コラム「具体的な仕事内容」を企業は「伝えている」でも学生が「知れた」のは半数以下…?

「具体的な仕事内容」を企業は「伝えている」でも学生が「知れた」のは半数以下…?

「伝えている」でも半数以上は「知ることが出来なかった」、この乖離が生み出すものは

株式会社リクルートキャリアの研究機関・就職みらい研究所は、2021年新卒者の就職活動の実態について調査し、「就職白書2021」を公表した。
同白書において注目すべき調査結果は、企業が学生に提供している情報と学生が就職活動で知りたいと思っていたもの/知ることができたもの、との乖離である。

同調査では、企業が学生に提供している情報と学生が就職活動で知りたいと思っていたもの、とは多くの項目について乖離が認められるが、特筆すべき乖離は「具体的な仕事内容」である。
「具体的な仕事内容」については、87.1%の企業が学生に提供していると回答している一方で、学生は43.7%が知ることができたと回答しており、実に学生の半数以上は志望する企業の「具体的な仕事内容」について、「知ることが出来なかった」と認識していたことになる。
企業が情報を提供している割合(87.1%)から学生が知ることが出来た割合(43.7%)を差し引くと、43.4ポイントもの乖離となる。
さらに「具体的な仕事内容」については、57.9%の学生が就職活動で知りたいと思っていながら、前述のとおり知ることができたと回答した学生は43.7%に留まっている。

この乖離の原因については公表されている調査結果から推論することは難しいが、学生が求めている「具体的な仕事内容」の情報量もしくは質と、企業が提供している情報に隔たりがあることは確かだろう。
そして、「具体的な仕事内容」について少なくとも半数以上の学生が「知ることが出来なかった」と振り返っていることは、ここにも新卒者の就職活動を悩ます大きな要因があると考えられよう。

新卒者の就職活動について多くの学生が「自己分析」を取り入れている。そして、自己分析のオーソドックな手法においては、「やりたいこと」と「志望動機」を明らかにすることを求めることが多い。
自己分析における「やりたいこと」は、過去の経歴から推し測り、志望する企業において達成できそうかについて検討する。「やりたいこと」の中心となるものは、志望企業においての「仕事」に他ならない。

また自己分析における「志望動機」についても、志望企業の理念であったり、社会への貢献度合いであったり、というケースはあるものの、企業の選考プロセスにおいて用いられる志望動機は、学生が志望企業において成し遂げたい「仕事」を全て除外して考えるということは非常に稀なケースだろう。「志望動機」についても、志望企業での「仕事」を捨象して考えることはできないと言えよう。

真剣に大学卒業の就職先、仕事について考えればこそ、自己分析で自己を深く探り、学生時代における一つの「自己」というものを仮であったとしても確立させ、就職活動に臨む。
学生時代の仮ではあるものの「やりたいこと」を定め、志望する企業を絞り込み、選考プロセスに進む中で、約半数の学生は、「具体的な仕事内容」を「知ることはできなかった」と振り返っている。
ここに新卒就活生を悩ませる要因の一つを見ることができる。

87.1%の企業が「具体的な仕事内容」について学生に提供していると考えている。一方、学生が「具体的な仕事内容」を知ることができたのは43.7%に留まる。
このことは乖離は、学生の自己分析における「やりたいこと」と「志望動機」に大きく関連してくるため、今後の課題と言えよう。
真剣に自己の将来を考える学生ほど、この乖離の狭間で苦しむことがなくなるように。

【引用・参考文献】
・「就職活動・採用活動に関する振り返り調査 データ集」 株式会社リクルートキャリア(2021年)
・「就職白書2021 」株式会社リクルートキャリア (2021年)

―新卒就活生のためのオンライン就職相談 チャット不安悩み相談

こちらの記事もよく読まれています