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カウンセリングケース

「自己分析」で明らかにした「望む『労働条件』」に囚われ、6月時点で「内定」ゼロでも就職活動を再開できなくなってしまったケース

※以下のエピソードは新卒就活生が陥った悩みとカウンセラーによるカウンセリングケースです。エピソードは個人が特定されないように加工を加えております。カウンセリングケースはカウンセラーの個人的な見解によるものです。 【P大学・国際学部所属・4年生】 ここ数年間、新卒者の「売り手市場」と世間では言われておりましたが、私は「しっかり」とした企業に新卒者として入社して、安定した生活を送ることを期待し、大学3年生になった時から夏休みに就職活動でも「第一志望」と心に決めた企業に「インターンシップ」に行くなど、「準備」を怠らず、就職活動の本番を迎えました。「第一志望」と心に決めていた企業は3月中に「不採用」となってしまいましたが、「しっかり」とした企業、つまり大手企業と呼ばれている会社にエントリーし続けました。結果的には、私に届いた「知らせ」は全て「第一志望」と決めていた企業と同様に「不採用」でした。気がつけば、多くの採用企業で「選考」を終えてしまっている6月になってしまいました。どうしてこうなってしまったのか、自分では分かりません。「内定」を一つも獲得できない焦燥感と不安で気持ちを保っていられません。 📅大学3年次の4月<就職活動準備~就職活動開始から0カ月> 近年、新卒者の就職活動は(新卒者の)「売り手市場」だと言われており、サークルの先輩達からも「就職活動を始めて直ぐに『内定』がでた」とか「複数の『内定先』からどの企業に選ぼうか迷っている」といった(新卒者の)「売り手市場」を裏付けるような話を聞いていました。それでも私は不安症な性格のため、大学3年生になった瞬間から「就職活動」に向けて準備を始めました。 まず行ったのは「自己分析」で自分の「望む」キャリアを考えること。 大学3年生になって直ぐに取り組んだのは「自己分析」でした。「就活本」を1冊購入し、そこに書かれていた「自己分析」のフローチャートに則って、自分の「望む」キャリア形成を明らかにしていきました。「自己分析」によって明らかにした私の「やりたいこと」、「やりたい仕事」は、「日本と世界を繋ぐ仕事」でした。この「やりたいこと」「やりたい仕事」は、大学で専攻している「国際関係論」で学んだ日本と世界との貿易のみならず、国際協力にも興味を持ったことから導き出しました。次に「自己分析」で明らかにしたことは、進みたい「業界」「業種」でした。進みたい「業界」「業種」は、「やりたいこと」「やりたい仕事」が「日本と世界を繋ぐ仕事」から考え、「商社」に定めました。そして、「望むキャリア・働き方」については、親が公務員だった影響もあってか、「安定した会社」で「安定した仕事」を新入社員から定年まで行いたい、と考えていることが明確になりました。また、本音を言えば、転勤はせず、都内のマンションを購入し、そこで生活をし続け、同期や後輩達との「競争」はしたくない、ということも「望み」でした。「人並み」よりちょっと多いくらいの給与は欲しいですが、かと言って「管理職になりたい」といった望みはなく、従業員同士で「競争」して「勝ちたい」とも思っていません。社会人になっても「私生活」を優先したいと思っていましたので「長時間労働」「長時間の残業」、「休日日数が少ない」「有給休暇の取得率が低い」ような企業には絶対に行きたくない、と思ってます。このような私の「望むキャリア・働き方」に合致する会社は、都内に本社を構える、社歴の長い、大手企業であることが見えてきました。今こうやって振り返ってみますと、私が就職活動でエントリーし続けていた会社は、「自己分析」で(一度は)定めた「やりたいこと」=「日本と世界を繋ぐ仕事」は完全に抜け落ちてしまっていて、重要視していたことは「賃金」や「労働時間」といった「労働条件」だったことに気づかされます。 📅大学3年次の8月<就職活動準備~就職活動開始から4カ月> 大学3年生になって直ぐに取り組んだ「自己分析」によって明らかにしました「望むキャリア・働き方」を実現させるため、7月に「インターンシップ」のエントリーを行いました。 インターンシップ実習先は「望む働き方」から「大手企業」に。 私がエントリーしたインターンシップ先は、私が「望む働き方」ができそうな都内に本社を構え、社歴が長い、大手企業でした。大手企業ばかり7社ほどエントリーして、インターンシップの受入れが「通った」のは1社だけでした。エントリーした際は「エントリーした7社の中でどの会社に実習に行こうか」と思っていましたが、「残念ながら…」というメールばかりが届き、少し焦りました。「インターンシップから選考が始まっている」とも聞いておりましたので、気を緩ませず、5日間の実習をこなしました。インターンシップの実習そのものは、とても楽しいものでした。インターンシップに伺った大手企業である食品メーカーのA社の本社はとてもキレイで、インターンシップを担当された社員さんの姿も明るく活動的で、私はインターンシップ実習先であるA社を就職先の「第一志望」にしようと決めました。今思えば、私はインターンシップ受入企業からすれば「お客さん」扱いしなければならない「学生」でしたので、会社のキレイな部分だけを、丁寧な説明で見せてもらった、ということだったのでしょう。インターンシップを担当された方の「配慮」があったからこそ、私も「この担当者、この会社から『気に入られた』」と勝手に思い込んでしまっていたことに、就職活動でA社を受けた後で気づかされました。インターンシップの「実習生」を見る担当者の視点と、新卒者の採用選考にエントリーしている「候補者」を見る採用担当者の視点とは、異なっていたのだと後から気づかされました。 📅大学3年次の3月<就職活動準備~就職活動開始から11カ月> 3月1日から本格的に開始された合同企業説明会では、大手企業を中心に数十社の説明を聞いて回りました。 大手企業の「賃金」「労働時間」「休日」はどこも魅力的に映る。 大学3年生の春に行った「自己分析」では、「やりたいこと」「やりたい仕事」を「日本と世界を繋ぐ仕事」と見出しましたが、会社説明会がいざ始まってみますと、「興味を惹かれる」会社は大手企業ばかりで、その大手企業の会社説明の中でもとくに集中して聞いていたことは「賃金」、「労働時間」「休日日数」といった「労働条件」でした。数十社の会社説明を聞きましたが、大手企業と呼ばれている会社の「労働条件」は、やはり魅力的に映りました。「コンプライアンス」=法令順守の取り組みも徹底している、との説明をされる企業も多く、その点も大手企業で「働きたい」と思わせる一つの要因となりました。今振り返りますと、「就活本」に従って「やりたいこと」「やりたい仕事」を考え出してはみたものの、もっと自分の心の奥深くを「分析」し、心の底にある「本心」を怖がらずにオモテに出せていたら、「本当は『やりたいこと』『やりたい仕事』などは『無くて』、人並みよりも少し高い給与をもらい、他と比べて労働時間は短くて、さほど『厳しくない仕事』をしたい」ということが「望む働き方・望むキャリア」だったように思います。 「労働条件」が魅力的な大手企業を中心に30社程にエントリー 合同企業説明会では大手企業のブースを中心に訪問していましたが、海外との貿易を行っている中規模の「商社」の会社説明も聞いてみたところ、大手企業と「労働条件」を比較してみると、より大手企業の「良さ」が際立って見えました。「やりたいこと」「やりたい仕事」は会社選びで重視するポイントからは後退し、(好ましい)「労働条件」が会社選びの基準となっていました。3月中に30社程の「大手企業」にエントリーをしました。とくに、夏にインターンシップを経験した企業は「第一志望」と心に決めて、真っ先にエントリーをしました。3月時点では、心のどこかで、夏にインターンシップに伺った企業に「内定」を貰えるのではないか、と思っていました。自分ではインターンシップ実習中に十分に「自己PR」も出来たと思っていましたし、インターンシップ担当者からも高評価を得られた、と勝手ながら思っていました。30社程にエントリーし、順調に選考が進めば4月中には「内定」がもらえるのではないか、また「第一志望」の会社から「内定」をもらえればそこで就職活動を終えても良いが、「第一志望」以外の会社から「内定」をもらっても2~3社から「内定」をもらうまで就職活動を続けよう、とも思っていました。就職活動の第一段階、エントリーシートは大学3年生の早い段階から「自己分析」「業界研究」に取り組んでいたため、比較的悩まずに執筆することができ、本格的な採用選考の開始を待ちました。 📅大学4年次の4月<就職活動準備~就職活動開始から12カ月> エントリーをしました約30社の中で、早いところでは3月中にエントリーシートの結果が届き、筆記試験、適性検査、グループ面接といった、2段階目の選考プロセスに呼ばれ始めました。 「第一次面接」に呼ばれた企業は30社中❝僅か❞7社。焦りが出始める。 「労働条件」の良さに惹かれ大手企業を中心に約30社ほどエントリーをしまして、おおよそ半数の15社ほどから筆記試験、適性検査、グループ面接に呼ばれました。エントリーシートに「合格」し、筆記試験、適性検査、グループ面談といった2段階目の選考プロセスも突破できたのは、さらに半数の7社でした。この時点で、少し焦りが出始めました。先輩や周囲からの「売り手市場だから」という言葉を完全に信じていた訳ではありませんが、心のどこかで「安心」してしまっていたのかもしれません。「売り手市場だから」私も「内定」はもらえるだろう。もし複数社から「内定」がもらえたら、どのような基準で選ぼうか。といったことまで就職活動を始める前には考えていました。ところが…、実際に3月から就職活動の本格的に開始し、約30社にエントリーし、約半数のエントリー企業から次の選考プロセスに呼ばれ、(別な言い方をすれば、半数のエントリー企業からはエントリーシートの段階で「不採用」となり)筆記試験、適性検査、グループ面接など受け、さらに半数の7社から「合格」を頂き、「一次面接」に進みましたが、就活前に考えていたイメージよりかなり「厳しさ」を感じました。正直、心の中では、エントリーした30社の中でエントリーシートで「はじかれる」のは数社だろう、と考えていました。そして、エントリーシート、筆記試験などを「合格」して、「一次面接」には20社ほどから呼ばれるだろう、とも思っていました。現実は、約30社エントリーして、「一次面接」に進めたのは7社でした。私の就活前のイメージからすれば「一次面接」に進めたのは、「僅か」7社という思いでした。そして、3年次の夏にインターンシップに行き、「第一志望」と決めていた会社は、筆記試験、グループ面接の時点で「不採用」になってしまいました。とてもショックでした。インターンシップと採用は「直結」しているという噂は、私には当てはまりませんでした。4月は、とにかく「一次面接」に「呼んでもらえた」企業を大事にしていこう、と気持ちを入れ替えた時期でもあります。就職活動前の「売り手市場だから」という考えは一切なくなりました。 📅大学4年次の5月<就職活動準備~就職活動開始から13カ月> 30社エントリーして、「一次面接」に進めたのは僅か7社。この7社の中から何とか「内定」をもらうため、面接に備えました。 「一次面接」に進めたのは7社、そして「二次面接」に進めたのは「0社」。 3月から合同企業説明会に参加し、そのまま30社ほどにエントリーして、筆記試験等を経て「一次面接」に進めたのは僅か7社でした。それでも「一次面接」に呼んでもらえた7社は、いずれも「労働条件」が良い大手企業でした。なんとか「内定」をもらうため、面接に備えました。ただ真剣に「一次面接」に進めた企業の面接準備を行えば行う程、面接で問われることの多い、「志望動機」や「10年後のキャリアについての展望」といった質問の答えに詰まってしまうことに気づきました。例えば、「なぜ当社を志望されたのですか?」の質問に対して、「日本と世界を繋ぐ仕事をしたいと考え、海外との貿易を行っている御社を志望しました」と答えたとして、「会社と貿易を行っている企業は数多くありますが、その中でなぜ当社を志望されたのですか?」、といったように「なぜ」「なぜ」と問いを深掘りされた場合、「自己分析」をしっかりとしていた❝つもり❞で❝なんとなく❞決めた「やりたいこと」、「やりたい仕事」からは、面接担当者から「評価」されそうな答えを見つけ出すことは出来ませんでした。「10年後のキャリアについての展望」の問いに対する答えについても、本心では都内で、転勤もせず、夜遅くまで残業することなく、安定して働きたい、としか考えておりませんでしたので、やはり面接担当者から「加点」されるような答えを見出すことは出来ませんでした。就職活動で重視と考えられている「志望動機」=「やりたいこと」と「キャリア形成の展望」の両方にとても不安を抱えておりましたが、いくら悩み、考えても、「やりたいこと」は、何となく大学進学の際に選択した国際学部から、「ガクチ力」とも整合性を取るために考えついた「日本と世界を繋ぐ仕事」に辿り着くことはできても、ここからさらに「では具体的ではどのような仕事をしたいと考えておりますか」とか、「あなたのやりたいことに関連させて将来の夢はありますか」といった深掘りした「思い」には辿り着けないまま、「第一次面接」が始まってしまいました。エントリーした企業の中で7社の「一次面接」に呼ばれましたが、1社目の「一次面接」で、面接前からとても不安に思っていました「志望動機」と「キャリア形成の展望」の「弱さ」が出てしまいました。「なぜ当社を志望されたのですか」「具体的には、当社のどのような事業展開に興味を持たれたのですか」「具体的には、どのような仕事をされたいと考えておられますか」「これまで学ばれてきたこと、培われてきた経験などを、どのように当社で発揮されたいか、展望があればお聞かせ下さい」…。予め「一次面接」に向けて準備してきた「セリフ」を❝発声❞した後にきまって、「具体的に詳しくお話頂けますか…」「今のこの点についてもう少し詳しくお話頂けますか…」といったように「セリフ」として用意してきた回答に対して、「深さ」を求めてくる「なぜ?なぜ?」の質問には、まともに答えることができず、ただただ自分の考えの甘さを痛感する時間が続きました。「大手企業」と呼ばれる企業には、本当に多くの新卒者がエントリーし、多くの応募者の中から数人を「選ぶ」ということは、私のような「労働条件が良いから」とか「賃金が高いから」といった志望動機「だけ」では直ぐに見透かされてしまう、ということが分かってきました。5月中に「一次面接」に呼ばれた7社の面接はすべて終わり、結果は「全滅」でした。「二次面接」に進めた会社は「0社」という結果を迎えてしまいました。 📅大学4年次の6月<就職活動準備~就職活動開始から14カ月> 大学3年次の頃から漠然と就職するなら「労働条件」が良い大手企業と決めて、インターンシップも大手企業で経験し、本格的に就職活動がスタートしてからも大手企業ばかり約30社にエントリーを行い、選考に臨んだ結果、5月には「内定」ゼロ、エントリーしている企業もゼロとなっていました。 一度心に決めた「志望」を変えることが出来ない難しさ。 大学3年次の早い段階で「自己分析」を行い、自分は、自分に正直になり、給与水準は人並みより少し多く、残業はあまりしたくなく、休日はしっかり確保されていて、転勤もせずに、コンプライアンス(法令遵守)もしっかりしている大手企業で「働きたい」と考えていることを明らかにしていました。大手企業に就職するためにインターンシップも行い、しっかりと準備していたつもりでした。そして、何とか「一次面接」まで辿り着いた大手企業での実際の「面接」では、「労働条件が良い」とか、「賃金が良い」といった「志望動機」だけでは、「突破」できないことを思い知らされました。多くの新卒就活生の中から「選ぶ」側としては、「働く環境」の良さだけに魅力を感じている人材よりも、もっと深いところで「このような仕事がしたい」とか「このように会社を通じて社会と関係を築いていきたい」といった「働く意欲・意識」が高い人材を選ぶのだと感じました。すべてのエントリーした企業で「不採用」となって、ようやく自分の甘さを痛感しました。ですが、3年次に「自己分析」で明確にした「望む働き方」には嘘はありません。私は「会社に入って○○○のような仕事をしたい」よりも、ほどほどに働いて、安定した生活をしたいということが「望み」なのです。正直「働くこと」に対して、とくに「望み」はありません。夜遅くまで仕事をすることなく、賃金も人並みより少し多くもらえて、休みも取れて、ハラスメントがない会社であれば、どこでも良いと思っています。私の「望む働き方」ができそうなのが大手企業と思ったのです。今は気がつけば6月です。私が望む「働き方」ができそうな大手企業の求人は、もう既に「本年度の募集は終了しました」と表示されてしまっています。1年以上も「自己分析」で明らかにした「望む働き方」を追ってきたためか、今から自分の気持ちに嘘をついて「望む働き方」を変えることが難しそうです。新たに選考に進むためにエントリーをし直さなければならないのですが、どうしても心が動きません。同級生は次々に「内定」を獲得しているようです。私は焦る気持ちだけが日増しに大きくなりますが、反面、「ここで働きたい」とか「このような仕事をしたい」という前向きな気持ちはゼロに近く、再びエントリーを行い、就職活動に臨むことができなくなってしまっています。就職活動を再開しなければならいこと、来春の卒業と同時に働かなければならないこと、は理解していますが、どうしても心が動きません。どうしたらよいでしょうか。 【カウンセラー 工藤未来】ThirdPlaceキャリアマネジメント代表。大学院修了後、労働問題を主な研究領域とする団体・研究機関に入所する。 入所後、若年者の就職問題・キャリア形成の問題をテーマとする活動・研究を行う。 活動・研究活動を行う中で、多くの働く人からの「何のために働くのか」の問いや悩みをきっかけとして、「答え」を示すのではなく、働く人ひとり一人が「考える」ためのヒントを提供することを始める。 「労働条件」から「会社を選ぶ」ことは決して間違いではない。 ご相談者は「労働条件」の良さから大手企業への入社を希望され、3年次夏のインターンシップから志望する大手企業に赴き、「準備」されていたにも拘わらず、6月時点で「内定」を獲得できずに、今後どのように就職活動を進めれば良いか迷われていたケースでした。「内定」を獲得できずに、今後どのように就職活動を進めれば良いのか迷われる大きな原因となったのが、3年次の春から行っていた「自己分析」において、偽りなく自己と向き合った結果、給与水準は平均以上で、労働時間は短く、休日はしっかりと確保されており、転勤もなく、安定した生活をしたいため、その「望む働き方」を叶えるために大手企業に就職したい、という考えに行き着かれましたが、就職活動において「内定」を得ることが出来なかったことに求められます。ご相談者も取り組まれた「自己分析」の多くは、「望む働き方」に関して、「やりたいこと」「やりたい仕事」についても分析を進めることを推奨しています。ご相談者も大手企業の「一次面接」の準備段階で、心からの「やりたいこと」「やりたい仕事」は思い浮かばなかったと振り返られています。そして、深い「思い」がなかったことが「不採用」に繋がったと考えられ、悔やまれているご様子でした。まずご相談者にご理解頂いたのは、「労働条件」から「会社を選ぶ」ことは決して間違っていない、ということです。学校を卒業して、会社に入り「働く」のは、これまで親に依存していた学生生活から、自立して生活するためです。生活に欠かすことのできない食料や電気、水、衣服などは、誰かが「働く」ことによって、作られ、自分の下に届けられています。お米を例にしますと、誰かが田んぼを耕し、稲を植え、刈り取り、袋詰めして、届けるという「労働」を行うことで、食卓に並べることができます。お米を手に入れるためには、自分も何かしらの「労働」を行い、お米と同等の「価値」と「交換」しなければなりません。これが「労働」の意味です。誰かが「労働」して、作り出した「価値」を、自分も「労働」して、作り出した「価値」と「交換」して、生活する。このように「労働」「働くこと」を単純化して捉えてみれば、「労働」の対価として得られる「賃金」は多く、欲しい「賃金」を得るための「労働」は短く、「労働」以外の「私生活」を充実するために「休み」は多く、ハラスメントがない職場で「働きたい」、という願いは、否定される理由はどこにもないと考えられます。望む「労働条件」の会社で働き、その上、「やりたいこと」も見つかれば幸運なことだと思います。無理にでも「労働」に「やりたいこと」を見出す必要性は薄いと言っても良いと思います。とくに日本企業の新卒者採用は「職務」で雇い入れるのではなく、「総合職」として雇い入れ、会社の人員構成や必要性に応じて、従業員を配置したり、異動させたりするため、新卒者が就職活動で語った「やりたいこと」「やりたい仕事」に就けるとは限らない問題もあります。このことからも「やりたいこと」「やりたい仕事」が学生時代に思い浮かばなかったとしても、過度に悩む必要はないと考えられます。 「やりたいこと」が不明確「だから」不採用になった、は本当? ご相談が躓かれたと考えられた「深さ」を求められた質問ですが、「やりたいこと」や「やりたい仕事」が不明確だったから「不採用」になったのでしょうか。採用担当者が新卒就活生の回答に対して「深掘り」してくるのは、「事実確認」の意味合いが考えられます。ご相談者も面接前に準備された「セリフ」ですが、その「セリフ」が「事実」なのか「想像」のものなのかによって、入社後の業務遂行に支障をきたすことが考えられます。「やりたいこと」「やりたい仕事」という「思い」や「気持ち」も生産性の観点からは大事ではないとは言えませんが、それよりも新卒就活生がこれまで学んできたこと、経験したことが「事実」であり、入社後に培ってこられた能力を発揮してもらえるかどうかの方が重視されつつあります。ご相談者は答えに困ってしまったという事実は、採用ゲンバでは、「気持ち」の問題として捉えているのではなく、公開されている情報を収集し、自分なりに整理し、論理的に説明できるか、といった「能力」の問題として捉え直すことができます。たとえ、新卒就活生がどんなに素晴らしい「やりたいこと」「やりたい仕事」を語られたとしても、その「仕事」を遂行できる「能力」がなければ、「価値」を生み出すことは叶いません。近年、採用ゲンバでは、「やる気」という「気持ち」よりも、「職務遂行能力」を冷静に見極める傾向が強まっています。このことは若年層の「労働」に対する「価値観」が大きく変わってきたことと関連しています。かつては新卒者として会社に入社した後は、定年まで勤め上げるという一つの理想・キャリアモデルがありました。ですが、近年は新卒者として入社した会社を1~2年で退職し、その後も転職を繰り返しながらキャリアを形成していく若年者も珍しくはなくなってきました。企業としても長期的な視野で人材育成を考えてはいても、とくに若年層に長期勤続を必ずしも望まない傾向が広まるにつれて、短期的な「価値」を求める、つまり短期間に「価値」を生み出せる可能性が高い「職務遂行能力」を重視する方向にシフトせざるを得なくなってきています。ご相談者が躓いた「面接」については、「やりたいこと」という「気持ち」の問題として捉えるのではなく、「職務遂行能力」の問題として捉え直し、開示されている企業「情報」の収集、把握、整理の後、論理的に説明できるようにする、ことをお勧めしました。

大学から推薦された企業が、自分が望む企業「ではなかった」場合、選考に「進まない」という選択は正しいのでしょうか。

※以下のエピソードは新卒就活生が陥った悩みとカウンセラーによるカウンセリングケースです。エピソードは個人が特定されないように加工を加えております。カウンセリングケースはカウンセラーの個人的な見解によるものです。 【O大学・経済学部所属・4年生】 高校生の頃から独学でギターを弾き始め、大学ではバンド活動をしていました。卒業後は「音楽」関連の仕事に就きたいと就職活動を行ってきましたが、音楽関連の会社から内定がもらえませんでした。気がつけば9月。志望する音楽関連だけではなく、さまざまな企業で「募集は締め切りました」の表示に変わっており、不安と焦りから先日初めて大学のキャリア支援センターを訪ねました。 大学のキャリア支援センターで推薦された企業は、自分が志望している音楽業界ではなく、小売業が多かったです。推薦された会社はどれも高校時代から熱中してきた音楽に関係する業種ではないので、正直就職活動を行う気持ちが湧いてきません。 大学から推薦された企業が、自分が「望む企業ではなかった」場合、選考に進まないという選択は正しいのでしょうか。 【カウンセラー 工藤未来】ThirdPlaceキャリアマネジメント代表。大学院修了後、労働問題を主な研究領域とする団体・研究機関に入所する。 入所後、若年者の就職問題・キャリア形成の問題をテーマとする活動・研究を行う。 活動・研究活動を行う中で、多くの働く人からの「何のために働くのか」の問いや悩みをきっかけとして、「答え」を示すのではなく、働く人ひとり一人が「考える」ためのヒントを提供することを始める。 「やりたいこと」は「就職後」にもきっと叶えることができる。とにかく「経験」を積むために「就職」を。 自己分析により明確化した「望む業種・業界」、「やりたい仕事」から志望企業を絞り込み、選考活動に進む、というモデル的な就職活動プロセスを行ったところ、様々な要因が関連し合い、なかなか内定を獲得できない新卒就活生は少なくありません。 ご相談者は、望む業種・業界を音楽業界と定め、自立的に就職活動を進めておりましたが、9月になっても内定を得られなかったことから、ご相談者が通う大学のキャリア支援センターを訪問したところ、望んでいた音楽業界ではない業種の会社を推薦され戸惑っている、という状況でした。 新卒者の採用・就職活動は、一定のルールの下で行われているため、3月1日採用に関する広報の開始、6月1日採用選考のスタート、10月1日以降正式な内定とすることが「規範的」な動きとなります。多くの企業で10月1日の正式な内定、内定式を執り行うことを逆算して、選考スケジュールを組まれています。10月1日の内定式までに、4月入社予定の新卒者の選考を終える必要性から、9月に入りますと募集を締め切る企業が多くなる傾向があります。 ご相談者も志望する音楽関連の企業のみならず、多くの業種、多くの企業で採用活動を終え始めている状況から、自主的に進めてきた就職活動を見直すため、大学のキャリア支援センターに訪問しましたが、ご相談者が望む業界・業種の提案をもらうことが叶いませんでした。自身が進みたいと定めた業界・業種と、キャリア支援センターからの推薦された業種・業界とのギャップがジレンマを生んだケースと言えます。 望む働き方と、現実とのギャップを埋めることは、そう簡単ではありません。とくに、新卒者就活生の多くが取り組む「自己分析」によって、一度定めた望む働き方、進みたい業種・業界と、現実に推薦される会社とのギャップを埋めようとすることで、深い葛藤に苛まれることがあります。 本ケースでは、音楽業界を目指すことは諦められないので、9月以降も採用活動を継続している音楽業界の求人を探しつつ、一方で、一旦は志望する業界・業種ではないにしても、いずれ音楽業界へ転職をするために必要なスキル、経験等について研究し、必要なスキル、経験を得られそうな会社を選択する、という2つの活動ルートをご相談者と共有しました。「自己分析」と大学から推薦された会社とのギャップで葛藤を経験する新卒者は少なくありません。その葛藤を理解し、新卒者が前に進むための心の整理を一緒に行った事案となりました。

私は人見知りで初対面の人と話すのが苦手です。 面接という短時間で、自己PRや志望動機や、これまでの経歴を自信を持って話すことが出来ません。

※以下のエピソードは新卒就活生が陥った悩みとカウンセラーによるカウンセリングケースです。エピソードは個人が特定されないように加工を加えております。カウンセリングケースはカウンセラーの個人的な見解によるものです。 【N大学・国際学部所属・4年生】 私は人見知りで、初対面の人と話すのが苦手です。面接という短時間で、自己PRや志望動機や、これまでの経歴を自信を持って話すことが出来ません。 就職活動を始めて数カ月、同級生の中でも、明るく、人見知りしない人達が内定を得ている気がします。人見知りの私は、就職活動から取り残されそうで不安です。どうしたらよいでしょうか。 【カウンセラー 工藤未来】ThirdPlaceキャリアマネジメント代表。大学院修了後、労働問題を主な研究領域とする団体・研究機関に入所する。 入所後、若年者の就職問題・キャリア形成の問題をテーマとする活動・研究を行う。 活動・研究活動を行う中で、多くの働く人からの「何のために働くのか」の問いや悩みをきっかけとして、「答え」を示すのではなく、働く人ひとり一人が「考える」ためのヒントを提供することを始める。 面接で問われる質問には「傾向」があり、セリフとして反復練習しましょう。 就職活動における「面接」は相談者の指摘の通り、数十分という短時間で採否が決まってしまいます。新卒就活生の中には「じっくりと私の話しを聞いてもらえれば、きっと良さが伝わるのに…」とか「文章に書いたものを読んでもらえれば、会社に必要な人材であることを分かってもらえるのに…」といったことを呟かれる方も多くおられます。 面接が苦手、という言葉の中には苦手の理由が数多く包含されています。例えば、採用試験に臨む会社のことをあまり良く調べず、面接に進んだため、質問に対する答えに窮してしまうといった「業界研究・企業研究」の準備不足からくる面接への「苦手意識」があげられます。また、自身これまでの経歴から、どのような職業に就きたいのかについて現時点の考えをまとめられておらず、回答に困ることが複数あり面接に対して苦手意識を持ってしまった、といった「自己分析」の難しさからくる苦手意識などが考えられます。ここであげた苦手の中身は、企業研究や自己分析に関連する要因となります。 ご相談者の悩みの理由を、一緒に探ったところ、本ケースでの面接が苦手の要因は、ご相談者の見立て通り「人見知り」によるものだと分かりました。人見知りによる面接の苦手意識を克服するためには、とてもオーソドックスではありますが、反復練習をして頂きました。 ある程度、就職活動における「面接」の質疑応答は「セリフ」のように何度も反復練習することで、過度に緊張せずに、スラスラと発すことが出来るようになります。新卒者を採用する企業は数十万社とありますが、採用面接で問われる質問には「傾向」があります。多くの企業で問われている質問に的を絞り、質問に対する答えを「セリフ」として覚え、練習する、これが本ケースで用いたオーソドックスなソリューションとなりました。

現在6月ですが、就職活動を一旦諦め、卒業後に就職活動を再開しようと思っています…。 卒業してしまったら「新卒者」ではなくなるのでしょうか。

※以下のエピソードは新卒就活生が陥った悩みとカウンセラーによるカウンセリングケースです。エピソードは個人が特定されないように加工を加えております。カウンセリングケースはカウンセラーの個人的な見解によるものです。 【L大学・工学部所属・4年生】 3年次の1月から就職活動に向けて「自己分析」をしっかり行い、3月1月会社説明会解禁から積極的に志望する会社の説明会に参加、エントリー、選考活動に臨んできました。しかしながら、6月になっても内定は出ませんでした。「不採用」となった企業も数十社に上ります。しっかりと「自己分析」を行い、志望する会社の企業研究も1社1社手を抜かず行い、面接の準備も怠りませんでした。それでも1社も内定が得られなかったことで正直自信を失っています。これ以上就職活動を継続する気が起きません。 このまま就職活動を行わず、卒業後に落ち着いてから就職活動を再開しようかとも考え始めています。ですが、同級生が4月に一斉に社会人になるにも関わらず、自分一人が無職で、『また』就職活動を行うと思うと…、とても怖いです…。 現在6月ですが、就職活動を一旦諦め、卒業後に改めて就職活動を再開しようと思っていますが、卒業してしまったら「新卒者」ではなくなるのでしょうか。また「新卒者向け」の求人に応募できなるなるのでしょうか。 【カウンセラー 工藤未来】ThirdPlaceキャリアマネジメント代表。大学院修了後、労働問題を主な研究領域とする団体・研究機関に入所する。 入所後、若年者の就職問題・キャリア形成の問題をテーマとする活動・研究を行う。 活動・研究活動を行う中で、多くの働く人からの「何のために働くのか」の問いや悩みをきっかけとして、「答え」を示すのではなく、働く人ひとり一人が「考える」ためのヒントを提供することを始める。 できるならば在学中に就職活動の継続を。そのための「安心して相談できる場所」。 ご相談者の悩みは、しっかりと「自己分析」、「企業研究」、「面接対応」を行ったにも拘わらず、内定を得られず、在学中の就職活動を諦め、卒業後に就職活動を再開した場合、どのような状況になるのか、でした。 厚生労働省では「青少年雇用機会確保指針」を発しており、3年以内既卒者は「新卒者枠」で応募受付を行うよう企業に呼び掛けています。この指針に則り、ハローワークで取り扱う「新卒者向け」求人には、3年以内既卒者の応募を「可」とするよう要請されます。このような事情から「公的」には卒業後3年以内は「新卒者」として取り扱いがなされますので、ご相談者が望まれておりました卒業後に就職活動を再開しても応募は可能です。 しかしながら「新卒者扱い」で応募は出来たとしても、「現実」としては、就活生の味方となってくれる所属大学のキャリア支援センターのサポートが受けられなくなったり、同級生からの情報の共有が無くなってしまったり、指導教員からのOBの紹介機会が少なくなってしまったりと、在学中とは異なる状況下での就職活動を余儀なくされてしまいます。「就職氷河期」においても、就職活動の厳しさから在学中の内定獲得を諦め、卒業後に就職活動を再開した新卒者も多くおりました。結果的には、先に述べた通り、在学中には得られたサポートが途絶えてしまい、多くの「既卒者」がより厳しい環境下での就職活動を強いられてしまいました。卒業後、就職活動を再開しても正職員として就職できなかった方も残念ながらおりました。政府が2019年に発表した「就職氷河期世代支援に関する行動計画」では、就職氷河期に就職活動を強いられた世代で、(就職氷河期から約20年の時を経た)2019年時点において、正規雇用を希望していながら不本意に非正規で働く人が約50万人と推定されています。さらに「働くこと」を希望していながら、さまざまな事情で無業となっている人は100万人程度と推計しています。 複数社から「不採用通知」が届くこと、内定をなかなか得られないこと、本当に辛いことです。しかしながら、在学中の就職活動を諦めてしまうことで、卒業後の就職活動の環境が劇変してしまうことも事実です。ご相談者からの卒業後に就職活動を再開することでどのように状況が変わるのかについては、在学中に受けられていた各サポートが卒業後は受け難くなることを丁寧に説明しました。 ご相談者には、不採用通知が来ても心が折れないようなカウンセリング、ケアを行った上で、在学中の就職活動に復帰頂きました。【引用・参考文献】・『就職氷河期世代支援に関する行動計画2019』内閣官房(2019)

自分の「強み」と考えていた「コミュニケーション能力」は、企業からは「強み」とは見なされないものなのか…、と深く悩んでいます。

※以下のエピソードは新卒就活生が陥った悩みとカウンセラーによるカウンセリングケースです。エピソードは個人が特定されないように加工を加えております。カウンセリングケースはカウンセラーの個人的な見解によるものです。 【K大学・社会学部所属・4年生】 多くの企業で「求める人材像」に含まれているワードに「コミュニケーション能力が高い方」とあります。私も小中高、大学と体育会に所属しており、多くの先輩、同期、後輩たちと「上手くやってきた」自信があります。その意味で、自己PRにも「子供の頃からずっと部活、体育会に所属し、多くの仲間たちと『上手くやってきました』。自分では『コミュニケーション能力の高い』と思っています」といつも記入したり、面接でもそのように答えています。 就職活動でも「求める人材像」に「コミュニケーション能力が高い方」と表明している企業に応募し続けていますが、これまで1社も「内定」を得られていません…。企業が「求める人材像」である「コミュニケーション能力が高い方」に合致していると自分では思っていたのですが、不採用が続くことで、自分の強みと考えていた「コミュニケーション能力」は、企業からは「強み」とは見なされないものなのか…、と深く悩んでしまっています。 【カウンセラー 工藤未来】ThirdPlaceキャリアマネジメント代表。大学院修了後、労働問題を主な研究領域とする団体・研究機関に入所する。 入所後、若年者の就職問題・キャリア形成の問題をテーマとする活動・研究を行う。 活動・研究活動を行う中で、多くの働く人からの「何のために働くのか」の問いや悩みをきっかけとして、「答え」を示すのではなく、働く人ひとり一人が「考える」ためのヒントを提供することを始める。 「コミュニケーション能力が高い方」は長期勤続を前提として、従業員全員に求められる「普遍的な資質」。コミュニケーション能力『だけ』では採否は決定しない。 ご相談者の悩みは、企業が「求める人材像」に掲げている「コミュニケーション能力の高い方」に合致していると信じるに足りる経験と実績があるにも拘わらず、内定に至らず不採用となってしまい、自己の「強み」と考えていた「資質」に揺らぎが出てしまっている、というものでした。 確かに、多くの企業で「求める人材像」の中に「コミュニケーション能力が高い方」、もしくは、とても曖昧な表現でありますが「人間力の高い方」といったものを掲げています。この傾向の根底には、日本企業の雇用慣行の特徴の一つであります「長期勤続」「長期育成」の考え方が流れています。新卒者として採用し、採用と同時に教育をスタートさせ、会社内の様々な仕事を経験させるために、新卒者には長期間に亘り多くの上司、先輩、同僚、後輩と良好な人間関係を崩さずに勤務できることを選考基準としている会社が多いことに起因していると考えられています。 この求める人材像における「コミュニケーション能力」については、新卒者を困惑させるワナが隠されているとも言えます。企業としては、新卒者を一括採用し、長期的に育成、長期的に勤続してもらうことを想定した「重要項目」として「コミュニケーション能力」を掲げていることが、エントリーしている新卒者にとっては「必要十分条件」と錯誤させてしまっていることが指摘されています。 つまり「コミュニケーション能力の高い方」は日本企業の長期勤続、長期育成の雇用慣行においては、「重要項目」、言い換えれば「普遍的に求められる資質」とも言えます。企業が求める人材像の中には、「コミュニケーション能力」の他にも、論理性や明晰性、学習意欲や探求心など、各社のビジネスモデルの違いにより、様々な「資質」が求められます。 ご相談者には「コミュニケーション能力」以外の企業が「求める人材像」について、再度企業研究を行ってもらい、「コミュニケーション能力」以外についても自己PRに取り入れて頂くことで、就職活動を再開頂きました。

親から「就職先は大手企業にしなさい」と何度も言われ、大手企業のみに絞り就職活動を行ってきましたが 結果、一つも内定をもらえずにもう6月です…。

※以下のエピソードは新卒就活生が陥った悩みとカウンセラーによるカウンセリングケースです。エピソードは個人が特定されないように加工を加えております。カウンセリングケースはカウンセラーの個人的な見解によるものです。 【J大学・経済学部所属・4年生】 就職活動が始まる前から、親から「就職先は大手企業にしなさい」と何度も言われ、自分でも「そういうものかもしれない」と思い込み、3月~5月はずっと大手企業のみに絞り就職活動を行ってきました。結果、大手企業からは一つも内定をもらえずに、気がつけばもう6月です。大手企業の求人状況も「募集は締め切りました」が多くなり、焦っています。親の期待もあり、大手企業のみに絞った就職活動をしてきたことを今になって悔やんでいます。 就職活動を始める前から、自分は「大手企業に就職する」と志望を固め過ぎていたため、これから大手企業以外に目を向けることが難しいです。とはいえ、悩んでいても時間だけは過ぎて行き、日を追うごとに新卒者向け就活サイトの「募集は締め切りました」の表示を見るのが辛くなって来ています。どうしたらよいでしょうか…。 【カウンセラー 工藤未来】ThirdPlaceキャリアマネジメント代表。大学院修了後、労働問題を主な研究領域とする団体・研究機関に入所する。 入所後、若年者の就職問題・キャリア形成の問題をテーマとする活動・研究を行う。 活動・研究活動を行う中で、多くの働く人からの「何のために働くのか」の問いや悩みをきっかけとして、「答え」を示すのではなく、働く人ひとり一人が「考える」ためのヒントを提供することを始める。 20年以上「見守ってきた」両親のアドバイスには何かしらの「理由」がある。アドバイスを「嚙み砕いて」理解できるかがカギ。 新卒者の就職活動において、大きな影響を及ぼすのがご両親です。ご相談者のケースは、親御さんがお子さんの就職先は「大手企業が良い」という親としての期待を伝え続け、ご相談者も親御さんの期待に応えるため、就職活動を大手企業に絞り行った結果、内定を得られず苦しんでおられる、といったものでした。学校を卒業してはじめて社会に出るお子さんに対して、親御さんが、文字通り「親心(おやごごろ)」で就職先のアドバイスをすることは、ある面当然と言えます。20年以上、お子さんを見守ってきた親御さんがお子さんの「性格」や「強み」から、アドバイスする方向性は間違っていないことが多いです。しかしながら一方で、ご相談者のように親御さんの期待に応えられず苦悩する新卒者も少なからずいることも事実なのです。 本ケースでは、ご相談者の親御さんが「なぜお子さんであるご相談者に大手企業を薦め続けたのか」を少し考えて頂くことから対話を始めました。「なぜ大手企業を薦めたのか」、親御さんはお子さんのことを誰よりも知った上で、大手企業を薦めていたのであれば、薦めていた理由に、ご相談者のこれから就職活動を再開する「鍵」があると思われるからです。「対話」内容の詳述は避けますが、ご相談者が自ら見出した親御さんが、自分に大手企業を薦めていた理由は、「一つのことに集中して継続的に取り組める半面、複数の事柄を同時に行うことが苦手。周りの環境変化に柔軟に対応することが苦手で、自分を取り巻く環境が安定していないと不安に陥りやすい」というご相談者の性格を考慮してのことである、という結論に至りました。 このような結論から、6月後半から再開した就職活動では、「専門職」に近いキャリア形成をできる会社、競争環境が比較的安定して業務内容の変化も穏やかと考えられる会社に志望を定め直し、再度就職活動に臨んで頂きました。

「自己分析」で「業種」「業界」について考えていますが「どの業種・業界に進みたい」といった結論が出せません。

※以下のエピソードは新卒就活生が陥った悩みとカウンセラーによるカウンセリングケースです。エピソードは個人が特定されないように加工を加えております。カウンセリングケースはカウンセラーの個人的な見解によるものです。 【H大学・文学部所属・4年生】 「自己分析」において、自分が進みたい「業種」「業界」について考えていますが、「どの業種・業界に進みたい」という結論が出せません。合同企業説明会のシーズンも過ぎ、これから個別企業へのエントリー、選考へと進んでいく中で、第一段階の「業種選び」で躓いてしまっています。このままでは、志望する個別企業を絞り切れず、ただ時間だけが過ぎてしまうようで不安を覚えます。どうしたらよいでしょうか…。 【カウンセラー 工藤未来】ThirdPlaceキャリアマネジメント代表。大学院修了後、労働問題を主な研究領域とする団体・研究機関に入所する。 入所後、若年者の就職問題・キャリア形成の問題をテーマとする活動・研究を行う。 活動・研究活動を行う中で、多くの働く人からの「何のために働くのか」の問いや悩みをきっかけとして、「答え」を示すのではなく、働く人ひとり一人が「考える」ためのヒントを提供することを始める。 「望む働き方」と「望む業種・業界」は密接な関係にある。 「自己分析」の中でも、望む業界・業種が絞り切れない、という悩み相談でした。望む業界・業種については、「絞り込むべき」という意見と、「絞り込む必要はない」という相反する意見や考え方があります。これは、望む業界・業種を「絞り込んだ」場合のメリットと、「絞り込まなかった」場合のメリットが、両方考えられることに起因します。 ご相談を頂いた新卒者の悩みは「絞り切れない」ことにありましたので、このケースでは、望む業界・業種を「絞り込んで」就職活動を進めるためのカウンセリングを行いました。就職先としての個別企業の選択の前に、広く望む業界・業種を選択した方が、限られた時間において大卒新卒者向け求人企業約67万社の中から、会社説明会に参加し、エントリーし、選考に臨む企業を効率的に選ぶことができる、というメリットが考えられます。 新卒者の就職先としての業界・業種の意味は「望む働き方」に密接に関係してきます。例えば、社会インフラ業界に属する電力、ガス、通信業界は、その業界に新規参入する企業は多くなく、数十年に亘り安定した市場に、安定的な企業数で市場が形成されています。安定した市場において、安定的な企業数(=プレイヤーで)構成されている業界・業種に属し、数十年の社歴を有する企業での「働き方」は長期勤続、一企業内での能力形成、一企業内での職務経験を積んでいくような「働き方」がイメージされます。 一方で、急成長している業界・業種、例えば、IT業界では、さまざまな「仕事」がデジタル技術の導入の対象先となることから、市場規模もますます広がり、新規参入企業も膨大な数になります。競争が厳しい一方で、市場規模も拡大していることから、企業が成長するダイナミズムを感じられる仕事が多いという側面があります。ベンチャー企業の参入も多いことから、比較的若い世代の従業員で構成されている会社も多く、人間関係もフランクな社風で働ける可能性も高いと言えます。IT技術の進化の速度は速く、一企業内でじっくりと能力形成や職務経歴を積むことの他、業界横断的に他社に転職を繰り返し、多くの企業での「仕事」を通じて新しい技術を習得してゆく働き方も、成長産業に属する企業で働くことの特徴の一つと言えます。IT業界だけではなく、太陽光発電や風力発電に代表される新エネルギー業界についても、成長産業であり、新規参入企業が比較的多い業界と言えます。 ご相談者には、成長産業である業界・業種に属する企業で、業界や企業が成長するダイナミズム溢れるステージで働くことを望むのか、安定的な産業である業界・業種に属する企業において、長期勤続・長期育成を提供されるような働き方を望むのか、という「望む働き方」という視点で業界・業種選びを行うことも一つの方法であることを理解頂きました。

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