カウンセリングケース「自己分析」で「業種」「業界」について考えていますが「どの業種・業界に進みたい」といった結論が出せません。

「自己分析」で「業種」「業界」について考えていますが「どの業種・業界に進みたい」といった結論が出せません。


※以下のエピソードは新卒就活生が陥った悩みとカウンセラーによるカウンセリングケースです。エピソードは個人が特定されないように加工を加えております。カウンセリングケースはカウンセラーの個人的な見解によるものです。


【H大学・文学部所属・4年生】

「自己分析」において、自分が進みたい「業種」「業界」について考えていますが、「どの業種・業界に進みたい」という結論が出せません。合同企業説明会のシーズンも過ぎ、これから個別企業へのエントリー、選考へと進んでいく中で、第一段階の「業種選び」で躓いてしまっています。このままでは、志望する個別企業を絞り切れず、ただ時間だけが過ぎてしまうようで不安を覚えます。どうしたらよいでしょうか…。


【カウンセラー 工藤未来】ThirdPlaceキャリアマネジメント代表。大学院修了後、労働問題を主な研究領域とする団体・研究機関に入所する。 入所後、若年者の就職問題・キャリア形成の問題をテーマとする活動・研究を行う。 活動・研究活動を行う中で、多くの働く人からの「何のために働くのか」の問いや悩みをきっかけとして、「答え」を示すのではなく、働く人ひとり一人が「考える」ためのヒントを提供することを始める。


「望む働き方」と「望む業種・業界」は密接な関係にある。

「自己分析」の中でも、望む業界・業種が絞り切れない、という悩み相談でした。
望む業界・業種については、「絞り込むべき」という意見と、「絞り込む必要はない」という相反する意見や考え方があります。
これは、望む業界・業種を「絞り込んだ」場合のメリットと、「絞り込まなかった」場合のメリットが、両方考えられることに起因します。 

ご相談を頂いた新卒者の悩みは「絞り切れない」ことにありましたので、このケースでは、望む業界・業種を「絞り込んで」就職活動を進めるためのカウンセリングを行いました。

就職先としての個別企業の選択の前に、広く望む業界・業種を選択した方が、限られた時間において大卒新卒者向け求人企業約67万社の中から、会社説明会に参加し、エントリーし、選考に臨む企業を効率的に選ぶことができる、というメリットが考えられます。 

新卒者の就職先としての業界・業種の意味は「望む働き方」に密接に関係してきます。
例えば、社会インフラ業界に属する電力、ガス、通信業界は、その業界に新規参入する企業は多くなく、数十年に亘り安定した市場に、安定的な企業数で市場が形成されています。
安定した市場において、安定的な企業数(=プレイヤーで)構成されている業界・業種に属し、数十年の社歴を有する企業での「働き方」は長期勤続、一企業内での能力形成、一企業内での職務経験を積んでいくような「働き方」がイメージされます。 

一方で、急成長している業界・業種、例えば、IT業界では、さまざまな「仕事」がデジタル技術の導入の対象先となることから、市場規模もますます広がり、新規参入企業も膨大な数になります。
競争が厳しい一方で、市場規模も拡大していることから、企業が成長するダイナミズムを感じられる仕事が多いという側面があります。
ベンチャー企業の参入も多いことから、比較的若い世代の従業員で構成されている会社も多く、人間関係もフランクな社風で働ける可能性も高いと言えます。
IT技術の進化の速度は速く、一企業内でじっくりと能力形成や職務経歴を積むことの他、業界横断的に他社に転職を繰り返し、多くの企業での「仕事」を通じて新しい技術を習得してゆく働き方も、成長産業に属する企業で働くことの特徴の一つと言えます。
IT業界だけではなく、太陽光発電や風力発電に代表される新エネルギー業界についても、成長産業であり、新規参入企業が比較的多い業界と言えます。 

ご相談者には、成長産業である業界・業種に属する企業で、業界や企業が成長するダイナミズム溢れるステージで働くことを望むのか、安定的な産業である業界・業種に属する企業において、長期勤続・長期育成を提供されるような働き方を望むのか、という「望む働き方」という視点で業界・業種選びを行うことも一つの方法であることを理解頂きました。

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