2021年5月18日、厚生労働省ならびに文部科学省は、2021年3月卒業大学生等の就職状況を公表した。
2020年度は、新卒就活生にとって事実上の「就活スタート」を意味する3月1日大規模会場での合同企業説明会が取り止めになるなど、未知なる感染症の脅威により、これまで「慣例」とされてきた就職活動の「型」が大きく崩された中での就職・採用活動であった。
「異例」「混乱」続きの1年であったが、2021年3月に卒業を迎えた大学の就職率は96.0%と、前年を2.0ポイント下回ったものの、高水準と言える就職率に帰着した。
ちなみに、「就職氷河期」とされる2000年3月卒業大学生の就職率は91.1%、「リーマンショック」後の2010年は91.8%であったことからすると、「コロナ禍」で迎えた2021年3月卒業者の就職率96.0%は高水準であったと言え、世界各国が感染症という新たな脅威に対して、経済を安定させるため最大限の金融・財政政策を行ったことが大きな要因と思われる。
振り返ると、新型感染症の脅威に対し先を見通すことが非常に困難であった2020年6月リクルートワークス研究所が行った「ワークス大学求人倍率調査」においては、2021年3月卒業予定者の求人倍率は1.53倍と前年の求人倍率1.83倍から、0.3ポイントの減少であった。求人総数で見てみると、2021年3月卒業予定者への求人総数は683,000人、前年の804,700人からは121,700人分の求人数が減少したものの、大学卒業後に民間企業に就職を希望する学生が447,100人からすると、求人数の上でも採用意欲は高かったことが分かる。
とはいえ、求人数が約12万人分減少していることから、それを業種別に見てみると、減少率が最も大きかったのはサービス・情報業で対前年比減少率21.6%、求人数では73,100人と前年比20,100人(2020年3月卒業サービス・情報業の求人数は93,200人)の減少となった。特にサービス業での求人数の減少が大きかったことが推察される。
次いで、流通業の対前年減少率は17.9%、求人数では273,800人と前年比59,600人(2020年3月卒業流通業の求人数は333,400人)の減少であった。
一方で、唯一昨年度から求人数を増やした業種は建設業で、求人数92,500人、前年比4,300人増であった。
感染症拡大の恐れから、対面が「通常」であった就職活動から、「オンライン」が主流にならざるを得ず、少なからず混乱を来した2020年度の就職・採用活動であったが、結果的には、若年労働者の労働力不足のトレンドから旺盛な採用意欲は継続され、就職率も高水準を維持される形となった。
一方で、航空業界、旅行業界、イベント企画業界etc.、感染症の影響で新卒採用を取り止めざるを得なかった業界の存在は、「憧れの業界」として将来の進路と決めていた学生にとっては、「折り合い」を着けることがいかに困難なことであったかは、想像に難くない。
「新卒一括採用」、「終身雇用」といったこれまで一般的と考えられてきた「慣例」も変動を続けている昨今、コロナ禍で「憧れ」を一旦は断念せざる得なかった若者が、「禍」が晴れて、「新卒」という形ではなくとも、学生時代に憧れていた業界に入れる日が来ることを期待する。
【引用・参考文献】
・「令和2年度大学等卒業者の就職内定状況調査(令和3年4月1日現在)」厚生労働省・文部科学省(2021年)
・「第37回ワークス大卒求人倍率調査(2021)」リクルートワークス研究所(2020年)
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