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就職先は?会社名or職種
新卒者の就職相談の現場では、学生に卒業後の進路を尋ねることがあります。
卒業後の進路が決まっている学生の答えには、大きく2つのパターンがあることが気がつきます。 質問「卒業後の進路は決まりましたか?」 回答例①「はい、株式会社〇×△商事に決まりました。」 回答例②「はい、システムエンジニアに決まりました。」 もうお分かりかと思いますが、回答例①では卒業後に就職する「会社名」を答える一方、回答例②では卒業に就く職種を答えています。 以前は多くが就職先である「会社名」を答える学生が多かったですが、近年では、システムエンジニア、広報、ライターといった「職種」を答える学生が増えてきています。
自立的なキャリア形成の側面からは、特定の「職種」を自ら選び、専門性を高めようとする傾向は、好ましいことだと思います。
これまでは総合職の名のもとに、新卒で入社した会社の人事戦略に基づいて配置され、配置された職種で経験を積んでいくことが「あたり前」のように行われてきましたが、主体的なキャリア形成を望む若者が増えたことで、会社主導の配置配属制度はやや制度疲労を起こしつつあるのではないでしょうか。 望む職種を提供し、従業員が高いモチベーションを維持することで、結果として会社も好業績を上げることが好循環を生むのではないでしょうか。 総合職から、専門職へ。
個人と会社の利害が一致する、新しい人事処遇制度の構築が急がれます。 ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ
仕事・会社に対する意識の急速な変化
新卒就活生のためのオンライン就職相談では、学校から社会への移行=新卒者の就職活動時に、少なからず孤独と孤立の中で就職活動を行う学生を、匿名でメッセンジャー・チャットアプリを用いて、就職相談=カウンセリングを施し、安定した環境下初職に導くことを目的に運営している。
この活動は「就職氷河期世代」が実際に経験した厳しい就職活動から生まれている。 現在、オンライン就職相談に携わるカウンセラーは「就職氷河期世代」であり、現役社会人で有資格者の40代が中心。
1社からの内定を巡り、多くの選考プロセスを経て、ようやく社会人になった世代でもある。 ここでは、「就職氷河期」世代と現在の若者との転職に関する考え方の変化について、独立行政法人労働政策研究・研究機構「データブック国際労働比較2019」より見てみたい。 「つらくても転職せず一生一つの職場で働き続けるべき」、2003年10.3%から2018年は4.4%に半減している。
「職場に不満があれば転職する方がよい」、2003年17.9%から2018年は22.8%に増加している。
「できるだけ転職せずに同じ職場で働きたい」2013年31.5%から2018年は23.6%に減少している。 これらの転職に関する意識変化の結果は、概ね現在の世相、「空気感」と一致している。
「新卒で入社した会社に生涯勤め上げる」という規範は年々希薄化する一方、新卒で就職した会社以外に活躍の場を求める傾向が強まっている。 この調査の中で、「就職氷河期」を背景とした回答結果が、
「自分の才能を生かすため積極的に転職する方がよい」であり、2003年14.2%から2018年10.1%に減少している。
他の転職に関する意識については、2003年から2018年に掛けて増加傾向を示しているが、この質問に関しては減少している。
ここには、求職者数が求人数を超えるような厳しい雇用環境の中で、自らが希望する職種や会社へ就けなかった新卒者が多かったことに起因するものと考えられる。
新卒者として入社した会社において、希望する仕事や職種に就けず、いつか「自分の才能を生かす」会社に転職したいと思うのは、当然ではないだろうか。 この調査結果から、新卒者が初職として入社する会社への帰属意識は希薄化し続けており、タイミングがあれば転職したいと考えている若者は増加している。
ここから、転職を含む自立したキャリア形成、エンプロイアビリティを高める能力形成をどのように行っていくべきかの課題が見出しうる。
ただ「転職したい」という気持ちだけでは、キャリアアップする転職に繋がらないことも注意が必要であろう。 【引用・参考文献】
・「データブック国際労働比較2019」独立行政法人労働政策研究・研修機構(2020) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ
「セラピスト」の役割
日本においては「キャリアコンサルタント」が、クライアントのキャリア=職業人生について、伴に考える役割を負っている。
わが国における「キャリアコンサルタント」の歴史は浅く、1990年代後半以降に「キャリア」という言葉の普及の後に登場したもの。 日本における「キャリアコンサルタント」の源流とも言える、
アメリカにおける「セラピスト」について、社会学者ロバート・N・ベラー著「心の習慣—アメリカ個人主義のゆえく」から見てみよう。
日本における「キャリアコンサルタント」の役割と、アメリカにおける「セラピスト」の役割は同じである、と断言されることに抵抗を持つ人も多いだろう。
しかしながら、資本主義社会における「キャリアコンサルタント」の位置づけおよび役割を、修飾語なしで明確にすることは、キャリアコンサルタント自身にとっても有益と思う。 ベラーによれば、
「セラピストは、経営管理者と同じように、もろもろの資源を効率的な行動へと動員する特殊技能者である。
たっだここでは、資源は種に個人の内面のものであり、効率の物差しは個人的満足というつかみどころの基準である。」 セラピストが捉えている、
「人生の目標は、職業と『ライフスタイル』との間に、経済的に可能で心理的に容認できるなんらかの組み合わせを、一言で言うと『機能する』組合せを実現することである。
経営管理者と同じくセラピストは、与えられたものとして目標をそのまま受け入れる。彼らにとって焦点は手段の効率性の方にある」。
セラピストがクライアントと伴に思考する作業において、人生の目標に置くのは、クライアントが容認できる生活の質をどのような職業に就くことで保っていくか、という点に置かれることになる。 「経営者とセラピスト―20世紀のアメリカ文化の輪郭は、概ねこの二者の存在によって定義される。
(セラピストは)人生の規範的秩序とその理想的人物像を、また良い人生のイメージを、さらにはその達成方法を提示している。
その中心にあるものは自律的個人である。
この場合の自律的個人とは、…個々人自らが判断する生活効率の基準にもとづいて、自らの演ずべき役割となすべきコミットメントとを選択することができると想定された存在である」。
職業はここでは、生活のため「自ら演ずべき役割」という俯瞰した表現がなされている。
そして、セラピストはクライアントが心理的に容認できる「自ら演ずべき役割」に、辿り着くための「鏡」の役割を演じることになる。 セラピストが治癒する対象は、
「自己を高め、力をつけて、社会において他社とうまく関係できるようにし、他者の要求に吞み込まれることなしにある種の満足を達成するという形態をとる。」 一方で、セラピストがクライエントに行う行為に抜け落ちている点は、
「人生を生きるに値するものにするのは何か」である。
人生の意義については、セラピストは答えない。答えられない、のかもしれない。 ベラーは資本主義社会における職業の意味と、職業と生活の組み合わせを伴に考えるセラピストの役割とを、とても冷静で、俯瞰して見ていた。
現在、日本における「キャリアコンサルタント」と、ベラーの見ていた20世紀の「セラピスト」、果たして「異なるものである」と主張できるだろうか。 ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ
希望を見出す力を~「自分に長所がある」16.3%。
国(内閣府が主管)では、日本と諸外国の若者の意識を比較することにより、日本の若者の意識の特徴を把握するため「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」を行っている。
2019年6月公表「令和元年度版 子供・若者白書」において特集として執筆された、諸外国の若者と比較した結果明らかとされた日本の若者の特徴から、私たちが理念として掲げている「自立した人生をいかにおくるか」の視点に基づき、できることを考えたい。
「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」は、2018年11月および12月に日本を含めた7か国の満13歳から満29歳までの男女を対象にインターネットを用いて調査したもの。
調査対象国は日本、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの7か国。
「自立した人生をいかにおくるか」の視点から、着目した調査結果を記す。 〇「自分自身に満足している」→「そう思う」10.4%、7か国中最も低い割合。
日本に次ぎ「そう思う」の割合が低いスウェーデンが30.8%であったことから、日本は調査対象国7か国の中において突出して、「自分自身に満足」している若者が低いことが分かる。
〇「自分には長所がある」→「そう思う」16.3%、7か国中最も低い割合。
日本に次ぎ「そう思う」の割合が低いスウェーデンが28.8%であった。
〇「他人に迷惑をかけなければ、何をしようと個人の自由だ」→「そう思う」15.7%、7か国中最も低い割合。
日本に次ぎ「そう思う」の割合が低い韓国が38.6%、ドイツが39.8%であったことから、この意識についても日本が突出して厳格に規範として有していることが分かる。 〇「社会をよりよくするため、私は社会における問題の解決に関与したい」→「そう思う」10.8%、7か国中最も低い割合。
日本に次ぎ「そう思う」の割合が低いスウェーデンが26.0%であった。 〇「自国の社会に満足しているか」→「満足」5.3%、7か国中最も低い割合。
日本に次ぎ「満足」の割合が低い韓国で6.3%、フランスが14.2%、ドイツが18.5%であったことから、日本の若者だけが極端に自国の社会に満足していない訳ではないことが分かる。
一方で、自国の社会に満足している若者が最も多いのはアメリカで27.8%が「そう思う」を選択している。 〇「自国の社会の問題」について
1)「身分や家柄が重要視されすぎている」→16.0%、7か国中最も低い割合。
最も「身分や家柄が重要視されすぎている」と回答したのは韓国で41.2%。
ここからは日本の若者は「身分や家柄」が社会生活を送る上で、重視され過ぎているとは捉えていないことが分かる。 2)「倫理的、道徳的に正しいことが受け入れられない」→14.1%、7か国中5番目に低い割合。
最も「倫理的、道徳的に正しいことが受け入れられない」と回答したのは韓国で29.5%、次いでアメリカで25.2%
日本の若者は「倫理的、道徳的に正しいことが受け入れられない」とはあまり考えていないことが分かる。 3)「まじめな者がむくわれない」→39.8%、7か国中2番目に高い割合。
最も「まじめな者がむくわれない」と回答したのは韓国で46.4%。
一方最も低い割合だったのがイギリスにおいても25.2%であったことを考えると、調査対象7か国の若者の多くが、自国は「まじめな者がむくわれない」社会であると捉えていることが分かる。 〇「今の職場に満足しているか」→「満足」10.0%、7か国中最も低い割合。
日本に次ぎ満足の割合が低かったのは韓国で17.6%、フランス30.9%であったことから、日本の若者が突出して「今の職場に満足していない」ことが分かる。
一方最も満足している割合が高いのがアメリカで51.5%と半数以上が、今の職場に満足していることになる。 〇「職業選択の重視点」について
1)「収入」→70.7%、7か国中最も高い割合。
2)「仕事内容」→63.1%、7か国中最も高い割合。 以上のような、自立した人生をいかにおくるかの視点で抜粋した調査結果から、社会秩序としては民主的、平等感が保たれていると捉えられている一方、個人としては満足感、幸福感が得難い現状であることが見えてくる。
特に、「今の職場に満足している」若者が1割という結果は、深刻に受け止めざるを得ない。
戦後から1990年頃まで、日本企業の高いパフォーマンスの源泉と考えられてきた「新卒一括採用」、「年功序列」、「終身雇用」、「家族的経営」等々について、2021年現在の産業、経済、社会情勢、社会規範に適したヴィジョンの再提示が求められているのではないか。 「今の職場に満足していない」若者が、満足できる生活を送るにはどうすべきか。
「今の職場に満足していない」若者が、満足できる選択をするためにはどうすべきか。
新卒就活生のためのオンライン就職相談では、新卒者とこの問題について語り合っていく。
【引用・参考文献】
・「令和元年版子供・若者白書 特集1 日本の若者意識の現状~国際比較からみえてくるもの~」内閣府(2019年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ
夢を語り難い時代
新卒就活生のためのオンライン就職相談に関わるカウンセラーは、就職氷河期世代に就職活動を実際に経験しながらも、正社員として企業等に入社し、人事や採用担当者か、その経験者に限られる。 2021年6月、統計上は、企業等の採用意欲がコロナ禍においても衰えず、求人倍率は依然高次を保っている。
新卒者は「就職氷河期」に比べれば、「内定」は得やすい環境であるいえる。 ただ大学のキャリア支援センターの声を聞くと「内定を得てもなお、漠然とした不安のためか、就職活動を続ける学生が多くいる」。
わが国の新卒者一括採用、一律の教育制度、処遇制度においては、新卒者としてどの企業に就職するか、とても重要な決断であるため、迷いが生じることは当然のことといえよう。 学生の声にも耳を傾てみると「内定は得たが、本当にこの企業で良いのか…、正直迷っている。この企業で頑張りたい、と思える情報が少ないのではないかと感じる。労働条件、特に休日や残業時間は希望と合っているが、面接で話した『こんな仕事をしたいと思っています』のエピソードは、自分で語っていながら、『働くこと』への印象は正直薄い」。 昨今の学生の傾向として、休日や労働時間といった勤務条件に求める水準は上がっている一方、「働くこと」への関心は相対的に下がっているように思われる。
これは学生の意識変化だけが要因なのだろうか。 採用担当者のゲンバにおいて「夢を語り難くなった」と聞くようになった。
大前提として法律で定められた労働時間、休日の中で、パフォーマンスを上げていくことが求められるのが企業ではあるが、法律内だとしても、あまり熱くヴィジョンを語り過ぎることで、「本当はこの企業は残時間が多いのではないか。休日も仕事をしているのではないか」と“裏読み”されてしまうのだという。 結果、あまり熱くヴィジョンや展望、仕事そのものの楽しさなどを語らず、ワークライフバンス、ライフイベントへの支援、残業時間の少なさ、休日の多さ、などに説明の時間を使うようになる。
採用担当者も今の新卒者のマインド=希望に合わせて、自社で働くメリットを説明しているのである。 ぜひ学生には、勤務条件はとても重要なことではあるが、仕事のそのものの楽しさ、会社のヴィジョンについても、採用担当者に説いて欲しいと思う。
「自分は本当のこの会社を選んで良いのだろうか」と不安を払拭させる一つは、その会社のヴィジョンであったり、そのヴィジョンに共感する自分であったりする。 ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ
「社会人基礎力」と「新・社会人基礎力」
学校から社会への移行、わが国においては、3月に学校を卒業した新卒者を4月1日に一斉に雇用する「新卒者一括採用」の慣行が根強い。
この雇用慣行により、わが国においては、卒業年次に到達する以前からインターンシップや会社説明会等への参加が始まり、大学生であれば4年次になった頃には「内々定」という形の雇用契約が結ばれ始め、卒業する3月までに「内定」を得ようと会社説明会への参加、書類審査、筆記試験、複数回の面接試験を繰り返す。 会社や団体に職を求める大学生は、既に制度化、ルール化されている選考プロセスを経て、社会に移行する。
社会=会社に所属した後も、社会人として求められる素養とスキルを習得しながら、会社や組織から求められる業務を遂行していくことが一般的とされる。 では、一般的に会社や組織から求められる業務を遂行する上で求められる資質やスキルとはどのようなものだろうか。
2006年に経済産業省が提唱し、高等教育界でキャリア教育の指針とされることも多かった「社会人基礎力」から見てみよう。 経済産業省が提唱した「社会人基礎力」は、社会人=会社に所属する従業員に求められる3つの要素、12の能力をあげています。
社会人に求められる3つの要素は、
①「前に踏み出す力(アクション)」
②「考え抜く力(シンキング)」
③「チームで働く力(チームワーク)」です。 さらに、3つの要素に引き続く、12の能力では、
①「前に踏み出す力(アクション)」
1)主体性
2)働きかけ力
3)実行力
②「考え抜く力(シンキング)」
4)課題発見力
5)創造力
6)計画力
③「チームで働く力(チームワーク)」
7)発信力
8)傾聴力
9)柔軟性
10)情況把握力
11)規律性
12)ストレスコントロール力 2018年、経済産業省では2006年「社会人基礎力」を再定義し、「人生100年時代の社会人基礎力」を提唱しました。
再定義された「新・社会人基礎力」では、「これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力と定義され、社会人基礎力の3つの能力/12の能力要素を内容としつつ、能力を発揮するにあたって、目的、学び、組合せのバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要と位置付けられる」とし、さらに「『キャリアオーナーシップ』を持つ個人は、主体性を向上させ、自らの「持ち札」を増やすことでキャリアを切りひらいていく。一方で、企業や組織は、効果的な人材確保を通じて多様な人材が活躍する場を提供するプラットフォームとなることではじめて成長し続けることが可能になる」と個人の主体性の重要性を明記しました。 そして、主体的にキャリア形成を行う個人と、企業・組織を繋げるために、3つの視点を加えました。
その3つの視点は、
①何を学ぶか【学び】
②どのように学ぶか【組合せ】
③どう活躍するか【目的】です。 新卒就活生のためのオンライン就職相談では、③どう活躍するか【目的】が最も困難で、明確化が難しいと考えます。
人生の意義、働く意味を伴う「どう活躍するか【目的】」という難題について、メッセンジャー・チャットアプリを通じて、カウンセラーが対話しながら、一緒に解き明かしていくことが私たちのミッションと考えています。 【引用・参考文献】
・「我が国産業における人材力強化に向けた研究会―報告書」経済産業省(2018年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ
会社の「選択理由」の変遷
大学から社会へ、新卒者はどのような理由で社会人第一歩目を歩みだす会社を選んでいるのだろうか。
公益財団法人日本生産性本部では、1969年から「新入社員働くことの意識調査」を実施しており、その調査結果から見てみよう。 1971年調査における新入社員が「会社を選ぶとき、あなたはどういう要因をもっとも重視」した項目は、「会社の将来性」が最も高く27%であり、次いで「自分の能力、個性が生かせるから」19%といった結果であった。
1971年調査時点で、会社選びで最も重視されていた「会社の将来性」ではあったが、1974年調査において「自分の能力、個性が生かせるから」が最も高い選択理由にあげられて以来、2019年調査までトップを守り続けている。 さらに象徴的なのが、「会社の将来性」を会社選びの重視項目にあげる新入社員は、漸次減少を続け、2001年調査では選択肢の中で最も選ばれない事項となった。2019年調査でも最下位となっている。 一方、会社の将来性は最重要事項ではなくなって久しいが、これをもって、現在の新入社員は「会社に頼らず、自立した働き方志向」になっていると言えるだろうか。
筆者が気になったのは、会社選びの重視項目の中で「技術が覚えられる」からが13.1%に止まっていること。
自立したキャリア形成を行うという点から重要になってくることが、個人が習得した技術・技能であると考えるが、会社選ぶの際には技術・技能の点があまり重視されていない傾向が見て取れることから、長期的な自立的キャリア形成について学ぶ機会が求められるのではないかと危惧している。 低技能、断片的・限定的熟練をキャリアで重ねるのではなく、高技能、職業的熟練を積みキャリアアップしていくことが、個人にも、わが国全体にとっても求められているのではないか。 【引用・参考文献】
・「平成31年度新入社員『働くことの意識』調査結果」公益財団法人日本生産性本部(2019年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ
コロナ禍での「ガクチ力」
学生が大学を卒業し就職する、この一連の行為は、教育学、社会学、経営学など様々な分野において研究が行われている。
専門領域は違えど、個人が前向きに行動する、生きる、には「自己肯定感」≒自信が重要である、このことは共通言語として用いられている。 「自己肯定感」は主に心理学の領域で様々な研究がなされているが、
概ね「自己肯定感」≒自信を養うには小さな成功体験の積み重ねが重要、ということが結論として導き出されている。 「自己肯定感」≒自信を養うための小さな成功体験の積み重ねを、新卒者の就職活動に当てはめてみると、
大学3年生までにいかに小さな成功体験を積み重ね、多少のことでは揺るがない自信を身に着け、
採用試験に臨めるかが言うまでも大切となる。 さて、2020年1月、新型感染症が世界を覆い尽くそうとしていたその時、大学2年生だった世代が、2021年3月から就職活動を本格的にスタートさせた。
大学時代の最も充実時期を過ごすはずだった3年次の経験が、大幅に制限されてしまった世代が、今就職活動を行っている。 キャリア支援センターの職員が口々に「現4年生の中には上手く『ガクチ力』をアピール出来ない学生が多い」と呟く。
大学時代は2020年だけではなく、確かに2018年も2019年もあった。
しかしながら、やはり大学の3年次は小さな成功体験を積み重ねるために、最も大切な時間であったと思う。 成功体験の感覚を十分に養えなかった(と感じている)学生に対して、過去に遡り、自信の欠片を一緒になって集めるのもカウンセラーの役割と思う。
学生から社会への移行の第一歩で躓くことのないように。
社会に出てからも自立的に歩めるように。 ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ
「新卒一斉就職」だけが正規ルートではない時代
新卒就活生のためのオンライン就職相談は、半世紀以上の歴史を有する大学生の「新卒一括採用」「新卒一斉就職」の課題の一つである、学生の就職活動中に経験する孤立と孤独、悩みを共有し、和らげ、短距離走ともいえる就職活動期間を自立的に歩んでいくためのサポートを行っている。 「新卒一括採用」「新卒一斉就職」により、大学生は3月に卒業し、4月からはフルタイム正社員としてのキャリアを歩む。
これまで模範的とされてきたキャリアモデルでは、大学卒業後、フルタイム正社員として入社し、会社から提示される業務を経験しつつ、会社から提示された教育プログラムに則り、総合職として会社の幅広い業務を遂行できる能力を得て、管理職となり、定められた定年到達時に会社を去る。
一つの会社内において、個人が望む業務を選択できる人事制度は多くの企業で取り入れられているものの、一つの会社内でのキャリア形成という限界がある。
これまで多くの研究者が指摘してきた通り、一企業内での限定されたキャリア形成ゆえに、会社間での横断的に求められるスキル・技能の習得を難しくさせ、結果的に、新卒で入社した会社に長期雇用、長期勤続することなる。
従業員個人の自立的なキャリア形成の視点からすると、自ら経験すべき仕事を選び、自ら持てる能力・スキルを発揮する働き場を選べることが、これまで模範的とされてきた「定年まで勤め上げる」価値観に変わる、新しいモデルではないだろうか。 自らキャリアを選ぶ、そのため自ら経験すべき仕事を選ぶ。
その一つの潮流が、フルタイム正社員でありながら「兼業・副業」を行うだろう。
2021年2月、(株)リクルートキャリアがリリースした「兼業・副業に関する動向調査(2020)」によれば、
2020年12月時点で兼業・副業を行っているフルタイム正社員は9.8%と、約1割が既に「第2の名刺」「第2の職場」を持っていることが分かる。
さらに年代別に見てみると、25~29歳が兼業・副業を既に行っているもしくは過去に経験に再開予定である割合が最も高く21.0%と、若い世代において約2割が1社に限定されたキャリア形成ではなくなっている現状が分かる。 また、現在は兼業・副業を行った経験はないが、これから兼業・副業を行ってみたいと最も多く考えている世代は、30~34歳であり実に50.3%が希望している。
これから兼業・副業を行ってみたいと考えている現在正社員は、全体でも41.8%と4割を超えており、多くの働く人が、自身が所属する会社以外での経験を欲していることが明らかにされた。 さらに、兼業・副業を行った、また行ってみたいと考える、きっかけを尋ねたところ、「自分のキャリアを見つめ直した」の回答が多く全体の2割を占めた。
「転職・独立を考えていた」も上位の理由にあげられている。 大学の卒業年次に、短距離走で定めた会社、仕事、キャリアを、入社後も見つめ直することは、自立的な生き方に繋がると思う。
個人が自らのあらゆる可能性を模索し、納得できるキャリア、人生を歩める社会、労働環境が整備されることを期待する。 【引用・参考文献】
・「兼業・副業に関する動向調査(2020)」株式会社リクルートキャリア(2021年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ
2021年3月卒業大学生、96.0%が就職
2021年5月18日、厚生労働省ならびに文部科学省は、2021年3月卒業大学生等の就職状況を公表した。
2020年度は、新卒就活生にとって事実上の「就活スタート」を意味する3月1日大規模会場での合同企業説明会が取り止めになるなど、未知なる感染症の脅威により、これまで「慣例」とされてきた就職活動の「型」が大きく崩された中での就職・採用活動であった。
「異例」「混乱」続きの1年であったが、2021年3月に卒業を迎えた大学の就職率は96.0%と、前年を2.0ポイント下回ったものの、高水準と言える就職率に帰着した。 ちなみに、「就職氷河期」とされる2000年3月卒業大学生の就職率は91.1%、「リーマンショック」後の2010年は91.8%であったことからすると、「コロナ禍」で迎えた2021年3月卒業者の就職率96.0%は高水準であったと言え、世界各国が感染症という新たな脅威に対して、経済を安定させるため最大限の金融・財政政策を行ったことが大きな要因と思われる。 振り返ると、新型感染症の脅威に対し先を見通すことが非常に困難であった2020年6月リクルートワークス研究所が行った「ワークス大学求人倍率調査」においては、2021年3月卒業予定者の求人倍率は1.53倍と前年の求人倍率1.83倍から、0.3ポイントの減少であった。求人総数で見てみると、2021年3月卒業予定者への求人総数は683,000人、前年の804,700人からは121,700人分の求人数が減少したものの、大学卒業後に民間企業に就職を希望する学生が447,100人からすると、求人数の上でも採用意欲は高かったことが分かる。 とはいえ、求人数が約12万人分減少していることから、それを業種別に見てみると、減少率が最も大きかったのはサービス・情報業で対前年比減少率21.6%、求人数では73,100人と前年比20,100人(2020年3月卒業サービス・情報業の求人数は93,200人)の減少となった。特にサービス業での求人数の減少が大きかったことが推察される。
次いで、流通業の対前年減少率は17.9%、求人数では273,800人と前年比59,600人(2020年3月卒業流通業の求人数は333,400人)の減少であった。
一方で、唯一昨年度から求人数を増やした業種は建設業で、求人数92,500人、前年比4,300人増であった。 感染症拡大の恐れから、対面が「通常」であった就職活動から、「オンライン」が主流にならざるを得ず、少なからず混乱を来した2020年度の就職・採用活動であったが、結果的には、若年労働者の労働力不足のトレンドから旺盛な採用意欲は継続され、就職率も高水準を維持される形となった。 一方で、航空業界、旅行業界、イベント企画業界etc.、感染症の影響で新卒採用を取り止めざるを得なかった業界の存在は、「憧れの業界」として将来の進路と決めていた学生にとっては、「折り合い」を着けることがいかに困難なことであったかは、想像に難くない。
「新卒一括採用」、「終身雇用」といったこれまで一般的と考えられてきた「慣例」も変動を続けている昨今、コロナ禍で「憧れ」を一旦は断念せざる得なかった若者が、「禍」が晴れて、「新卒」という形ではなくとも、学生時代に憧れていた業界に入れる日が来ることを期待する。 【引用・参考文献】
・「令和2年度大学等卒業者の就職内定状況調査(令和3年4月1日現在)」厚生労働省・文部科学省(2021年)
・「第37回ワークス大卒求人倍率調査(2021)」リクルートワークス研究所(2020年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ