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文部科学大臣メッセージ「夏休み後の学校がはじまって、不安や悩みがあるみなさんへ」

2021年8月19日、文部科学大臣メッセージ「「夏休(なつやす)み後(ご)の学校(がっこう)がはじまって、不安(ふあん)や悩(なや)みがあるみなさんへ」が宣せられた。 文部科学大臣からこのようなメッセージが宣せられた背景には、18歳以下の自殺が学校の長期休業明けにかけて増加する傾向があるため。 メッセージのタイトルによみが振られていることからも、文部科学省としてはこのメッセージを小学生にも届ける必要性を感じていることが分かる。 小学生向けのメッセージでは、 「小学生のみなさんへ~ 不安やなやみがあったら話してみよう ~ 夏休みが終わり、学校で久しぶりに友達と 話をしたり、みんなで勉強したりできるのが楽しみな人もいるでしょう。もしかすると、いつもの生活や学校生活に困ったことや、イヤなことがある人、学校が始まることが不安な人もいるかもしれません。 もし、困ったことや、イヤなことがあったときには、家族や先生、学校のスクールカウンセラー、友達、だれでもよいので、なやみを話してみてください。 どうしても周りの人に相談しづらいときは、電話やメール、ネットなどを使って、相談窓口に遠りょなくあなたのなやみを聞かせてください。 また、あなたの周りに元気がない友達がいたら、ぜひ積極的に声をかけてあげてください。あなたの声がけで、友達が元気になるかもしれません。」と優しく語りかけています。 また文部科学大臣メッセージは大学生等向けに発信されており、 「学生等のみなさんへ 長期休業期間中から休業明けにかけて、自身の将来のキャリアや学業の問題について、あるいは人間関係などについて、悩みをもったり、不安を感じたりすることがあるかもしれません。そんな時には、家族、友人、学校の先輩や教職員等、身近な人にあなたの悩みを話してみてください。必ずあなたの味方になってくれる人がいます。絶対に、一人で悩みを抱え込まないようにしてください。 各地域には電話や SNS などで相談できる窓口、また、各大学等にも相談窓口があります。周囲への相談が難しい場合には、ぜひ利用してみてください。 また、あなたの周囲に元気がない人がいたら、ぜひ積極的に声をかけてあげてください。あなたの声がけが、身近な人の悩みや不安を和らげることにつながるでしょう。」と同じく悩みを一人で抱え込まないように訴え掛けています。 できる人が、できることを。 孤独と孤立を抱えながら生きている方に向けて「できる人が、できることを」。 一緒に不安で、苦しく、暗いトンネルを一緒に抜けるため、手を差し伸べる勇気を。 【引用・参考文献】 ・「文部科学大臣メッセージ『夏休み後の学校が始まり、不安や悩みがあるみなさんへ』」 文部科学省(2021年) ・「令和3年6月23日児童生徒の自殺防止に係る取組について(通知)」 文部科学省(2021年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 チャット不安悩み相談

就活で「選ばれない」恐怖を超えて、自ら「選ぶ」人生を

新卒就活生のためのオンライン就職相談は、「就職氷河期」という新卒就活生にとって非常に厳しい就職環境の時代に、実際に心を病むような就職活動を経験した当時の新卒者が、約20年の社会人としての経験を積む一方、自身の就職活動を振り返り、就職活動と「キャリア」の関係性について深く考え、カウンセラーの資格を取得した者たちが、自身も経験した不安で孤独な就職活動の経験から「今」就職活動を行う新卒者をサポートしたい、という志から立ち上げられた活動である。 現在はカウンセラーとなった当時の新卒者の就職活動は、面接で落ちる恐怖、「自分が選ばれない」ことの恐怖が大きかった。過度な企業側の「買い手市場」は、「会社説明会から選考が始まっている。会社説明会で座る位置は最前列、そして採用担当者の話に相槌や頷きをすること」、「面接は、会社に入る前から始まっていて、会社を出ても気を抜かないこと」など、細部に亘る「就活の作法」がまことしやかに流布されていた。 当時の流布されていた「就活の作法」は、今考えれば…、というものがとても多いものの、過度な企業側の「買い手市場」の状況下においては、就活生が信じ込んでしまうだけの張りつめた雰囲気があった。 実際、少なくない就活生が数え切れなくなる程の不採用通知に心を痛めた。 1990年代後半から2000年代前半の「就職氷河期」に新卒者として就職活動を経験した者たちも、2021年の今では40代となり、企業の中核人材となっている。新卒就活生のためのオンライン就職相談の活動に参画している者は、就職後も自己研鑽を積み、カウンセラーの資格を所得する一方、所属している企業・組織において、中核として活躍している人材。 ただ企業に所属し、フルタイム正社員として働きながら、カウンセラーの資格を取得するなど、自己研鑽を100%「前向きな」気持ちで行っていたかというと、補足が必要となる。 新卒就活生のためのオンライン就職相談に参画している者たちの多くは、自身の就職活動時に「選ばれない」恐怖を何度も経験し、新卒者として安定的な会社・組織に就職した後も、長いキャリアの中でもう一度就職活動をせざるを得ない状況になった時には、もう「選ばれない」恐怖を味わいたくない、という自己防衛の意味合いが濃い動機づけから自己研鑽を積んできた。 そのような理由からも、オンライン就職相談に参画しているカウンセラーは、カウンセラー以外の資格も保有している者が多い。 就職活動時の「選ばれない」ことへの恐怖から自己研鑽、学び続けたことで、現在の就活生のサポートも出来るように。そして、会社、組織に所属し、中核人材として活躍しながらも、主体的にキャリア形成を考えられるように。 動機づけは必ずしも前向きなものではなくとも、積み重ねの先に、主体的、自立的なキャリアと人生があるのではないか。 なぜ学び続けなければならないのか—。 それは主体的、自立的に生きるため。 「就職氷河期」は、新卒就活生にとって選択肢が限られてしまっていた不遇な時代だった。 だからこそ就職後、キャリア形成の中で主体的、自立的に働くこと、生きることを願う世代を産み出したのではないか。 「就職氷河期」世代が、主体的な世代、自立的な世代と呼ばれる日も近い。 【引用・参考文献】 ・「第 17 回 2001 年卒大卒求人倍率調査」 株式会社リクルートリサーチ(2000年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 チャット不安悩み相談

大卒後「進学で就職でもないことが明らかな者」4万人。

2021年5月、厚生労働省と文部科学省が公表した「令和2年度大学等卒業者の就職状況調査(令和3年4月1日現在)」によれば、2021年3月大学等卒業者の就職率は96.0%であった。前年の2020年3月卒の就職率98.0%よりは2ポイント下がったものの就職率は高水準を維持し続けていると言える。 一方で、就職率96.0%の母数となる学生数は「就職希望者」であることには注意が必要となる。ちなみに、就職率を算出する基礎となる調査対象大学における「就職希望者」の割合、就職希望率は76.0%であり、就職を希望した76.0%の学生の内、実際に就職した学生の割合が96.0%ということになる。 さて、文部科学省が公表する重要な調査の一つに「学校基本調査」がある。この調査では、大学を含む幼稚園から大学院までを卒業した者の「その後」を明らかにしている。 2020年12月に公表された「令和2年度学校基本調査」によれば、2020年3月卒業の大学生は573,947人。そのうち「就職者」は446,082人で全卒業者の77.7%であった。ちなみに大学院等への「進学者」は64,627人、11.3%であった。 「学校基本調査」で注目すべきは「左記以外の者」。左記以外の者とは「進学でも就職でもないことが明らかな者である(進学準備中の者、就職準備中の者、家事の手伝いなど。)」のこと。 卒業後に「左記以外の者」=進学でも就職でもないことが明らかな者は、40,809人、全卒業者の7.1%に上る。 この40,809人のうち何人が、注釈に示された進学準備中の者、就職準備中の者、家事の手伝いなのか、といった内訳は明らかにされていない。新卒者の就職相談を行う私たちとしては、40,809人の中でも「就職準備中の者」、さらに言えば、就職を希望していながら不本意ながら卒業までに就職先を見つけられなかった新卒者へのサポートの在り方について考えざるを得ない。 「就職状況調査」において公表される「就職率」は就職希望者が母数となる算出される一方、「学校基本調査」は全大学生の卒業後を調査した数字となる。 「就職状況調査」における2020年3月大学等卒業者の就職率は98.0%。「学校基本調査」における2020年3月大学卒業後の「就職者(率)」は77.7%である一方、「左記以外の者(進学でも就職でもないことが明らかな者)」は40,809人、7.7%であった。 さらに見てみると、「就職状況調査」における2010年3月大学等卒業者の就職率は91.8%と、就職希望者の9割以上が就職しているという公表値の一方、「学校基本調査」における2010年3月大学卒業者541,428人、そのうち「就職者」は329,190人、「卒業者に占める就職者の割合」は60.8%であった。2010年3月卒者の「就職者」以外の状況は、進学者86,039人(全卒業者の15.9%)、そして「左記以外の者」=「進学でも就職でもないことが明らかな者」は87,174人、全卒業者の16.1%に上っている。 昨今「売り手市場」と称される新卒者労働市場ではあるものの、「就職率」と共に、「左記以外の者」の数字にも注視することで、「誰一人取り残さない」新卒者就職活動サポートの在り方がより明らかになってくるのではないだろうか。 【引用・参考文献】 ・「令和2年度大学等卒業者の就職内定状況調査(令和3年4月1日現在)」厚生労働省、文部科学省(2021年) ・「令和元年度大学等卒業者の就職状況調査(令和2年4月1日現在)」厚生労働省、文部科学省(2020年) ・「平成21年度大学等卒業者の就職状況調査(平成22年4月1日現在)」厚生労働省、文部科学省(2010年) ・「学校基本調査—令和2年度 結果の概要—」文部科学省(2020年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 チャット悩み相談

「就職失敗」を原因・動機とする自殺が起きている事実

毎年3月に警察庁から当該年度中における自殺の状況について公表がなされている。この統計の中で、オンラインによる就職相談、安心して就職に関する悩みや不安を相談、吐露できる「第3の場所」創りに繋がる項目がある。 自殺の原因・動機が「就職失敗」であった項目である。 2020年度における自殺の原因・動機が「就職失敗」であった人数は187人。そのうち若年者と称される20~29歳の「就職失敗」が原因・動機と考えられる人数は78名(そのうち男性が60人、女性が18人)であった。 ちなみに、2015年度におけるにおける「就職失敗」による20~29歳の自殺者は、88人(そのうち男性が81人、女性が7人)、2010年度は153人(そのうち男性が81人、女性が7人)、2007年度は60人(そのうち男性が51人、女性が9人)であった。 就職、職業選択を原因・動機として、命を自ら断ってしまう若者が毎年いる不幸な事実。 就職、職業選択の辛さ、厳しさを経験したカウンセラーが就職相談を提供することで、ほんの僅かでもこの不幸な事実を変えることはできないだろうか。 自身が非常に厳しい就職環境であった「就職氷河期」の苦しい就活経験と、資格に裏付けられた確かなカウンセリング技術を以って、不幸な事実が繰り返されないように貢献していきたい。 新卒者のためのオンライン就職相談—「第3の居場所」は、この不幸な事実の根絶に向けて活動を行っていきます。 【引用・参考文献】 ・「令和2年中における自殺の状況 付録」警察庁(2020年) ・「平成27年中における自殺の状況 付録」警察庁(2015年) ・「平成22年中における自殺の概要資料」警察庁(2010年) ・「平成19年中における自殺の概要資料」警察庁(2007年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 チャット悩み相談

8月1日内定率85.3%。ここ2カ月が大切に。

株式会社リクルートの研究機関、就職みらい研究所の発表によると、2022年4月入社予定者の2021年8月1日時点の内定率は85.3%と、新型感染症の影響が無かった2020年3月卒の同時期内定率91.2%よりは5.9ポイント低いものの高水準であることが分かった。ちなみに、新型感染症の影響を大きく受けた2021年3月卒の同時期内定率は81.2%と、本年度に比べると4.1ポイント低い値であった。 この調査で私たちが注視している項目は、内定未取得者の「就職活動実施率」である。就職活動実施率とは、調査当月に就職活動を実施している者の値であり、内定未取得者が就職活動を継続しているかどうかを類推できる値でもある。 調査によると、8月1日時点で内定未取得者の就職活動実施率は92.1%であり、ほとんどの内定を得られていない新卒者が就職活動を継続していることが分かる。 新型感染症を影響を強く受けた2021年3月卒に関しては、例年とは異なる就職活動であったことから、「通常」と考えられる2020年3月卒調査から8月以降の内定未取得者の就職活動実施率を見てみると、1カ月後の9月1日時点では79.9%と約2割の内定を得られていない新卒者が就職活動を実施していない、就職活動を止めてしまっていることが分かる。そして、さらに1カ月後の10月1日時点では59.9%と大きく就職活動実施率が下がり、12月1日時点では36.6%と、内定未取得者の6割を超える新卒者が就職活動を実施していない状況となる。 内定未取得者が就職活動を実施しなくなる要因については、さらなる調査が必要となるが、一般論としては、長期間の就職活動は新卒者にとって精神的に非常に厳しいことであることは想像し易い。 例年と同様の傾向であるならば、内定未取得者にとってはこれからの2カ月が非常に大切な期間と言える。統計的には、9月、10月と時が経過するにつれて、内定を得られていない新卒者の中で就職活動を実施しなくなる者が増えていく傾向を示している。 8月1日時点で内定を得られていない新卒者には、丁寧なサポートが求められる。 【引用・参考文献】 ・「就職プロセス調査(2022年卒)『2021年8月1日時点内定状況」就職みらい研究所(2021) ・「就職プロセス調査(2020年卒)【確定版】『2019年12月1日時点内定状況」就職みらい研究所(2019) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 チャット悩み相談

日本企業のこれからの人事戦略

一般社団法人日本経済団体連合会は2020年11月に、これまでの成長戦略に「。」=終止符を打ち、これから日本企業が向かうべき方向性を大きく示した「。新成長戦略」を公表した。 「。新成長戦略」では、わが国が持続可能な(サステナブル)な資本主義を実現させていくために、多様な主体が求める、多様な価値の包摂と協創をデジタルトランスフォーメーション(DX)の力で繋ぎ合わせていく、そのためのアクションを提示した。 「。新成長戦略」ではサステナブルな資本主義の実現のため、企業における「働き方」についても提言しており、日本を代表する経済団体が発する変革への方向性は、個別企業の人事戦略にも少なからず影響を及ぼす。 では、経団連が示したこれからの日本企業が向かうべき人事戦略、「働き方」について見てみよう。 P26 「2. 働き方の変革 (1) 時間・空間にとらわれない柔軟な働き方への転換 Society 5.0 時代の働き手は、デジタル技術を豊かな想像力・創造力で使いこなし、時間・空間にとらわれない、柔軟な働き方を通じて価値を創造する。働いた時間ではなく生み出す価値によって評価され、それに基づいて処遇される。企業はリモートワークと出勤、オンラインとオフラインを必要に応じて組み合わせ、最も生産性の高い働き方を追求する。 また働き手の健康確保を前提として、副業・兼業も奨励する。 その際、重要なのは一人ひとりの働き手のエンゲージメントを高め価値創造力を最大限に引き出す管理職の役割である。管理職には、従来の均質なチームが時間と空間を共有して働く場合とは異なり、多様性から価値を創造するマネジメントが求められる。」 ここでは、時間、空間にとらわれない働き方を奨励しつつ、一人ひとりが生み出した価値によって評価される人事制度を提唱している。 p27 「(2) 多様で複線的なキャリア形成に向けた人材流動化 柔軟な働き方の普及に伴い多様で複線的なキャリアが一般的になると、新卒一括採用や長期・終身雇用、年功序列制度は機能しなくなるため、企業は採用や雇用、処遇のあり方を見直すことが必要になる。新卒だけでなく中途採用も行い、バックグラウンドや経験、技能の多様性を確保する。同時に、企業の DXに伴い社内で新たに生まれる業務に人材を円滑に異動させるため、リスキリングも必要となる。DX に伴う産業構造の転換により、衰退し、失われる業種・職種がある一方、新たに生み出され、成長する業種・職種もある。重要なのは、失われる雇用から新たに生まれる雇用へ、円滑に労働力の移動が図られるよう支援する環境の整備である。円滑な労働力移動に不可欠な『学びなおし』には、国として集中的に投資することが求められる。」 経団連としても新卒一括採用や長期・終身雇用、年功序列制度の限界を示しつつ、従業員一人ひとりが新しいデジタル社会への適応していくため、学び直しに必要に言及している。主体的なキャリア形成のため、学ぶことが求められることは、時代の変化の要請によっても強められると言える。 p13 「~柔軟な働き方や多様で複線的なキャリアが実現する社会 DX の進展やコロナ禍を一因として、個人の働き方やキャリアに対する考えは大きく変わる。デジタル技術の発展により、業務のオンライン化、遠隔化、無人化が進み、定型業務から創造的業務への移行もあいまって、幅広い職種につ いて時間・空間にとらわれない柔軟な働き方が可能になる。 それに伴い、時間を柔軟に活用した副業・兼業や、リモートワーク、二地域居住なども普及する。個人はそれによって充実した生活を送るとともに、自らの能力を遺憾なく発揮し、高い生産性を上げている。企業が『社会価値の創造』で評価されるように、個人も『社会価値の創造』によって評価され、対価を得る社会へと変化する。 個人のキャリアの形も変化する。一生の間に大企業、中小企業、スタートアップ、学術界、官庁、NPO 等、時に学びを繰り返しながらさまざまな立場を渡り歩く、あるいは同時にさまざまな立場に身を置く、多様で複線的なキャリア形成が普通になる。それによって主体間の人材交流によるカルチャーの共有、個々の組織における多様性の拡大が進み、多様な主体による価値協創が促進され、社会全体の生産性が向上している。このように柔軟な働き方や多様で複線的なキャリアがあたりまえになっている社会では、年齢、性別、国籍、障がいの有無の別なく、より多様な人々が活躍している。 柔軟な働き方により、個々人の状況に応じたワーク・ライフ・バランスが実現し、育児・介護中などこれまで就業を諦めざるを得なかった人々も就業機会を得て所得も増加することから、産みやすく育てやすい社会になっている。政策による後押しもあり、出生率が劇的に回復し、わが国経済社会の持続可能な成長を支えている。」 幅広い職種について時間・空間にとらわれない柔軟な働き方が可能となり、 時間を柔軟に活用し副業・兼業やリモートワークが普及する、 個人も「社会価値の創造」によって評価される、対価を得る、 個人のキャリア形成は、多様で複線的となり、 個々人の状況に応じたワーク・ライフ・バランスが実現し、 わが国の持続的成長が実現する。 経団連が描くこのような理想の社会が実現し、みなが主体的に生きる社会が一日でも早く到来することを切に願う。 このような理想的な社会においては、新卒就活生のオンライン就職相談に寄せられる相談も、ポジティブな相談が多くなるだろう。 そして、現在の新卒者のみなには、このような理想的な社会を実現しようと真剣に考えている経営者が多くいることを、忘れないで欲しい。 希望の光は少なくないことを。 【引用・参考文献】 ・「。新成長戦略」一般社団法人日本経済団体連合会(2020) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

初職を辞める理由

新卒者として大学卒業後に就職した若者の約3割が3年以内に初職を辞めている。2017年の大学卒で入職から3年以内の離職率は32.8%であった(厚生労働省2020年)。ちなみに、高校卒の3年以内離職率は約4割で推移している。 大学生に関しては、新卒者一括採用の慣行の下、相応の時間を掛けて就職活動を行い、初職を決めているものの現実的には3割が3年以内に、社会人としてのキャリアをスタートさせた会社を去っている。 若者が会社を辞める理由をみてみると、男性、25~29歳では、「給与等収入が少なかった」が最も多く16.3%、次いで「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」13.3%、「会社の将来が不安だった」が12.4%が主な理由としてあげられている(「その他の理由」を除く)。 女性、25歳~29歳では、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が最も多く17.9%、次いで「給与等収入が少なかった」11.3%、「職場の人間関係が好ましくなかった」が10.6%と、男性が辞める理由と若干の違いがみられる(「その他の理由」を除く)。 意外にも、新卒者が就職活動時に重視している「仕事内容」や「自分の能力が活かせる」といった理由に対応する、「仕事の内容に興味を持てなかった」を離職の理由にあげているのは男性が5.8%、女性が8.3%、「能力・個性・資格を活かせなかった」は男性6.7%、女性が4.9%と比較的低い割合であった。 男女ともに離職理由の上位にあげている「給与等収入が少なかった」に関しては、企業が採用活動を行う際に初任給もしくは月例給の明示を必ず行っており、その提示額を理解した上で入職していることを考えると、入職後に自身の賃金上昇期待が低かったり、先輩・上司の賃金額を知り、自身が長期勤続の後に得たい収入ではなかった可能性が示唆される。 企業側、採用担当者からすると、自社の賃金水準を公に公表することに少なからず抵抗感があることも事実だろう。 働く個人からすると、入職前に長期キャリアを通じて得られる可能性のある賃金水準は、最も重要な情報ではあるものの、入職するまで得難い情報といえよう。ここに雇用のミスマッチの要因の一つが潜んでいる。 また「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」については、多くの新卒者向けの求人情報には、年間休日が記載されており、やはり求職活動時に確認している雇用条件ではあるものの、特に新卒者については年間休日100日と年間休日125日以上の差が経験として備わっていないため、離職理由となると考えられる。 実際に自らが働き、経験することで、企業の良い面や、自分にとって好ましくない面が明確化されてくる。 初職選びの際は気づけなかった、自身の特性や譲れない労働条件等が明らかになった時点で、主体的なキャリア形成のために会社、組織を移ることは、社会全体として生産性を高めることに繋がる可能性もあると思われる。 但し、主体的なキャリア形成のためには、個人が所属組織に依存することなく、能力開発を意識することが重要であることは言うまでもない。 【引用・参考文献】 ・「規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」厚生労働省(2020) ・「平成30年雇用動向調査結果の概要」厚生労働省(2019) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

能力開発の主体は、会社か、個人か

大学を卒業し、新卒者として約8割の学生が企業や組織に入社(2020年、文部科学省)し、キャリアをスタートさせている。 日本の特徴的な労働慣行である新卒者一括採用、年功序列、終身雇用のうち、新卒者一括採用についてはこれまでも何度も見直しが提起されてきているものの、一定の合理性が存在するためか根強く慣行として存続し続けている。 一方、年功序列および終身雇用については、企業側の競争環境の変化もさることながら、働く個人側の労働観、人生観の変容に伴い、この労働慣行を維持することが難しくなっている。 企業側としては、個別企業の永続的存立のため、長期勤続を前提とするコア従業員をいかに育成、確保していくかが人事労務管理上の大きな課題とされている。 では、働く個人について、(結果としての)終身雇用を前提とせずに、自立的・主体的に働く場所を選んで行くために不可欠な個人に帰属する能力についてみてみよう。 まずは根強く残る労働慣行である新卒者一括採用により、大学卒業後8割の学生が何らかの職業に就いていることから、企業における能力開発の実態をみてみる。 厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析」によると、わが国の職場内訓練(On the Job Traning)の実施率はOECD諸国に比べて、低いことが分かる。OECD諸国における男性に従業員に対する職場内訓練実施率は55.1%であるのに対し、わが国の実施率は50.7%と各国平均を下回っている。各国平均を下回る状況は、女性従業員対する職場内訓練実施率においても同様で、各国平均57.0%に対して、わが国は45.5%と大きく下回っている。 さらに、GDPに占める企業の能力開発費の割合をみてみると、わが国が突出して少ない割合である。2010年~2014年、各国のGDPに占める能力開発費の割合は、アメリカ2.08%、フランス1.78%、ドイツ1.20%、イタリア1.09%、イギリス1.06%、そして日本が0.10%となっており、各国に比べ能力開発に支出する額が極端に少ないことが分かる。 個別民間企業が支出した従業員1人に対する1カ月当たりの教育訓練費をみてみると、2016年は1,112年。ちなみに、1991年が1人当たり教育訓練費の支出額のピークであり1,670円、ここからわが国の民間企業においては教育訓練費は漸減し続けている。 終身雇用を前提とせず、自立的・主体的に働く場所、働く組織を個人が選ぶための源泉となる職業能力の形成については、マクロの統計だけをみたところ、企業側から提供される教育の機会だけでは不十分といえよう。 自立的・主体的に働き方を選ぶためにも、自ら職業能力の形成を図る必要があろう。 【引用・参考文献】 ・「令和2年度学校基本調査結果の概要」文部科学省(2020) ・「平成30年版 労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について-」厚生労働省(2018) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

業種や職種が変わっても通用する「持ち運び可能な能力」

キャリア形成を自立的に考える場合、一つは所属している組織内において、組織が期待するキャリア形成と従業員個人が希望するキャリア形成とを統合していく方向と、もう一つは組織を横断しながらキャリア形成を行う方向が考えられる。 ここでは組織内でのキャリア形成よりも、より主体的、自立的に組織を横断しながらキャリア形成を行う方向を検討してみたい。 主体的な働き方、生き方を実現させるためには、市場経済が生活の前提となっている社会において、まずは個人が適合していく必要がある。 市場経済社会において、雇用を提供する組織(≒株式会社)間を移動するための能力について、厚生労働省は「ポータブルスキル」という概念を提唱している。 「ポータブルスキル」は、2014年厚生労働省が一般社団法人人材サービス産業協議会に「キャリアチェンジプロジェクト」事業を委託し、このプロジェクトにおいてはじめて示された概念とされる。以下、「ポータブルスキル」について、一般社団法人人材サービス産業協議会が行った「キャリアチェンジプロジェクト」から参照する。 「ポータブルスキル」とは、「業種や職種が変わっても通用する『持ち運び可能な能力』」と定義されている。 業種や職種が変わっても通用する「持ち運び可能な能力」=「ポータブルスキル」を構成する要素は3つ。 ①専門知識・専門技術 ②仕事のし方 仕事のし方において重要な行動としては、 1)現状の把握 取り組むべき課題やテーマを設定するために行う情報収集やその分析のし方 2)課題の設定 事業、商品、仕事の進め方などの取り組むべき課題の設定のし方 3)計画の立案 担当業務や課題を遂行するための具体的な計画の立て方 4)課題の遂行 スケジュール管理や各種調整、業務を進める上での障害の排除や高いプレッシャーの乗り越え方 5)状況への対応 予期せぬ状況への対応や責任の取り方 ③人との関わり方 人との関わり方において重要なことは、 1)社外対応 顧客・社外パートナー等に対する納得感の高いコミュニケーションや利害調整、合意形成のし方 2)社内対応 経営層・上司・関係部署に対する納得感の高いコミュニケーションや支持の獲得のし方 3)部下マネジメント メンバーの動機づけや育成、持ち味を活かした業務の割り当てのし方 ①専門知識・技術、②仕事のし方、③人との関わり方、の3要素が「ポータブルスキル」の主要な構成要素にあげられている。 確かにこの3要素は「業種や職種が変わっても通用する『持ち運び可能な能力』」と言えるが、実際の組織横断的キャリア形成(=転職)の際に、重要となる要素を考えてみたい。 主体的に組織横断的なキャリア形成を望む個人から相談を受け、現実的に「次の職場から受け入れられる」=採用される人材の多くは、専門技術・知識を有し、所属していた組織の課題を明らかにし、実際に自身が主体となり実行した経験も持つ者、である。 組織の横断を希望する個人の中で、現実として希望する次の組織から受け入れられ難い特徴として、「人との関わり方」に自身のストロングポイントを見出している者があげられる。 ゲンバの話しとしては、いくら個人が上司と上手く接し、部下の育成もしっかりしてきた、とアピールしても、それ自体が積極的に評価される場面は多くはないと思われる。 日本の労働慣行として根強い年功序列の風土において、上司、同僚、部下と“上手く”接すことは、積極的な強みとはなり得ない現実がある。 このポータブルスキル(業種や職種が変わっても通用する『持ち運び可能な能力』)の3要素から、主体的なキャリア形成の視点からの示唆としては、まずは専門知識・技術を磨き、習得した専門知識・技術を活用し、課題を明らかにし、自身が主体となり課題解決を実行する、ことで、企業横断的な「持ち運び可能な能力」が備わっていると言えるようになるのではないか。 専門性を磨き、課題に対し自ら動く。 正しく「主体的」な活動が、主体的な生き方に繋がるのではないだろうか。 【引用・参考文献】 ・「『キャリアチェンジプロジェクト』について」一般社団法人人材サービス産業協議会 ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

新卒で就職、その後の自立は

2020年度学校基本調査によれば、2020年3月卒、57万3,947人の大学生の卒業後の進路は77.7%(446,082人)が就職、11.3%(64,627人)が進学という結果となった。 ちなみに10年前の2010年3月卒、54万1,428人の卒業後の進路は60.8%(329,190人)が就職、15.9%(86,039人)が進学であったことから、就職率は上昇しており、進学率は減少している、といったトレンドが見られる。 8割弱の大学生が3月の卒業と同時に企業や団体に就職し、キャリア形成をスタートさせる。 初職として就職した企業や団体において、長期勤続を前提とした教育制度、配置制度、処遇制度の下で、キャリアを積み重ねていく。 わが国においては、主体的にキャリアを切り拓いていく一つの方法である起業に対する希望が、他国に比べて極端に低いことが指摘されている。 ちなみに、一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの報告書によれば、日本において起業家が成人人口に占める割合(Total Early-Stage Entrepreneurial Activity: TEA)は3.7%と調査対象国67ヵ国、66番目の低さである。 ここでは、慣例化された学校卒業者の一括採用・就職後に、主体的にキャリアを考え、起業した者の傾向を見てみよう。 独立行政法人経済産業研究所が発表した「起業活動と人的資本:RIETI 起業家アンケート調査を用いた実証研究」(2013年)においては、7023人のアンケート調査によって起業の意識と実行の傾向について明らかにしている。 7023人のサンプルの中で、大学卒業以上の学歴の者で「起業を計画した」割合は31.1%(2,201人)。(4,822人は起業の計画をしたことはない) さらに「起業を計画した」者の中で、実際に「起業を実行した」割合は21.4%(1,501人)であった。 大学卒業(学士)、大学院修士、大学院博士の最終学歴別に見てみると、僅差ではあるものの「起業を実行した」割合が高かったのは大学卒業(学士)で68.9%、次いで大学院博士(67.8%)であった。 一方、起業が「成功した」と考える割合は、大学院博士が最も高かった。 さらに、「起業を実行した」1501人の内、一度も会社に入社せずに起業した者は全体の17.0%であり、「3社以上に雇用」されてから起業した者の割合は28.3%と最も高い割であった。 ちなみに、「1社に雇用」されてから起業した者は18.5%、「2社に雇用」されてから起業した者は25.7%、「3社以上に雇用」されてから起業した者は28.3%となっている。 ここからは、雇用された社数が増える程、起業する者の傾向が増えることが読み取れる。 但し、「起業を実行した」者の自己評価による、起業が「成功」したかどうかについては、「1社」もしくは「2社に雇用」されてから起業した者が最も「成功した」と認識しており、「一度も会社に入社せずに起業した者」および「3社以上に雇用」されてからの起業者の「成功」認識が低いことに注意が必要となる。 自立的なキャリア形成の一つの形である起業、1社もしくは2社に雇用され、職務経験を経てから起業することで、成功する確率が上がることが示唆されている。 【引用・参考文献】 ・「令和2年度学校基本調査結果の概要」文部科学省(2020) ・「平成25年度起業家精神に関する調査(GEM)」一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(2013) ・「起業活動と人的資本:RIETI 起業家アンケート調査を用いた実証研究」馬場遼太・元橋 一之(2013) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

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