※以下のエピソードは新卒就活生が陥った悩みとカウンセラーによるカウンセリングケースです。エピソードは個人が特定されないように加工を加えております。カウンセリングケースはカウンセラーの個人的な見解によるものです。
【K大学・社会学部所属・4年生】
多くの企業で「求める人材像」に含まれているワードに「コミュニケーション能力が高い方」とあります。
私も小中高、大学と体育会に所属しており、多くの先輩、同期、後輩たちと「上手くやってきた」自信があります。
その意味で、自己PRにも「子供の頃からずっと部活、体育会に所属し、多くの仲間たちと『上手くやってきました』。自分では『コミュニケーション能力の高い』と思っています」といつも記入したり、面接でもそのように答えています。
就職活動でも「求める人材像」に「コミュニケーション能力が高い方」と表明している企業に応募し続けていますが、これまで1社も「内定」を得られていません…。
企業が「求める人材像」である「コミュニケーション能力が高い方」に合致していると自分では思っていたのですが、不採用が続くことで、自分の強みと考えていた「コミュニケーション能力」は、企業からは「強み」とは見なされないものなのか…、と深く悩んでしまっています。
【カウンセラー 工藤未来】ThirdPlaceキャリアマネジメント代表。大学院修了後、労働問題を主な研究領域とする団体・研究機関に入所する。 入所後、若年者の就職問題・キャリア形成の問題をテーマとする活動・研究を行う。 活動・研究活動を行う中で、多くの働く人からの「何のために働くのか」の問いや悩みをきっかけとして、「答え」を示すのではなく、働く人ひとり一人が「考える」ためのヒントを提供することを始める。
「コミュニケーション能力が高い方」は長期勤続を前提として、従業員全員に求められる「普遍的な資質」。
コミュニケーション能力『だけ』では採否は決定しない。
ご相談者の悩みは、企業が「求める人材像」に掲げている「コミュニケーション能力の高い方」に合致していると信じるに足りる経験と実績があるにも拘わらず、内定に至らず不採用となってしまい、自己の「強み」と考えていた「資質」に揺らぎが出てしまっている、というものでした。
確かに、多くの企業で「求める人材像」の中に「コミュニケーション能力が高い方」、もしくは、とても曖昧な表現でありますが「人間力の高い方」といったものを掲げています。
この傾向の根底には、日本企業の雇用慣行の特徴の一つであります「長期勤続」「長期育成」の考え方が流れています。新卒者として採用し、採用と同時に教育をスタートさせ、会社内の様々な仕事を経験させるために、新卒者には長期間に亘り多くの上司、先輩、同僚、後輩と良好な人間関係を崩さずに勤務できることを選考基準としている会社が多いことに起因していると考えられています。
この求める人材像における「コミュニケーション能力」については、新卒者を困惑させるワナが隠されているとも言えます。
企業としては、新卒者を一括採用し、長期的に育成、長期的に勤続してもらうことを想定した「重要項目」として「コミュニケーション能力」を掲げていることが、エントリーしている新卒者にとっては「必要十分条件」と錯誤させてしまっていることが指摘されています。
つまり「コミュニケーション能力の高い方」は日本企業の長期勤続、長期育成の雇用慣行においては、「重要項目」、言い換えれば「普遍的に求められる資質」とも言えます。
企業が求める人材像の中には、「コミュニケーション能力」の他にも、論理性や明晰性、学習意欲や探求心など、各社のビジネスモデルの違いにより、様々な「資質」が求められます。
ご相談者には「コミュニケーション能力」以外の企業が「求める人材像」について、再度企業研究を行ってもらい、「コミュニケーション能力」以外についても自己PRに取り入れて頂くことで、就職活動を再開頂きました。