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転職・離職

3年以内離職率21.4%。「やりたいこと」に繋がる「前向きな」退職理由も。

「新卒者一括採用」「年功序列」「終身雇用」が日本の雇用慣行として定着したとされるのが1950年代以降。およそ半世紀の時を経て「年功序列」、「終身雇用」は「維持し難い」や「既に崩壊している」と言われるようになった。一方で、「新卒者一括採用」に関しては、政府と教育界と産業界の間で「申し合わせ」が取り交わされるなど一定のルールの下で、労働慣行として現在も維持されている。 「既に崩壊している」との指摘がある「年功序列」「終身雇用」は、企業側が労働力の維持、活用のために採用していた人事制度である。「日本的経営」の中核を成していた象徴的な2つの人事制度は、1950年代から崩壊が囁かれるようになるまでは、企業の提案する人事制であったとしても、働く人にとっても合理的な側面があったからこそ数十年に亘り一般的な人事制度であり得た。 では、現在の新卒者にとって、長期勤続を前提とする人事制度はどのように受け止められているのだろうか。 新卒者の「退職」の動向から、現在の若者が一つの企業に長期的に勤続することに対する意識を見てみたい。 独立行政法人労働政策研究・研修機構では、2019年3月に「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ」を公表した。 同調査によれば、大学・大学院卒の「3年以内離職者」率は21.4%であった。ちなみに厚生労働省調査では、大卒者の「3年以内離職者」率は31.8%となっている。 厚生労働省調査では新卒者の3割、労働政策研究・研修機構調査では2割が「3年以内」に早期離職している。2~3割の新卒者が「3年以内」に離職する傾向は2000年頃から言われ始めており、ここ20年余り早期離職者の割合は変化がないように思われる。 大卒新卒者の「初めての正社員勤務先」を離職した理由を見てみると、男性では「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため」が最も多い理由で29.3%、次いで「会社の将来性がないため」が25.7%、そして「肉体的・精神的に健康を損ねたため」が25.4%となっている。 女性では「肉体的・精神的に健康を損ねたため」が最も多く36.1%、次いで「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため」32.5%、「自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため」が28.2%となった。 男女とも大卒新卒者の退職理由の上位には、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため」といった労働条件が入っているものの、「会社の将来性がないため」や「自分がやりたい仕事とは異なる内容だった」といった主体的に退職(転職)を決めたことを窺い知れる理由も含まれている。 大卒新卒者の男性では上位3位には入らなかったものの「初めての正社員勤務」を離職した理由の中には「キャリアアップするため」23.9%、「自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため」23.2%、といったように主体的に働く場所を含めたキャリア選択を行っている者も少なくない。 大卒新卒者の女性においても、「自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため」が28.2%で3番目に多い退職理由であり、「会社の将来性がないため」も22.0%、「キャリアアップするため」が17.7%と、仕事と会社を自ら選ぶため退職をした者は男性と同じく少なくない。 企業側が長期勤続を提案したとしても、その社会でキャリアアップが見込めないと判断されたり、自分が「やりたい仕事」とは異なっていると認識されたり、会社に将来性を見出せなかったりすれば、自らの意思で働く場所を含めたキャリア選択を行う若者は少なくないと言えよう。 自らのキャリア形成を全て会社に委ねるのではなく、自らの意思で主体的に判断する若者が増えることで、企業としても「個人のキャリアアップと将来の事業展開のベクトル合わせ」、「働く人のやりたいこと・やりたい仕事と事業戦略との統合」、「会社の将来性」について真剣に向き合わざるを得なくなり、結果的に会社の成長発展にとっても、働く人の充実したキャリア形成にとってもプラスになる最適解が見出せるようになるのではないだろうか。 新卒者は就職活動を契機として「自己分析」を行い、自らの将来と必死で向き合う。多くの新卒者は、粗削りながらも熟考の末「やりたいこと」「やりたい仕事」を定めて、4月に社会に出る。3年以内の早期離職に至る理由がネガティブなものだけではなく、主体的なキャリア形成を見据えたものも少なくないことは、現在の若者の働くことの意識変化と言えよう。 【引用・参考文献】 ・「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ」独立行政法人労働政策研究・研修機構(2019) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 チャット不安悩み相談

初職を辞める理由

新卒者として大学卒業後に就職した若者の約3割が3年以内に初職を辞めている。2017年の大学卒で入職から3年以内の離職率は32.8%であった(厚生労働省2020年)。ちなみに、高校卒の3年以内離職率は約4割で推移している。 大学生に関しては、新卒者一括採用の慣行の下、相応の時間を掛けて就職活動を行い、初職を決めているものの現実的には3割が3年以内に、社会人としてのキャリアをスタートさせた会社を去っている。 若者が会社を辞める理由をみてみると、男性、25~29歳では、「給与等収入が少なかった」が最も多く16.3%、次いで「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」13.3%、「会社の将来が不安だった」が12.4%が主な理由としてあげられている(「その他の理由」を除く)。 女性、25歳~29歳では、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が最も多く17.9%、次いで「給与等収入が少なかった」11.3%、「職場の人間関係が好ましくなかった」が10.6%と、男性が辞める理由と若干の違いがみられる(「その他の理由」を除く)。 意外にも、新卒者が就職活動時に重視している「仕事内容」や「自分の能力が活かせる」といった理由に対応する、「仕事の内容に興味を持てなかった」を離職の理由にあげているのは男性が5.8%、女性が8.3%、「能力・個性・資格を活かせなかった」は男性6.7%、女性が4.9%と比較的低い割合であった。 男女ともに離職理由の上位にあげている「給与等収入が少なかった」に関しては、企業が採用活動を行う際に初任給もしくは月例給の明示を必ず行っており、その提示額を理解した上で入職していることを考えると、入職後に自身の賃金上昇期待が低かったり、先輩・上司の賃金額を知り、自身が長期勤続の後に得たい収入ではなかった可能性が示唆される。 企業側、採用担当者からすると、自社の賃金水準を公に公表することに少なからず抵抗感があることも事実だろう。 働く個人からすると、入職前に長期キャリアを通じて得られる可能性のある賃金水準は、最も重要な情報ではあるものの、入職するまで得難い情報といえよう。ここに雇用のミスマッチの要因の一つが潜んでいる。 また「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」については、多くの新卒者向けの求人情報には、年間休日が記載されており、やはり求職活動時に確認している雇用条件ではあるものの、特に新卒者については年間休日100日と年間休日125日以上の差が経験として備わっていないため、離職理由となると考えられる。 実際に自らが働き、経験することで、企業の良い面や、自分にとって好ましくない面が明確化されてくる。 初職選びの際は気づけなかった、自身の特性や譲れない労働条件等が明らかになった時点で、主体的なキャリア形成のために会社、組織を移ることは、社会全体として生産性を高めることに繋がる可能性もあると思われる。 但し、主体的なキャリア形成のためには、個人が所属組織に依存することなく、能力開発を意識することが重要であることは言うまでもない。 【引用・参考文献】 ・「規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」厚生労働省(2020) ・「平成30年雇用動向調査結果の概要」厚生労働省(2019) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

社会人の約7割が「転職は前向きな行動である」と捉えている。

「終身雇用」を前提に、ジョブローテーションを社内で繰り返し、多くの部署での様々な経験を積み、やがて管理職となる。このような“理想的”なキャリアパスは、会社側が従業員に「終身雇用」を提示し難くなったからなのか、従業員側が一企業に縛られない「働き方」を選ぶようになったからなのか、実にどちらがトリガーとなったのかは正に「にわとりとたまご」のような因果関係により不明だが、確かなことは、会社および従業員双方が、“理想的”なキャリアパス像から離れている。 株式会社マイナビが毎年、正社員として働いている20代~50代を対象に、転職に関する調査を行っており、3月18日「転職動向調査2021年版」がリリースされた。 同調査によれば、転職することに関して約7割が「転職は前向きな行動である」(69.7%)と捉えている。 5年前の2016年の調査では「転職は前向きな行動である」と捉えていたのは約6割(58.8%)であったことから、毎年「転職」を是とする意識が広がっていると言える。 学校を卒業して入社した会社に定年まで勤め上げる“理想的”なモデルは、会社側としては、多くの従業員に対して均等な教育を施しておき、事業形態、競争環境の変化に応じて、従業員を“会社の都合”で配置することで、柔軟に事業を運営できる利点があった。 一方、従業員としては、会社が指定した教育制度、人事制度に則り“勤め上げる”ことで、安定した賃金、安定した雇用がある一定程度保障され、人生設計が比較的立て易かったというメリットがあった。 「転職」への意識が年々変わっていく中で、一個人としては、本当の意味での自立的、自律的なキャリアを考えることになる。 真に自立、自律した働き方、生き方を考えるならば、雇われない生き方=起業、というキャリアも今後は選択肢に入ってきて然るべきと思われる。 「転職」または「起業」、どちらの場合も一企業内だけで通用する職務遂行能力のままでは不十分といえよう。 企業内で雇われている内は、企業の事業継続性の論理により、企業の必要とする能力育成は施されるが、会社一般に共通するような能力を養えるかは疑問が残る。 「転職」を前向きに捉えることと並行して、自身の職務遂行能力が、社内だけで通用するものなのかの「棚卸」は必要となろう。 キャリアの棚卸の際も、オンライン(メッセンジャー・チャットアプリを用いた)での就職相談の活躍の場面は多いと思われる。 ・「転職動向調査2021年版」株式会社マイナビ(2021年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

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