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雇用
「仕事中毒」?今は「余暇」重視。では、意義ある生き方とは…。
「世界価値観調査」とは、延べ100ヵ国以上の国都地域を対象とし、その国民の価値観を聞くもので、調査範囲は政治観、経済観、労働観、教育観、宗教観、家族観など290項目に及ぶ。同調査は1981年に第1回調査が行われ、2021年3月に電通総研および同志社大学が「第7回世界価値観調査レポート」を発表した。
日本における郵送法を用いた調査は2019年9月に実施されている。 日本人はかつて「仕事中毒」「ワーカホリック」と揶揄される程、長時間労働、仕事・会社優先の国民性として世界に知られていた。
では2021年現在、わが国の勤労観「働くこと」への意識は、世界各国と比較した場合、どのような位置を占めているのだろうか。 「あなたの生活に【仕事】は重要か」の問いに対して、「非常に重要」「やや重要」を合わせ81.3%の日本国民は、仕事を生活において重要と捉えている。
生活において仕事を重要なものと意識している割合81.3%は、調査対象国77カ国中71位の割合であり、世界的に見て、日本国民における仕事に対する重要度は低いと言える。
生活における仕事の重要度を過去の調査から推移を見てみると、1990年では「非常に重要」「やや重要」と回答した割合は80.5%、1995年では87.5%、2000年では84.2%、2005年では84.9%、2010年では84.2%と、1995年を頂点に、日本国民における生活における仕事の重要度は下がっていることが分かる。 一方で、「あなたの生活に【余暇時間】は重要か」について、「非常に重要」「やや重要」を合わせ91.4%が余暇時間を生活の中で重要と捉えている。余暇時間については、調査対象国77カ国中21位となり、世界的に見ると日本国民は生活の中における余暇時間を大切にしている国民性であるといえよう。
さらに「たとえ余暇時間が減っても、常に仕事を第一に考えるべきだ」に対して、「強く反対」「反対」を合わせると59.2%が仕事を第一に考えることに対して、反対の意識を持っている。常に仕事を第一に考えることに対する反対意識は、調査対象国77カ国中2位となった。 2019年の世界価値観調査に現れている国民性だけを見ると、かつての「仕事中毒」「ワーカホリック」と称された強い勤労観は失われているように思われる。
仕事だけが人生において重要視されるべきものではない、ことは確かかもしれない。
しかしながら、仕事は自分だけのためではなく、他人のために行う行為であることも否定しえない。
かつての仕事中心主義の反動で、現在の日本国民における勤労観が形成された可能性は高いといえよう。
職業労働、つまり仕事の生活における重要度は下がったとしても、他者のために行う行為も失われていくことについては、一度立ち止まって考えるべきことだと思う。
仕事以外を通じた他者のためを想って行う行為も失われてしまっては、他者を愛し、他者から愛されるという、人生を意義深いものにしてくれる一つの源泉も失ってしまうのではないか。 職業労働に対する重要度は薄らぐ一方、他者を思いやる行為の重要性が増すことを期待せずにはいられない。 【引用・参考文献】
・「第7回世界価値観調査レポート」電通総研・同志社大学(2021) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 チャット不安悩み相談
日本企業のこれからの人事戦略
一般社団法人日本経済団体連合会は2020年11月に、これまでの成長戦略に「。」=終止符を打ち、これから日本企業が向かうべき方向性を大きく示した「。新成長戦略」を公表した。
「。新成長戦略」では、わが国が持続可能な(サステナブル)な資本主義を実現させていくために、多様な主体が求める、多様な価値の包摂と協創をデジタルトランスフォーメーション(DX)の力で繋ぎ合わせていく、そのためのアクションを提示した。 「。新成長戦略」ではサステナブルな資本主義の実現のため、企業における「働き方」についても提言しており、日本を代表する経済団体が発する変革への方向性は、個別企業の人事戦略にも少なからず影響を及ぼす。
では、経団連が示したこれからの日本企業が向かうべき人事戦略、「働き方」について見てみよう。 P26
「2. 働き方の変革 (1) 時間・空間にとらわれない柔軟な働き方への転換
Society 5.0 時代の働き手は、デジタル技術を豊かな想像力・創造力で使いこなし、時間・空間にとらわれない、柔軟な働き方を通じて価値を創造する。働いた時間ではなく生み出す価値によって評価され、それに基づいて処遇される。企業はリモートワークと出勤、オンラインとオフラインを必要に応じて組み合わせ、最も生産性の高い働き方を追求する。 また働き手の健康確保を前提として、副業・兼業も奨励する。
その際、重要なのは一人ひとりの働き手のエンゲージメントを高め価値創造力を最大限に引き出す管理職の役割である。管理職には、従来の均質なチームが時間と空間を共有して働く場合とは異なり、多様性から価値を創造するマネジメントが求められる。」 ここでは、時間、空間にとらわれない働き方を奨励しつつ、一人ひとりが生み出した価値によって評価される人事制度を提唱している。 p27
「(2) 多様で複線的なキャリア形成に向けた人材流動化 柔軟な働き方の普及に伴い多様で複線的なキャリアが一般的になると、新卒一括採用や長期・終身雇用、年功序列制度は機能しなくなるため、企業は採用や雇用、処遇のあり方を見直すことが必要になる。新卒だけでなく中途採用も行い、バックグラウンドや経験、技能の多様性を確保する。同時に、企業の DXに伴い社内で新たに生まれる業務に人材を円滑に異動させるため、リスキリングも必要となる。DX に伴う産業構造の転換により、衰退し、失われる業種・職種がある一方、新たに生み出され、成長する業種・職種もある。重要なのは、失われる雇用から新たに生まれる雇用へ、円滑に労働力の移動が図られるよう支援する環境の整備である。円滑な労働力移動に不可欠な『学びなおし』には、国として集中的に投資することが求められる。」 経団連としても新卒一括採用や長期・終身雇用、年功序列制度の限界を示しつつ、従業員一人ひとりが新しいデジタル社会への適応していくため、学び直しに必要に言及している。主体的なキャリア形成のため、学ぶことが求められることは、時代の変化の要請によっても強められると言える。 p13
「~柔軟な働き方や多様で複線的なキャリアが実現する社会 DX の進展やコロナ禍を一因として、個人の働き方やキャリアに対する考えは大きく変わる。デジタル技術の発展により、業務のオンライン化、遠隔化、無人化が進み、定型業務から創造的業務への移行もあいまって、幅広い職種につ
いて時間・空間にとらわれない柔軟な働き方が可能になる。 それに伴い、時間を柔軟に活用した副業・兼業や、リモートワーク、二地域居住なども普及する。個人はそれによって充実した生活を送るとともに、自らの能力を遺憾なく発揮し、高い生産性を上げている。企業が『社会価値の創造』で評価されるように、個人も『社会価値の創造』によって評価され、対価を得る社会へと変化する。 個人のキャリアの形も変化する。一生の間に大企業、中小企業、スタートアップ、学術界、官庁、NPO 等、時に学びを繰り返しながらさまざまな立場を渡り歩く、あるいは同時にさまざまな立場に身を置く、多様で複線的なキャリア形成が普通になる。それによって主体間の人材交流によるカルチャーの共有、個々の組織における多様性の拡大が進み、多様な主体による価値協創が促進され、社会全体の生産性が向上している。このように柔軟な働き方や多様で複線的なキャリアがあたりまえになっている社会では、年齢、性別、国籍、障がいの有無の別なく、より多様な人々が活躍している。 柔軟な働き方により、個々人の状況に応じたワーク・ライフ・バランスが実現し、育児・介護中などこれまで就業を諦めざるを得なかった人々も就業機会を得て所得も増加することから、産みやすく育てやすい社会になっている。政策による後押しもあり、出生率が劇的に回復し、わが国経済社会の持続可能な成長を支えている。」 幅広い職種について時間・空間にとらわれない柔軟な働き方が可能となり、
時間を柔軟に活用し副業・兼業やリモートワークが普及する、
個人も「社会価値の創造」によって評価される、対価を得る、
個人のキャリア形成は、多様で複線的となり、
個々人の状況に応じたワーク・ライフ・バランスが実現し、
わが国の持続的成長が実現する。
経団連が描くこのような理想の社会が実現し、みなが主体的に生きる社会が一日でも早く到来することを切に願う。 このような理想的な社会においては、新卒就活生のオンライン就職相談に寄せられる相談も、ポジティブな相談が多くなるだろう。
そして、現在の新卒者のみなには、このような理想的な社会を実現しようと真剣に考えている経営者が多くいることを、忘れないで欲しい。
希望の光は少なくないことを。 【引用・参考文献】
・「。新成長戦略」一般社団法人日本経済団体連合会(2020) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ
2021年3月卒業大学生、96.0%が就職
2021年5月18日、厚生労働省ならびに文部科学省は、2021年3月卒業大学生等の就職状況を公表した。
2020年度は、新卒就活生にとって事実上の「就活スタート」を意味する3月1日大規模会場での合同企業説明会が取り止めになるなど、未知なる感染症の脅威により、これまで「慣例」とされてきた就職活動の「型」が大きく崩された中での就職・採用活動であった。
「異例」「混乱」続きの1年であったが、2021年3月に卒業を迎えた大学の就職率は96.0%と、前年を2.0ポイント下回ったものの、高水準と言える就職率に帰着した。 ちなみに、「就職氷河期」とされる2000年3月卒業大学生の就職率は91.1%、「リーマンショック」後の2010年は91.8%であったことからすると、「コロナ禍」で迎えた2021年3月卒業者の就職率96.0%は高水準であったと言え、世界各国が感染症という新たな脅威に対して、経済を安定させるため最大限の金融・財政政策を行ったことが大きな要因と思われる。 振り返ると、新型感染症の脅威に対し先を見通すことが非常に困難であった2020年6月リクルートワークス研究所が行った「ワークス大学求人倍率調査」においては、2021年3月卒業予定者の求人倍率は1.53倍と前年の求人倍率1.83倍から、0.3ポイントの減少であった。求人総数で見てみると、2021年3月卒業予定者への求人総数は683,000人、前年の804,700人からは121,700人分の求人数が減少したものの、大学卒業後に民間企業に就職を希望する学生が447,100人からすると、求人数の上でも採用意欲は高かったことが分かる。 とはいえ、求人数が約12万人分減少していることから、それを業種別に見てみると、減少率が最も大きかったのはサービス・情報業で対前年比減少率21.6%、求人数では73,100人と前年比20,100人(2020年3月卒業サービス・情報業の求人数は93,200人)の減少となった。特にサービス業での求人数の減少が大きかったことが推察される。
次いで、流通業の対前年減少率は17.9%、求人数では273,800人と前年比59,600人(2020年3月卒業流通業の求人数は333,400人)の減少であった。
一方で、唯一昨年度から求人数を増やした業種は建設業で、求人数92,500人、前年比4,300人増であった。 感染症拡大の恐れから、対面が「通常」であった就職活動から、「オンライン」が主流にならざるを得ず、少なからず混乱を来した2020年度の就職・採用活動であったが、結果的には、若年労働者の労働力不足のトレンドから旺盛な採用意欲は継続され、就職率も高水準を維持される形となった。 一方で、航空業界、旅行業界、イベント企画業界etc.、感染症の影響で新卒採用を取り止めざるを得なかった業界の存在は、「憧れの業界」として将来の進路と決めていた学生にとっては、「折り合い」を着けることがいかに困難なことであったかは、想像に難くない。
「新卒一括採用」、「終身雇用」といったこれまで一般的と考えられてきた「慣例」も変動を続けている昨今、コロナ禍で「憧れ」を一旦は断念せざる得なかった若者が、「禍」が晴れて、「新卒」という形ではなくとも、学生時代に憧れていた業界に入れる日が来ることを期待する。 【引用・参考文献】
・「令和2年度大学等卒業者の就職内定状況調査(令和3年4月1日現在)」厚生労働省・文部科学省(2021年)
・「第37回ワークス大卒求人倍率調査(2021)」リクルートワークス研究所(2020年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ
キャリアを自ら選ぶとは
主体的に生き方、働き方を決める。
労働力が商品として取引される資本主義社会において、自分の中の労働力を売る、売らない、を自ら決められるということは、幸せな生き方と言える。 主体的に生き方、働き方を決める、最も近道は自らが起業し、経営者となること。
しかしながら、起業し経営者となれたとしても厳しい競争社会を皆が勝ち抜けるとは限らず、やはり個人にとってリスクは残る選択と言えよう。 起業し自らが経営者となるよりも、身近な主体的なキャリア形成の一つとして、転職がある。
自らが望む経営組織で、望む職業に就く、立派な主体的なキャリア形成の一形態と言えよう。 では、自らが転職の時期、転職先での職務、転職先での処遇を「交渉」するためには、どのようなことが求められるのか。
独立行政法人労働政策研究・研修機構『企業の多様な採用に関する調査』(2018)から見てみよう。 まずは転職市場から。
調査によれば、キャリア採用(中途採用)を行っている企業は85.9%。
ほとんどの企業でキャリア採用を行っていることが分かり、個人が選択し、企業が受け入れれば多くの場合転職は成立する環境にはある。 では、どのような場合に企業はキャリア採用、中途採用者を受け入れるのか。
最も多い理由は「専門分野の高度な知識やスキルを持つ人が欲しいから」が46.3%と約半数。
一方、職業経験を積み得られるスキルの一つである「高度なマネジメント能力、豊富なマネジメント経営がある人が欲しいから」という理由は16.5%と決して多くない理由に留まった。 さらに「専門分野の高度な知識やスキルを持つ人が欲しいから」という理由でキャリア採用を行っている企業の中身を見てみると、「情報通信業」(71.1%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(67.9)、「医療、福祉」(61.4%)が高い割合となっている。 一方、「高度とか専門とかではなくてよいので仕事経験が豊富な人が欲しいから」という純粋に経験を欲している企業としては、「生活関連サービス、娯楽業」(42.6%)、「運輸業、郵便業」(32.5%)が挙げられる。 ここから、転職市場において転職先との「交渉力」を高く保つためには、「情報通信業」「学術研究、専門・技術サービス業」「医療、福祉」の分野において、高度な知識やスキルを持つことが近道ということが写し出される。 2016年『社会生活基本調査』を振り返ってみると、
職業に就いている社会人の6割は自ら学んでおらず、
職業に就いている社会人の学びの時間を平均すると6分、という結果。 主体的なキャリア形成には、やはり専門性を身に着けることが近道ではあるが、統計的には専門性を身に着けるための自己啓発を行っている割合と時間が少々足りていないように思われる。 主体性を伸ばす、このことも新卒就活生のためのオンライン就職相談では活動の範疇としている。 【引用・参考文献】
・「企業の多様な採用に関する調査」独立行政法人労働政策研究・研修機構(2018)
・「平成28年社会生活基本調査」総務省統計局(2016年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ
コロナ禍の影響~飲食店・宿泊業、運輸業が採用数を減らす
2020年、コロナウイルス感染症は世界の日常を一変させた。
新卒者向け採用活動広報活動の解禁日となる3月1日、大規模な合同企業説明会は中止を余儀なくされ、これまで対面を基本としていた企業説明会、面接試験棟が、一斉にオンラインに置き換えられた。
就活生にとってはオンラインに置き換わることで、移動時間や交通費負担が無くなり、負担軽減につながったことは大きかったのではないだろうか。
コロナが終息した後も、就活生の負担軽減に繋がるオンラインを活用した採用就職活動が継続されることを期待したい。
デメリットについては、様々なところで指摘されていることからここでは言及を避ける。 2021年4月27日、リクルートワークス研究所が公表した「ワークス大卒求人倍率調査(2022年卒)」によれば、コロナの影響を受けた企業における2022年卒向けの新卒採用計画について、約7割が採用人数の変更がないとした。企業の新卒者採用意欲は依然底堅いことが窺える。
このような中で、採用数を減らす、もしくは採用自体を中止した企業を業種別で見てみると、「飲食店・宿泊業」と「運輸業」が顕著であった。 2020年3月大学卒業者で「飲食店・宿泊業」に就職した学生は約1万1千人。同じく「運輸業」に就職した学生は約1万6千人(「学校基本調査—令和2年度結果の概要—」文部科学省より)。ちなみに産業別にみた就職先の割合の中で「飲食・宿泊業」が占める割合は2.6%、「運輸業」は3.5%と決して小さくはない。
コロナの影響を受けていても採用数を増やす企業が多い「小売業」が求職者を吸収することが期待されている。 マクロ的にコロナ禍における新卒者就職採用を俯瞰することはできても、やはり大切なことは、学生一人ひとりが抱く社会への「希望」ではないだろうか。
入学時に大学でしっかり学び、卒業後は航空業界、ホテル業界など、コロナ禍で苦境に立たされている業種への就職を希望していた学生の意思を、どうしようも変え難い現実を前に、どのようにケアすべきか、キャリアカウンセリングの真価が問われている。 【引用・参考文献】
・「大卒求人倍率調査(2022年卒)」リクルートワークス研究所(2021) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ