コラム初職を辞める理由

初職を辞める理由

開示されている情報であっても入職し、経験することで理解できること

新卒者として大学卒業後に就職した若者の約3割が3年以内に初職を辞めている。2017年の大学卒で入職から3年以内の離職率は32.8%であった(厚生労働省2020年)。ちなみに、高校卒の3年以内離職率は約4割で推移している。

大学生に関しては、新卒者一括採用の慣行の下、相応の時間を掛けて就職活動を行い、初職を決めているものの現実的には3割が3年以内に、社会人としてのキャリアをスタートさせた会社を去っている。
若者が会社を辞める理由をみてみると、男性、25~29歳では、「給与等収入が少なかった」が最も多く16.3%、次いで「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」13.3%、「会社の将来が不安だった」が12.4%が主な理由としてあげられている(「その他の理由」を除く)。
女性、25歳~29歳では、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が最も多く17.9%、次いで「給与等収入が少なかった」11.3%、「職場の人間関係が好ましくなかった」が10.6%と、男性が辞める理由と若干の違いがみられる(「その他の理由」を除く)。

意外にも、新卒者が就職活動時に重視している「仕事内容」や「自分の能力が活かせる」といった理由に対応する、「仕事の内容に興味を持てなかった」を離職の理由にあげているのは男性が5.8%、女性が8.3%、「能力・個性・資格を活かせなかった」は男性6.7%、女性が4.9%と比較的低い割合であった。

男女ともに離職理由の上位にあげている「給与等収入が少なかった」に関しては、企業が採用活動を行う際に初任給もしくは月例給の明示を必ず行っており、その提示額を理解した上で入職していることを考えると、入職後に自身の賃金上昇期待が低かったり、先輩・上司の賃金額を知り、自身が長期勤続の後に得たい収入ではなかった可能性が示唆される。
企業側、採用担当者からすると、自社の賃金水準を公に公表することに少なからず抵抗感があることも事実だろう。
働く個人からすると、入職前に長期キャリアを通じて得られる可能性のある賃金水準は、最も重要な情報ではあるものの、入職するまで得難い情報といえよう。ここに雇用のミスマッチの要因の一つが潜んでいる。

また「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」については、多くの新卒者向けの求人情報には、年間休日が記載されており、やはり求職活動時に確認している雇用条件ではあるものの、特に新卒者については年間休日100日と年間休日125日以上の差が経験として備わっていないため、離職理由となると考えられる。

実際に自らが働き、経験することで、企業の良い面や、自分にとって好ましくない面が明確化されてくる。
初職選びの際は気づけなかった、自身の特性や譲れない労働条件等が明らかになった時点で、主体的なキャリア形成のために会社、組織を移ることは、社会全体として生産性を高めることに繋がる可能性もあると思われる。
但し、主体的なキャリア形成のためには、個人が所属組織に依存することなく、能力開発を意識することが重要であることは言うまでもない。

【引用・参考文献】
・「規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」厚生労働省(2020)
・「平成30年雇用動向調査結果の概要」厚生労働省(2019)

―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

こちらの記事もよく読まれています