10月1日に多くの企業で「内定式」が行われ、2022卒の新卒者就職採用活動も一つの節目を迎えた。
学生側の「売り手市場」が2022卒についても引き続いており、10月1日の「内定式」を前に複数社から内定を取得している新卒者は、来春入社する1社に絞り込み、内定を辞退した。10月1日の「内定式」を前に、複数社から内定を得ていた新卒者がどのような動きをしていたかを株式会社マイナビの調査から見てみよう。
「マイナビ 2022年卒大学生 活動実態調査(9月)」によれば、9月末時点、2022卒者の内々定率は86.6%。新卒者一人あたりが保有している内々定数は2.3社であった。別の調査では9月1日時点、複数社から内定を得ている割合は62.5%という結果もある(リクルートワークス研究所調べによる)。
8割を超える新卒者が内々定を得ており、その中で、内々定先について、否定的な意見や反対を受けたあると答えた新卒者は27.7%であった。さらに、内々定先について否定的な意見や反対されたのは父親・母親が69.9%であり、多くの場合、両親から反対されることが分かった。
では、どのような理由で両親は子供が獲得した内々定先を否定的な意見や反対をしているのか。最も多い否定的な意見や反対を受けた点は「安定性」で28.5%、次いで「将来性」26.2%、「福利厚生制度(休暇や残業時間・給与を含む)」24.2%、「勤務地」20.5%となった。
父親・母親としては内々定先の「安定性」と「将来性」を重視していることが窺い知れる。
さらに、主として父親・母親に内々定先を反対されたことで、どのような影響があったかを見てみると、反対された内々定先を「辞退した」学生は30.0%であった。一方で、反対されたが「入社を決めた」新卒者は66.8%と、自らの意思に従った決断を下した新卒者が多かったことが分かった。
現在の新卒者の父親・母親世代は、約30年前の1990年前後に新卒者として社会に出ていることが多い。自身の子供の内々定先の「安定性」や「将来性」を理由に反対することは、1990年当時の新卒者が会社を選ぶ理由の2番目に多い回答として「会社の将来性」を挙げていたことと無関係ではないだろう(公益財団法人日本生産性本部調べによる)。
一方で、現在の新卒者が会社を選択する理由の最も多い回答が「能力・個性が生かせる」であり、逆に最も低い回答が「会社の将来性」であることが、父親・母親に内々定先を反対されても、約7割がそのまま「入社を決める」ことと整合しているように思われる。
現在の新卒者が親の反対意見にも関わらず、自らの意思で入社先を決めていることは、主体的なキャリア形成意識が今の世代には根付いているからではないだろうか。
親世代の入社先に求める「安定志向」を乗り越えて、自らの「能力・個性の発揮」に向かう姿勢は、主体性の観点から好ましく、また頼もしく見える。
【引用・参考文献】
・「マイナビ2022年卒 大学生 活動実績調査(9月)」株式会社マイナビ(2021)
・「就職プロセス調査(2022年卒)『2021年9月1日時点 内定状況』」就職みらい研究所(2021)
・「平成31年度新入社員『働くことの意識』調査結果」公益財団法人日本生産性本部(2019年)
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