コラム採用選考は「職務遂行が可能か」のみを基準とすること。

採用選考は「職務遂行が可能か」のみを基準とすること。

「公正な採用選考」では、本人の適正・能力とは関係ないことを面接やエントリーシートで問うことは不適切とされる。

2021年10月31日、第49回衆議院議員総選挙の投開票が行われる。
2016年に選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてからは、大学生も衆議院議員総選挙に投票することになった。
2017年10月に行われた第48回衆議院議員総選挙の投票率は53.68%。その内10代の投票率は40.49%、20代では33.85%と、全世代平均よりは少ない投票率であった。
選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから2回目となる衆議院議員総選挙、若年層の投票率が高まることを期待したい。

ところで、厚生労働省では新卒者を含む広く人を雇用する企業に対して、「公正な採用選考」を行うよう指針を示している。
厚生労働省で定める「公正な採用選考」の大きな2つのポイントとして、
①応募者に広く門戸を開くこと。
すなわち、どこの国、地域の出身者であっても、性別・年齢に関係なく、障害を持っていたとしても、性的マイノリティであっても、求人条件に合致する全ての人が応募できるようにすること。

②本人の持つ適正・能力に基づいた採用基準とすること。
すなわち、応募者が「求人職種の職務を遂行するにあたり、必要となる適性や能力をもっているか」という基準に基づいた選考を行うこと。
求人職種の職務遂行に必要な適性や能力の中に、1)「本人に責任のない事項」、2)「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)」は含めてならないとされている。

職務遂行に必要な適性や能力の中に含めてはならないとされている、1)「本人に責任のない事項」2)「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)」について具体的な例示もなされており、
1)「本人に責任のない事項」については、
・本籍・出身地に関すること。
・「家族」に関すること(家族の職業・続柄・病歴・地位・学歴・収入・資産など)。
・「住宅状況」に関すること(部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)。
・「生活環境・家庭環境など」に関すること。
等は選考基準に含めてはならないとしている。

2)「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)」については、
・「宗教」関すること。
・「支持政党」に関すること。
・「人生観・生活信条など」に関すること。
・「尊敬する人物」に関すること。
・「思想」に関すること。
・「労働組合(加入状況や活動歴など)」、「学生運動などの社会運動」に関すること。
・「購読新聞・雑誌・愛読書など」に関すること。
等は、憲法第14条「すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」に依拠しながら、選考基準に含めてはならないとしている。

さらに3)として採用選考の方法について、
・「身元調査など」の実施。
・「本人の適正・能力に関係ない事項を含んだ応募書類」の使用。
・「合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断」の実施。
等について採用活動に用いてはならないとしている。

新卒者を一括で採用し、定年までの長期間に亘る雇用を前提としている日本的雇用慣行においては、雇用する従業員は正しく「家族」のように見做されていたことから、現在では不適切とされる応募者の家族に関すること、人生観にかんすること、思想に関すること、労働組合や学生運動に関すること、などを聴取する動機が生まれたのだろう。

現在は、日本的雇用慣行は崩れたと言われ、働く人の多くも1つの会社で生涯のキャリアを形成する意欲は薄らいでいる。
「公正な採用選考」の第一にあげらている「本人の持つ適正・能力に基づいた採用基準とすること」に、より近づいているといえよう。

さて「10月31日の選挙に行きましたか?」の質問は、支持政党に関する質問ではないが、思想信条に抵触する質問なのだろうか。
採用就職ゲンバにおける線引きが難しい。

【引用・参考文献】
・「第31回~第48回衆議院議員総選挙年齢別投票率調査」総務省(2019)
・「令和3年度版 公正な採用選考を目指して」厚生労働省(2021)

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