カウンセリングケース大学から推薦された企業が、自分が望む企業「ではなかった」場合、選考に「進まない」という選択は正しいのでしょうか。

大学から推薦された企業が、自分が望む企業「ではなかった」場合、選考に「進まない」という選択は正しいのでしょうか。


※以下のエピソードは新卒就活生が陥った悩みとカウンセラーによるカウンセリングケースです。エピソードは個人が特定されないように加工を加えております。カウンセリングケースはカウンセラーの個人的な見解によるものです。


【O大学・経済学部所属・4年生】

高校生の頃から独学でギターを弾き始め、大学ではバンド活動をしていました。卒業後は「音楽」関連の仕事に就きたいと就職活動を行ってきましたが、音楽関連の会社から内定がもらえませんでした。気がつけば9月。志望する音楽関連だけではなく、さまざまな企業で「募集は締め切りました」の表示に変わっており、不安と焦りから先日初めて大学のキャリア支援センターを訪ねました。

大学のキャリア支援センターで推薦された企業は、自分が志望している音楽業界ではなく、小売業が多かったです。推薦された会社はどれも高校時代から熱中してきた音楽に関係する業種ではないので、正直就職活動を行う気持ちが湧いてきません。

大学から推薦された企業が、自分が「望む企業ではなかった」場合、選考に進まないという選択は正しいのでしょうか。


【カウンセラー 工藤未来】ThirdPlaceキャリアマネジメント代表。大学院修了後、労働問題を主な研究領域とする団体・研究機関に入所する。 入所後、若年者の就職問題・キャリア形成の問題をテーマとする活動・研究を行う。 活動・研究活動を行う中で、多くの働く人からの「何のために働くのか」の問いや悩みをきっかけとして、「答え」を示すのではなく、働く人ひとり一人が「考える」ためのヒントを提供することを始める。


「やりたいこと」は「就職後」にもきっと叶えることができる。
とにかく「経験」を積むために「就職」を。

自己分析により明確化した「望む業種・業界」、「やりたい仕事」から志望企業を絞り込み、選考活動に進む、というモデル的な就職活動プロセスを行ったところ、様々な要因が関連し合い、なかなか内定を獲得できない新卒就活生は少なくありません。 

ご相談者は、望む業種・業界を音楽業界と定め、自立的に就職活動を進めておりましたが、9月になっても内定を得られなかったことから、ご相談者が通う大学のキャリア支援センターを訪問したところ、望んでいた音楽業界ではない業種の会社を推薦され戸惑っている、という状況でした。 

新卒者の採用・就職活動は、一定のルールの下で行われているため、3月1日採用に関する広報の開始、6月1日採用選考のスタート、10月1日以降正式な内定とすることが「規範的」な動きとなります。
多くの企業で10月1日の正式な内定、内定式を執り行うことを逆算して、選考スケジュールを組まれています。10月1日の内定式までに、4月入社予定の新卒者の選考を終える必要性から、9月に入りますと募集を締め切る企業が多くなる傾向があります。 

ご相談者も志望する音楽関連の企業のみならず、多くの業種、多くの企業で採用活動を終え始めている状況から、自主的に進めてきた就職活動を見直すため、大学のキャリア支援センターに訪問しましたが、ご相談者が望む業界・業種の提案をもらうことが叶いませんでした。
自身が進みたいと定めた業界・業種と、キャリア支援センターからの推薦された業種・業界とのギャップがジレンマを生んだケースと言えます。 

望む働き方と、現実とのギャップを埋めることは、そう簡単ではありません。
とくに、新卒者就活生の多くが取り組む「自己分析」によって、一度定めた望む働き方、進みたい業種・業界と、現実に推薦される会社とのギャップを埋めようとすることで、深い葛藤に苛まれることがあります。 

本ケースでは、音楽業界を目指すことは諦められないので、9月以降も採用活動を継続している音楽業界の求人を探しつつ、一方で、一旦は志望する業界・業種ではないにしてもいずれ音楽業界へ転職をするために必要なスキル、経験等について研究し、必要なスキル、経験を得られそうな会社を選択する、という2つの活動ルートをご相談者と共有しました。

「自己分析」と大学から推薦された会社とのギャップで葛藤を経験する新卒者は少なくありません。その葛藤を理解し、新卒者が前に進むための心の整理を一緒に行った事案となりました。

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