コラム大卒後「進学で就職でもないことが明らかな者」4万人。

大卒後「進学で就職でもないことが明らかな者」4万人。

「就職状況調査」と「学校基本調査」

2021年5月、厚生労働省と文部科学省が公表した「令和2年度大学等卒業者の就職状況調査(令和3年4月1日現在)」によれば、2021年3月大学等卒業者の就職率は96.0%であった。前年の2020年3月卒の就職率98.0%よりは2ポイント下がったものの就職率は高水準を維持し続けていると言える。
一方で、就職率96.0%の母数となる学生数は「就職希望者」であることには注意が必要となる。ちなみに、就職率を算出する基礎となる調査対象大学における「就職希望者」の割合、就職希望率は76.0%であり、就職を希望した76.0%の学生の内、実際に就職した学生の割合が96.0%ということになる。

さて、文部科学省が公表する重要な調査の一つに「学校基本調査」がある。この調査では、大学を含む幼稚園から大学院までを卒業した者の「その後」を明らかにしている。
2020年12月に公表された「令和2年度学校基本調査」によれば、2020年3月卒業の大学生は573,947人。そのうち「就職者」は446,082人で全卒業者の77.7%であった。ちなみに大学院等への「進学者」は64,627人、11.3%であった。

「学校基本調査」で注目すべきは「左記以外の者」。左記以外の者とは「進学でも就職でもないことが明らかな者である(進学準備中の者、就職準備中の者、家事の手伝いなど。)」のこと。
卒業後に「左記以外の者」=進学でも就職でもないことが明らかな者は、40,809人、全卒業者の7.1%に上る。
この40,809人のうち何人が、注釈に示された進学準備中の者、就職準備中の者、家事の手伝いなのか、といった内訳は明らかにされていない。新卒者の就職相談を行う私たちとしては、40,809人の中でも「就職準備中の者」、さらに言えば、就職を希望していながら不本意ながら卒業までに就職先を見つけられなかった新卒者へのサポートの在り方について考えざるを得ない。

「就職状況調査」において公表される「就職率」は就職希望者が母数となる算出される一方、「学校基本調査」は全大学生の卒業後を調査した数字となる。
「就職状況調査」における2020年3月大学等卒業者の就職率は98.0%。「学校基本調査」における2020年3月大学卒業後の「就職者(率)」は77.7%である一方、「左記以外の者(進学でも就職でもないことが明らかな者)」は40,809人、7.7%であった。
さらに見てみると、「就職状況調査」における2010年3月大学等卒業者の就職率は91.8%と、就職希望者の9割以上が就職しているという公表値の一方、「学校基本調査」における2010年3月大学卒業者541,428人、そのうち「就職者」は329,190人、「卒業者に占める就職者の割合」は60.8%であった。2010年3月卒者の「就職者」以外の状況は、進学者86,039人(全卒業者の15.9%)、そして「左記以外の者」=「進学でも就職でもないことが明らかな者」は87,174人、全卒業者の16.1%に上っている。

昨今「売り手市場」と称される新卒者労働市場ではあるものの、「就職率」と共に、「左記以外の者」の数字にも注視することで、「誰一人取り残さない」新卒者就職活動サポートの在り方がより明らかになってくるのではないだろうか。

【引用・参考文献】
・「令和2年度大学等卒業者の就職内定状況調査(令和3年4月1日現在)」厚生労働省、文部科学省(2021年)
・「令和元年度大学等卒業者の就職状況調査(令和2年4月1日現在)」厚生労働省、文部科学省(2020年)
・「平成21年度大学等卒業者の就職状況調査(平成22年4月1日現在)」厚生労働省、文部科学省(2010年)
・「学校基本調査—令和2年度 結果の概要—」文部科学省(2020年)

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