2013年、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授は『雇用の未来』の中で、今後10年~20年程度でアメリカにおける702種類の職業の中で、コンピューターによって自動化される確率の高い職種を示したことで、大きな反響を呼びました。
コンピューターによって自動化されるということは、人間にとっての「仕事がなくなる」ことを意味します。
『雇用の未来』が著されたのが2013年、それから8年、もうすぐ「今後10年~20年程度」の10年になろうとしています。
2013年当時に自動化される確率が高いとされた職業について、現在の日本ではどのような状況にあるかを見てみたいと思います。
筆者が特に興味を持った職業を抜粋して記します。
コンピューターに置き換えられる可能性が高いと指摘された職業は、
・テレマーケター(電話を使った販売活動)、置き換えられる確率99%、置き換えられる可能性が高い順位1位。
・貨物運送業者、99%、7位。
・保険の審査担当、98%、14位。
・融資担当者、98%、17位。
・銀行窓口係、98%、20位。
・運転手、販売員、98%、29位。
・モデル、97%、34位。
・レストラン、ラウンジ、カフェ従業員、97%、35位。
・レストラン料理人、96%、62位。
・訪問販売・街の物売り、94%、97位。
・会計監査員、94%、114位。
・自動車の車体整備工、91%、145位。
といった職業が上位となりました。
置き換えられる可能性が高い順位1位となった「テレマーケター」ですが、どうやら日本においてはあと2年でなくなりそうもありません。ここは国によって文化や商慣行の違いがありそうです。日本においては、2021年現在も良し悪しは別として、様々な商材を電話で用いてセールスしている実態があります。但し、さらに10年後の2032年には、完全になくなりはしないもののかなりのテレマーケターは職業としては成り立たなくなる購買環境になる可能性はあると思います。「訪問販売・街の物売り」についても、現在の日本では根強くなくならない仕事となっています。
そして、「貨物運送業者」「運転手」についても、日本においてはなくなるどころか、人手不足で困っている状況です。あと10年でインフラ整備や法整備が進むかが、なくなる仕事かどうかの重要なポイントだと思います。
「保険の審査担当」、「銀行窓口係」は着実にコンピューターに置き換わりつつあると思われます。決められたルールに則って行われる「作業」については、コンピューターの方が優れている面が多いのでしょう。
「融資担当者」については、日本においては置き換わりは緩やかだと思われます。各金融機関においては、窓口業務から融資担当業務に職種転換する動きもあり、現在はなくなっていない仕事と言えます。
「レストラン、ラウンジ、カフェ従業員」、「レストラン料理人」についてもなくなる仕事の指摘を受けていますが、現在は極端になくなっている仕事とは言えません。
特に、「レストラン、ラウンジ、カフェ従業員」については、日本の雇用慣行において、比較的安価な給与で雇用し易いアルバイト従業員の存在が起因していると考えられます。
最低賃金も年々上昇し、安価で雇用し易いアルバイト従業員が減少することで置き換えが加速する可能性はあると思われます。
その他のなくなる仕事と指摘のなされた職種の中でも、日本においては「あと10年」を迎える2年間で急速で置き換えが進みそうな仕事は、限定的と思われます。
但し、2021年のさらに「あと10年」の日本において、コンピューターによる置き換えからは逃れられないことは間違いがありません。
「あと〇〇年後にはなくなる仕事」、という指摘は長い歴史を俯瞰して見ますと、コンピューターの新化による置き換えによって齎されることが初めてではありません。
人は、18世紀半ばから起こった「産業革命」以来、なくなる仕事に晒され続けて来ました。
産業革命により、手作業で行っていた仕事が、機械に置き換わり、手作業という仕事はなくなりました。
しかし、手作業という仕事はなくなったとしても、人はまた新たに仕事を作り出し、新たな職業に就いてきました。
パソコンが誕生した後、多くの事務作業がパソコンに置き換わり、確かに多くの人が仕事をなくしました。
しかし、人はそれでもまた新しい仕事を見つけ、職業とし、働いてきました。
なくなる仕事があれば、新たに生み出される仕事が必ずあり、
人は適応していくものだと思います。
いつの時代でも人には生き抜く力が備わっているのだと思います。
可能性は無限に広がっているのだと思います。
【引用・参考文献】
・「未来の雇用」マイケル・A・オズボーン(2013)
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