2022新卒者が50代となり、日本の社会経済を牽引する世代となる30年後の2050年、わが国の世界経済における立ち位置はどのようになっているのだろうか。
グローバル経済の主要な役割を果たしている日本、その立ち位置の変化を踏まえ、今を生きる新卒者がどのような気持ちで社会に出て、どのようなキャリアを積むことが、個人にとっての幸せに繋がるかを考えてみたい。
PwC Japanグループが発表した「長期的な経済展望 世界の経済秩序は2050年までにどう変化するのか?」では、世界のGDP総額の85%を占める、経済規模で見た世界上位32カ国について、2050年までのGDPの潜在成長に関する長期予想をしている。
この調査では、購買力平価(PPP)ベースのGDP(国内総生産)を用いており、調査時の2016年の時点で中国が21,269(2016年基準の10億米ドルベース、以下同じ基準値)で1位、アメリカが18,562で2位、インドが8,721で3位、そして日本が4,932で4位、ドイツが3,979で5位であった。
そして今から9年後の2030年のPPPベースGDPの予測では、1位中国、2位アメリカ、3位インド、4位日本は変わらないが、5位にインドネシアが入ってくる。
さらに今から約30年後の2050年のPPPベースGDPの予測では、1位中国(58,499)は変わらないが、インド(44,128)がアメリカを抜き2位に、アメリカ(34,102)は3位に後退し、インドネシア(10,502)が4位に上昇する。日本(6,779)は、ブラジル(5位、7,540)、ロシア(6位、7,131)、メキシコ(7位、6,863)に抜かれ8位となる予測となっている。
約30年後の2050年の世界経済では、中国が世界のGDPの20%を占める一方、EU27ヵ国の世界に占めるGDPは10%を下回る見込みとなっている。
では、このようなGDP予測の根拠となった4つの因数を見てみよう。
①人口動態、特に生産年齢人口の成長。
②労働の質(「人的資本」)の成長。労働者に対する現行の平均教育水準および予想される将来の平均教育水準に関連すると仮定して設定。
③物的資本ストックの伸び。
④技術の進歩。
日本が2050年の世界においてGDPランクが8位に後退する主要な要因として第一にあげられるのは、①人口動態、特に生産年齢人口の成長である。
生産年齢人口とは15歳~64歳までの人口を示し、国立社会保障・人口問題研究所の研究によれば、2021年の日本の総人口は1億2,441万人であり、15歳~64歳の生産年齢人口は7,355万人、総人口に占める生産年齢人口は59.1%である。
そして同研究所による2050年の推計では、総人口は9,817万人に減少し、生産年齢人口も5,065万人、総人口に占める生産年齢人口は51.6%ととなる見込みである。
人口動態の変化、特に生産年齢人口の縮小は、日本にだけ見られる現象ではなく、教育水準が上がり、乳幼児の死亡率が低下し、働く女性が増えるに伴い、出生率は低下し、さらに生活水準の向上や医療の進歩によって寿命が長くなることで、相対的に生産年齢人口が縮小することは、他の先進国でも同様に起きている。
経済成長のみが幸せの源泉ではないとしても、「豊かな生活」を送るためには経済は切り離せない。約30年後の世界で日本は、人口動態の変化を大きな要因としてGDPランクの後退が予測されている。国民の一人ひとりが「豊かな」人生を過ごすために、2022新卒者=今を生きる若者が出来ることはどのようなことだろうか。
PwCレポートでも示唆されていることは、教育の質の向上である。GDP予測の4つの因数の②労働の質の成長の基盤となる、労働者に対する将来の平均教育水準がより重要になると思われる。
AI技術研究者のレイ・カーツワイルは、人工知能は2045年にも人間の知能を超える、「シンギュラリティ」(技術的特異点)が起こることを指摘した。人間の知能をも超えるAIが普及することで、失われる職業が出るだろう。個人の生活の基盤となる職業が失われることは、計り知れない動揺を生むだろう。
新卒者として社会に出て40年以上も続くであろうキャリアの中で、グルーバルな経済変化、AIを筆頭とする技術革新など、数多くの外部要因から個人のキャリア形成は影響を受け、思い通りに行かないことも多い。自己の思い描くキャリア、まさに「やりたいこと」は、社会に出た後も幾度となく外部要因によって危機に晒されるだろう。
変わり続ける世界、社会において、個人にとって幸せなキャリア、人生を歩むため、幾度となく外部要因に動揺させられることがあっても、「やりたいこと」を続けられる「ケイパビリティ(能力)」を持つことが大切であると思う。そのためには、社会に出た後も「自分の幸せな人生」のために学びを続けて欲しいと願う。個人が幸せな人生を過ごすために行う学びが、結果的に、②労働の質の成長の基盤となる、労働者に対する将来の平均教育水準を引き上げることに繋がることを期待したい。
30年後の日本が経済的にも、気持ちの上でも「豊か」であることを期待したい。
【引用・参考文献】
・「長期的な経済展望 世界の秩序は2050年までにどう変化するのか?」PwC Japanグループ(2017)
・「日本の将来推計人口」国立社会保障・人口問題研究所(2017)
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