2020年度学校基本調査によれば、2020年3月卒、57万3,947人の大学生の卒業後の進路は77.7%(446,082人)が就職、11.3%(64,627人)が進学という結果となった。
ちなみに10年前の2010年3月卒、54万1,428人の卒業後の進路は60.8%(329,190人)が就職、15.9%(86,039人)が進学であったことから、就職率は上昇しており、進学率は減少している、といったトレンドが見られる。
8割弱の大学生が3月の卒業と同時に企業や団体に就職し、キャリア形成をスタートさせる。
初職として就職した企業や団体において、長期勤続を前提とした教育制度、配置制度、処遇制度の下で、キャリアを積み重ねていく。
わが国においては、主体的にキャリアを切り拓いていく一つの方法である起業に対する希望が、他国に比べて極端に低いことが指摘されている。
ちなみに、一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの報告書によれば、日本において起業家が成人人口に占める割合(Total Early-Stage Entrepreneurial Activity: TEA)は3.7%と調査対象国67ヵ国、66番目の低さである。
ここでは、慣例化された学校卒業者の一括採用・就職後に、主体的にキャリアを考え、起業した者の傾向を見てみよう。
独立行政法人経済産業研究所が発表した「起業活動と人的資本:RIETI 起業家アンケート調査を用いた実証研究」(2013年)においては、7023人のアンケート調査によって起業の意識と実行の傾向について明らかにしている。
7023人のサンプルの中で、大学卒業以上の学歴の者で「起業を計画した」割合は31.1%(2,201人)。(4,822人は起業の計画をしたことはない)
さらに「起業を計画した」者の中で、実際に「起業を実行した」割合は21.4%(1,501人)であった。
大学卒業(学士)、大学院修士、大学院博士の最終学歴別に見てみると、僅差ではあるものの「起業を実行した」割合が高かったのは大学卒業(学士)で68.9%、次いで大学院博士(67.8%)であった。
一方、起業が「成功した」と考える割合は、大学院博士が最も高かった。
さらに、「起業を実行した」1501人の内、一度も会社に入社せずに起業した者は全体の17.0%であり、「3社以上に雇用」されてから起業した者の割合は28.3%と最も高い割であった。
ちなみに、「1社に雇用」されてから起業した者は18.5%、「2社に雇用」されてから起業した者は25.7%、「3社以上に雇用」されてから起業した者は28.3%となっている。
ここからは、雇用された社数が増える程、起業する者の傾向が増えることが読み取れる。
但し、「起業を実行した」者の自己評価による、起業が「成功」したかどうかについては、「1社」もしくは「2社に雇用」されてから起業した者が最も「成功した」と認識しており、「一度も会社に入社せずに起業した者」および「3社以上に雇用」されてからの起業者の「成功」認識が低いことに注意が必要となる。
自立的なキャリア形成の一つの形である起業、1社もしくは2社に雇用され、職務経験を経てから起業することで、成功する確率が上がることが示唆されている。
【引用・参考文献】
・「令和2年度学校基本調査結果の概要」文部科学省(2020)
・「平成25年度起業家精神に関する調査(GEM)」一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(2013)
・「起業活動と人的資本:RIETI 起業家アンケート調査を用いた実証研究」馬場遼太・元橋 一之(2013)
―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ