得るために重要なポイントであると言える。

では、どのような会社が働くことに対して「誰かの役になっている」と感じさせてくれるのだろうか。
一つの示唆が、ジム・コリンズの『ビジョナリーカンパニー』から見出せる。
ジム・コリンズが定義した「ビジョナリーカンパ―」とは、「ビジョンを持っている企業、未来志向の企業、先見的な企業であり、業界で卓越した企業、同業他社の間で広く尊敬を集め、大きなインパクトを世界に与え続けてきた企業」のこと。

そして、このビジョナリーカンパニーの「重要な要素は、基本理念、つまり、単なるカネ儲けを超えた基本的価値観と目的意識」であり、「基本理念は、組織のすべての人々の指針となり、活力を与えるものであり、長い間、ほとんど変わらない」という。
また基本理念は「われわれが何者で、なんのために存在し、何をやっているのかを示すものである」。
さらに重要な点は、基本「理念が本物であり、企業がどこまで理念を突き通しているのか」であるという。

ジム・コリンズからの示唆により、会社選びの一つの重要な軸として、
企業が掲げる「企業理念」や「経営理念」に、「単なるカネ儲けを超えた基本的価値観と目的意識」があるかという点をあげられる。

そして、掲げられた「企業理念」や「経営理念」が「単なるカネ儲けを超えた基本的価値観と目的意識」があったとして、「理念」を守り切る意識が会社全体に浸透しているかが、一層重要な点となる。

会社は採用面接の際に多くのことを求職者に問いてくる。
求める職務遂行能力があるかないかを見極めるためには必要な過程といえる。
一方で、求職者も働く場において「満足」を得られるかどうかを見極めるために、企業に「理念」を尋ね、その理念をどのように守ってきたかを問いてみることはどうだろうか。
しっかりした企業理念と、理念を守り抜こうとする姿勢があるかないかは、働く人が充実したキャリアを歩むための会社選びの一つの基準になると思われる。

【引用・参考文献】
・「入社半年・若手社員意識調査」一般社団法人日本能率協会(2018)
・「ビジョナリーカンパニー」ジム・コリンズ(1995)

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