2020年初頭からこれまで“普通”に行われていたことに制限が掛けられ、人との関わり合いをも留まらなければならない期間が1年10カ月程経過しようとしている。
大学生でいえば、2020年4月入学者は現時点で2年生の後半に差し掛かり、現4年生は2年生の1月から制限が加えられた「コロナ禍」での学生生活を余儀なくされている。
学校から社会へ移行に際して、大学時代の学業は当然として、大学外での活動、部活動・サークル活動、アルバイトなどを通じて得られる経験は重要である。大学での学業と大学外の活動で出会う人々の関わり合いの中で、自分とは何か、自分が進むべき道はどれか、自分が果たしたい夢はどれか、など今後の生き方を明確化させる大切な時期ともいえる。
このような大切な時期に、人との関わり合いを制限されたことで、就職活動時に避けがたい「大学時代に力を入れたこと」=ガクチ力に迷いを生じさせている。
コロナ禍が与えた若者への影響については、今後調査が行われ、“普通”だったことが出来なくなった影響が明らかにされていくだろう。
ここでは大学生活より以前の子供の頃の経験が大人になってどのように影響するかの調査を見てみたい。
2018年、国立青少年教育振興機構は「子供の頃の体験がはぐくむ力とその効果に関する調査研究報告書」を発表した。この調査は、日本の青少年の自己肯定感が諸外国に比べ低いと指摘されていることを踏まえ、体験活動と自己肯定感、今の青少年に求められるへこたれない力や意欲、コミュニケーション力との
関係を検討し、これを高める体験活動の在り方を提案することを目的としている。(自己肯定感の低さについては「令和元年版子供・若者白書 特集1 日本の若者意識の現状~国際比較からみえてくるもの~」内閣府(2019年)に詳しい。)
調査では、20代~50代を対象に、年齢期別の「子供の頃の体験」と現在の「社会を生き抜く資質・能力」との関係性を分析した。
調査結果の中から、新卒者の就職活動の成否を大きく左右されると考えている「自己肯定感」の獲得と子供の頃の体験を見てみる。
大人になって「自己肯定感」が高い人の子供の頃の体験として、
・遊びの熱中度が高く、外遊び(集団での外遊び、自然の中での遊び等)が多かった人。
・親や先生、近所の人に褒められた、もしくは叱られた経験が多かった人。
大きく2つに収斂される。
このことにより、大人になって「自己肯定感」が高い人の特徴は、子供の頃、親や先生、友だち、近所の人との関わりが多かった人、と言えよう。
この調査はあくまでも子供の頃の体験と大人になっての「自己肯定感」の関係を明らかにしたもの。
この調査の方法、結果がそのまま大学生に当てはまるとは言い切れないものの、人との関わりを制限された大学生が大学時代に本来獲得できた「自己肯定感」の獲得に全く影響がなかったとは思えない。
これから社会出てくる「コロナ禍世代」の新卒者は、これまで“普通”であった多種多様な人々との関わり合いを制限された大学生活を余儀なくされた世代と言える。
様々な人々との関わり合いは、自己肯定感の醸成に不可欠な経験であることを踏まえると、就職・採用の現場における「ガクチ力」を問うことは、より慎重にすべきではないだろうか。
【引用・参考文献】
・「子供の頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究報告書」国立青少年教育振興機構(2018)
・「令和元年版子供・若者白書 特集1 日本の若者意識の現状~国際比較からみえてくるもの~」内閣府(2019年)
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