コラム「やりたいこと」を探求するチカラのつけ方①。「学ぶ」会社の特徴。

「やりたいこと」を探求するチカラのつけ方①。「学ぶ」会社の特徴。

自ら「学ぶ」人が多い会社・職場は「主体性・自主性」の高い組織。

1990年代後半から新卒就活生の就職活動準備に欠かせないツールの一つに、「自己分析」が定着化している。
バルブ経済崩壊後、日本企業は経済過熱期に抱えた多くの「過剰」を正常値に戻すため、「リストラ」の名のもとに企業から❝掃き出し❞を断行した。経済が過熱状態から後退局面となり、企業の生産活動にブレーキを掛けることで生じた過剰人員を、事業再編と称した人員削減=「リストラ」が行われ、多くの企業で大規模に従業員が削減された。
正規従業員の大幅な人員削減が断行される傍らで、1990年代後半に大学卒業を迎えた新卒者の採用枠も厳しく抑制された。新卒者にとっての「就職氷河期」の到来である。
新卒者の「就職氷河期」の到来と時を同じくして、新卒者が大学卒業後にどのような働き方をしたいのか、どのような仕事を望んでいるのか、志望する望む働き方や仕事を実現できそうな会社を自ら選択するように促す、「主体的なキャリア形成」の必要性が言及され始める。
「主体的なキャリア形成」の計画策定のためのツールとして、自己の望みや傾向を、過去の経験から明確化させていく「自己分析」が瞬く間に広く新卒者の間で取り入れられていった。
「自己分析」で自己を分析する際に根幹を成す❝問い❞に、将来「やりたいこと」があげられる。主体性を持ってキャリアを切り拓いていくために不可欠となる「芯」が、将来自分はどうありたいのか、ありたい自分に近づくためにどのようなことを職業上に求めるのか、将来「やりたいこと」とは何か、である。

主体的なキャリア形成を新卒者自らに問う風潮が一般化してから約25年、主体的に「やりたいこと」を追い求めるマインドを持った若年者の多くは、長期勤続を前提とした日本の雇用慣行に抗うように、新卒者として入社した会社に生涯に亘って勤め上げたいとは考えていない。
就職活動を通じて、主体性を持つこと、主体的に働き方・生き方を選ぶことを、求められた結果、長く続く長期勤続の雇用慣行にも拘わらず、数カ月から数年で初職を辞め、転職を繰り返すキャリアを歩む若年者が増えている。

政府が政策として掲げ、各施策を展開してきた若年者の主体的なキャリア形成に向けての取組み。その効果もあり、若年者は主体的に職業、会社を選ぶため、結果として、比較的短期間の内に転職を繰り返すキャリア形成も特異なものではなくなりつつある。

主体的キャリア形成、「やりたいこと」の実現、これらの源泉になるのは、個々人が培った能力である。
企業において求められる個々人の「能力」については、非常に幅広く、一つ一つ言及していくことは難しい。ここでは、転職を伴う企業横断的な主体的なキャリア形成を念頭に置き、勤務時間内に得られる経験や知識に加えて、「やりたいこと」が出来そうな企業に転職する際に不可欠となる、業務経験以外の主体的な「学び」についてフォーカスしたい。

より「やりたいこと」に近づくため、キャリアアップのための転職を含むキャリア形成のためには、所属する企業の業務経験だけでは、他社でも活かすことのできる汎用的な能力を身につけられるとは限らない。「やりたいこと」の実現のための仕事探し、会社探しの選択肢を広げるためにも、業務経験以外の「学び」が重要となる。業務経験に加え、主体的に「学ぶ」ことで、様々な企業で活躍できる能力が培われると考える。

では、主体的に「学び」が行われる会社とは、どのような特徴を持った会社なのだろうか。
言い換えれば、個々人が主体的なキャリア形成のために「学び」易い会社とはどのような会社だろうか。
主体的な働き方、生き方の側面から見た「良い会社」とはどのような特徴があるのだろうか。

一般財団法人企業活力研究所が行った調査結果によれば、自ら「学ぶ」慣習がある人材が所属する会社の職場風土として、
「主体性・自主性を重視する風土」があること、
「人材育成・自己啓発を促進する風土」があること、
「変化対応力を重視する風土」があること、
といった特徴があげられる。

一方で、「成果主義・実力主義を重視する風土」がある会社と、自ら「学ぶ」慣習ある人材との関連は相対的に小さいことが指摘されている。

同報告書では、個々人の「学ぶ」気持ちを高め継続されるためには、人材育成・自己啓発を促進する風土を醸成されていることに加え、個々人の主体性や自主性を引き出すことが大切である、と結論づけている。
個々人の主体性や自主性を引き出すには、職場内にチャレンジする風土が根付いているかの点がカギとなる。

「やりたいこと」の実現・探求、主体的な働き方・生き方の観点から見た「良い会社」とは、
主体性や自主性を重視する風土があること、
主体性や自主性を重視する風土の醸成には、チャレンジすることが許容される会社の雰囲気が重要であること、
このような風土、雰囲気がある職場で、個々人が自ら「学び」続ける会社が、「良い会社」と思う。

主体的な生き方にとっての「良い会社」。
それは「学び」続ける会社だと思う。

【引用・参考文献】
・「経営革新と『稼ぐ力』の向上に向けた仕事とキャリア管理に関する調査研究」一般社団法人企業活力研究所(2018)
・「『学び』を支える❝学習習慣❞のある人材の確保・育成に向けた人事戦略に関する調査研究報告書」一般財団法人企業活力研究所(2019)

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