※以下のエピソードは新卒就活生が陥った悩みとカウンセラーによるカウンセリングケースです。エピソードは個人が特定されないように加工を加えております。カウンセリングケースはカウンセラーの個人的な見解によるものです。
【J大学・経済学部所属・4年生】
就職活動が始まる前から、親から「就職先は大手企業にしなさい」と何度も言われ、自分でも「そういうものかもしれない」と思い込み、3月~5月はずっと大手企業のみに絞り就職活動を行ってきました。
結果、大手企業からは一つも内定をもらえずに、気がつけばもう6月です。
大手企業の求人状況も「募集は締め切りました」が多くなり、焦っています。親の期待もあり、大手企業のみに絞った就職活動をしてきたことを今になって悔やんでいます。
就職活動を始める前から、自分は「大手企業に就職する」と志望を固め過ぎていたため、これから大手企業以外に目を向けることが難しいです。
とはいえ、悩んでいても時間だけは過ぎて行き、日を追うごとに新卒者向け就活サイトの「募集は締め切りました」の表示を見るのが辛くなって来ています。
どうしたらよいでしょうか…。
【カウンセラー 工藤未来】ThirdPlaceキャリアマネジメント代表。大学院修了後、労働問題を主な研究領域とする団体・研究機関に入所する。 入所後、若年者の就職問題・キャリア形成の問題をテーマとする活動・研究を行う。 活動・研究活動を行う中で、多くの働く人からの「何のために働くのか」の問いや悩みをきっかけとして、「答え」を示すのではなく、働く人ひとり一人が「考える」ためのヒントを提供することを始める。
20年以上「見守ってきた」両親のアドバイスには何かしらの「理由」がある。
アドバイスを「嚙み砕いて」理解できるかがカギ。
新卒者の就職活動において、大きな影響を及ぼすのがご両親です。
ご相談者のケースは、親御さんがお子さんの就職先は「大手企業が良い」という親としての期待を伝え続け、ご相談者も親御さんの期待に応えるため、就職活動を大手企業に絞り行った結果、内定を得られず苦しんでおられる、といったものでした。
学校を卒業してはじめて社会に出るお子さんに対して、親御さんが、文字通り「親心(おやごごろ)」で就職先のアドバイスをすることは、ある面当然と言えます。
20年以上、お子さんを見守ってきた親御さんがお子さんの「性格」や「強み」から、アドバイスする方向性は間違っていないことが多いです。
しかしながら一方で、ご相談者のように親御さんの期待に応えられず苦悩する新卒者も少なからずいることも事実なのです。
本ケースでは、ご相談者の親御さんが「なぜお子さんであるご相談者に大手企業を薦め続けたのか」を少し考えて頂くことから対話を始めました。
「なぜ大手企業を薦めたのか」、親御さんはお子さんのことを誰よりも知った上で、大手企業を薦めていたのであれば、薦めていた理由に、ご相談者のこれから就職活動を再開する「鍵」があると思われるからです。
「対話」内容の詳述は避けますが、ご相談者が自ら見出した親御さんが、自分に大手企業を薦めていた理由は、「一つのことに集中して継続的に取り組める半面、複数の事柄を同時に行うことが苦手。周りの環境変化に柔軟に対応することが苦手で、自分を取り巻く環境が安定していないと不安に陥りやすい」というご相談者の性格を考慮してのことである、という結論に至りました。
このような結論から、6月後半から再開した就職活動では、「専門職」に近いキャリア形成をできる会社、競争環境が比較的安定して業務内容の変化も穏やかと考えられる会社に志望を定め直し、再度就職活動に臨んで頂きました。