新卒就活生の多くが悩む「やりたいこと」。
社会に出て、働く際に、自分は何が「やりたい」のか。これを明確に言える学生はそう多くはないのではないか。
新卒就活生が語る「やりたいこと」の中には、仕事そのものではなく、会社の事業内容が含まれていることもある。
例えば、「私が『やりたいことは』エンターテイメントコンテンツの作成に携わることです」、といった新卒就活生の「やりたいこと」の言説には、成し遂げたい仕事そのものへの言及がなされていない。
エンターテイメントコンテンツ作成会社に入社した後に、会社から割り振られた仕事を行います、といった意識が垣間見れる「やりたいこと」の言説と言える。
ただ当初はこのような「やりたいこと」が、会社の事業内容を示していたとしても、「対話」を続ける中で、エンターテイメントコンテンツ制作会社が社会に対して提供している価値を「娯楽」であると定義し、さらに「娯楽」が持つ効用を人々の人生に一時の潤いを与えること、と定めた後に「やりたいこと」を再度言葉にしたところ、「『やりたいこと』はエンターテイメントコンテンツを世界の多くの人々に楽しんでもらい、幸せな時間を増やすため、作品を多くの人に届ける広報の仕事を行うことです」と、仕事そのものが持つ価値にフォーカスし始めることも多い。
新卒就活生の「やりたいこと」、深めていった先には、シンプルに「人に楽しんでもらいたい」とか「人の役に立ちたい」といった、意義ある仕事に携わることを望んでいることに気がつかされる。
アメリカの社会学者ロバート・N・ベラーは著書「心の習慣」において、「仕事」の概念を3つの類型で説明している。
①「ジョブ(職)」
仕事とは金を稼いで生活を立てるための手段。
②「キャリア(経歴)」
仕事とは職務上の功績や昇進によって前進していく生涯の経過を示すものとなる。
③「コーリング(召命・天職)」
仕事とはある人の活動と性格に具体的理想を与えるものであり、このとき仕事はその人の生活の道徳的意味から切り離せないものとなる。
新卒就活生も、まずイメージするのは、仕事とは金を稼いで生活を立てるための手段であるジョブ(職)、自己分析を行うことで、仕事とは職務上の功績や昇進によって前進していく生涯の経過を示すものとなるキャリア(経歴)を明らかにしていく。
キャリア(経歴)の先にある、仕事とはある人の活動と性格に具体的理想を与えるものであり、このとき仕事はその人の生活の道徳的意味から切り離せないものとなるコーリング(召命・天職)を、社会に出る前の新卒者が明確することは非常に困難な過程と言える。
みな社会に出て自分にとっても、他社にとっても意義ある仕事を望んでいる。
ただ意義ある仕事とは何で、どうすれば辿り着けるかを、一人で解き明かしていくことは難しい。
ここに他者(カウンセラー)との「対話」を通じた深化が求められると言える。
【引用・参考文献】
・「心の習慣」ロバート・N・ベラー(1991年)
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