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学び

世界大学ランキング—世界トップ大学と日本トップ大学

イギリスの教育専門誌「Times Higher Education」は9月2日、2022年版「THE世界大学ランキング」を発表した。 「THE世界大学ランキング2022」では、世界の99カ国・地域の1662大学を「教育(学習環境)」「研究」「被引用論文(研究の影響力)」「国際性(職員、学生、研究)」「産業界からの収入(知識移転)」※の5つの分野について、13の指標でスコアを算出し、ランク付けしている。 「THE世界大学ランキング2022」においてトップとなったのはオックスフォード大学であり、6年連続の第1位となった。世界のトップ10の大学は、第1位のオックスフォード大学、第5位のケンブリッジ大学の2大学がイギリス、第2位のカリフォルニア工科大学、ハーバード大学、第4位のスタンフォード大学、5位タイのマサチューセッツ工科大学に続き、プリンストン大学、カリフォルニア大学バークレー校、イェール大学、シカゴ大学の8大学がアメリカであり、世界のトップ10をイギリスとアメリカが占める結果となった。 日本の大学としては、東京大学が35位、京都大学が61位、東北大学201-250位、大阪大学と東京工業大学301-350位、名古屋大学351-400位となった。私立大学では産業医科大学が401-500位でトップとなり、慶應義塾大学、関西医科大学、日本医科大学が601-800位となった。 アジアの大学としては、北京大学と精華大学が16位でアジアトップとなり、シンガポール国立大学21位、香港大学30位、香港中文大学49位、ソウル大学54位となった。 2022年版と同様の指標で調査した2016年版では、東京大学は39位、京都大学は91位であったことから、6年間で日本のトップ2大学は世界ランキングにおいて順位を上げ続けていると言える。 評価指標である5つの分野(「教育(学習環境)」「研究」「被引用論文(研究の影響力)」「国際性(職員、学生、研究)」「産業界からの収入(知識移転)」)、13の指標から算出した総合点を見てみると、日本トップの東京大学、2022年版では76.0、2016年版では74.1であったことからも、着実に水準を上げていることが分かる。 ちなみに、世界トップのオックスフォード大学は2022年版では95.7、2016年版では95.0であり、日本のトップとの差は20ポイント程となっている。 日本トップの東京大学の2022年版の総合スコアは76.0、この点数を5つの分野別を見てみると、「教育(学習環境)」86.9、「研究」90.3、「産業界からの収入」88.1と、この3分野のスコアは非常に高い一方で、「被引用論文(研究の影響力)」58.2、「国際性」42.0のスコアが低迷している。 日本第2位の京都大学も「教育(学習環境)」78.5、「研究」78.9、「産業界からの収入」80.8と、この3分野のスコアは高く、「被引用論文(研究の影響力)」58.3、「国際性」38.2のスコアが低い。 ちなみに、「国際性」の指標は「外国籍留学生の割合」、「外国籍教員の割合」、「国際共同研究」から成る。 今後の中長期的な国際競争力の源泉となる若い人材、その人材を育成する日本の大学の世界での立ち位置は気になるところ。 THE世界大学ランキングにおいては、日本のトップ大学が評価指標の中では「国際性」のスコアが低調なことが分かった。 日本も戦略的に大学教育を革新し続けている。 来年のランキングが今から楽しみである。 ※各分野・指標の比重は以下の通り。 「教育(教育環境)」30% ・評判調査<教育> 15% ・学生に対する教員比率 4.5% ・学士課程学生に対する博士課程学生比率 2.25% ・教員に対する博士号取得者比率 6% ・大学の総収入 2.25% 「研究(量、収入、評判)」30% ・評判調査<研究> 18% ・研究関連収入 6% ・学術生産性 6% 「被引用論文(研究影響力)」30% 「国際性(教員、学生、研究)」7.5% ・外国籍留学生の割合 2.5% ・外国籍教員の割合 2.5% ・国際共同研究 2.5% 「産業界からの収入(知の移転)」2.5% 【引用・参考文献】 ・「THE世界大学ランキング 日本版」 ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 チャット不安悩み相談

能力開発の主体は、会社か、個人か

大学を卒業し、新卒者として約8割の学生が企業や組織に入社(2020年、文部科学省)し、キャリアをスタートさせている。 日本の特徴的な労働慣行である新卒者一括採用、年功序列、終身雇用のうち、新卒者一括採用についてはこれまでも何度も見直しが提起されてきているものの、一定の合理性が存在するためか根強く慣行として存続し続けている。 一方、年功序列および終身雇用については、企業側の競争環境の変化もさることながら、働く個人側の労働観、人生観の変容に伴い、この労働慣行を維持することが難しくなっている。 企業側としては、個別企業の永続的存立のため、長期勤続を前提とするコア従業員をいかに育成、確保していくかが人事労務管理上の大きな課題とされている。 では、働く個人について、(結果としての)終身雇用を前提とせずに、自立的・主体的に働く場所を選んで行くために不可欠な個人に帰属する能力についてみてみよう。 まずは根強く残る労働慣行である新卒者一括採用により、大学卒業後8割の学生が何らかの職業に就いていることから、企業における能力開発の実態をみてみる。 厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析」によると、わが国の職場内訓練(On the Job Traning)の実施率はOECD諸国に比べて、低いことが分かる。OECD諸国における男性に従業員に対する職場内訓練実施率は55.1%であるのに対し、わが国の実施率は50.7%と各国平均を下回っている。各国平均を下回る状況は、女性従業員対する職場内訓練実施率においても同様で、各国平均57.0%に対して、わが国は45.5%と大きく下回っている。 さらに、GDPに占める企業の能力開発費の割合をみてみると、わが国が突出して少ない割合である。2010年~2014年、各国のGDPに占める能力開発費の割合は、アメリカ2.08%、フランス1.78%、ドイツ1.20%、イタリア1.09%、イギリス1.06%、そして日本が0.10%となっており、各国に比べ能力開発に支出する額が極端に少ないことが分かる。 個別民間企業が支出した従業員1人に対する1カ月当たりの教育訓練費をみてみると、2016年は1,112年。ちなみに、1991年が1人当たり教育訓練費の支出額のピークであり1,670円、ここからわが国の民間企業においては教育訓練費は漸減し続けている。 終身雇用を前提とせず、自立的・主体的に働く場所、働く組織を個人が選ぶための源泉となる職業能力の形成については、マクロの統計だけをみたところ、企業側から提供される教育の機会だけでは不十分といえよう。 自立的・主体的に働き方を選ぶためにも、自ら職業能力の形成を図る必要があろう。 【引用・参考文献】 ・「令和2年度学校基本調査結果の概要」文部科学省(2020) ・「平成30年版 労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について-」厚生労働省(2018) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

業種や職種が変わっても通用する「持ち運び可能な能力」

キャリア形成を自立的に考える場合、一つは所属している組織内において、組織が期待するキャリア形成と従業員個人が希望するキャリア形成とを統合していく方向と、もう一つは組織を横断しながらキャリア形成を行う方向が考えられる。 ここでは組織内でのキャリア形成よりも、より主体的、自立的に組織を横断しながらキャリア形成を行う方向を検討してみたい。 主体的な働き方、生き方を実現させるためには、市場経済が生活の前提となっている社会において、まずは個人が適合していく必要がある。 市場経済社会において、雇用を提供する組織(≒株式会社)間を移動するための能力について、厚生労働省は「ポータブルスキル」という概念を提唱している。 「ポータブルスキル」は、2014年厚生労働省が一般社団法人人材サービス産業協議会に「キャリアチェンジプロジェクト」事業を委託し、このプロジェクトにおいてはじめて示された概念とされる。以下、「ポータブルスキル」について、一般社団法人人材サービス産業協議会が行った「キャリアチェンジプロジェクト」から参照する。 「ポータブルスキル」とは、「業種や職種が変わっても通用する『持ち運び可能な能力』」と定義されている。 業種や職種が変わっても通用する「持ち運び可能な能力」=「ポータブルスキル」を構成する要素は3つ。 ①専門知識・専門技術 ②仕事のし方 仕事のし方において重要な行動としては、 1)現状の把握 取り組むべき課題やテーマを設定するために行う情報収集やその分析のし方 2)課題の設定 事業、商品、仕事の進め方などの取り組むべき課題の設定のし方 3)計画の立案 担当業務や課題を遂行するための具体的な計画の立て方 4)課題の遂行 スケジュール管理や各種調整、業務を進める上での障害の排除や高いプレッシャーの乗り越え方 5)状況への対応 予期せぬ状況への対応や責任の取り方 ③人との関わり方 人との関わり方において重要なことは、 1)社外対応 顧客・社外パートナー等に対する納得感の高いコミュニケーションや利害調整、合意形成のし方 2)社内対応 経営層・上司・関係部署に対する納得感の高いコミュニケーションや支持の獲得のし方 3)部下マネジメント メンバーの動機づけや育成、持ち味を活かした業務の割り当てのし方 ①専門知識・技術、②仕事のし方、③人との関わり方、の3要素が「ポータブルスキル」の主要な構成要素にあげられている。 確かにこの3要素は「業種や職種が変わっても通用する『持ち運び可能な能力』」と言えるが、実際の組織横断的キャリア形成(=転職)の際に、重要となる要素を考えてみたい。 主体的に組織横断的なキャリア形成を望む個人から相談を受け、現実的に「次の職場から受け入れられる」=採用される人材の多くは、専門技術・知識を有し、所属していた組織の課題を明らかにし、実際に自身が主体となり実行した経験も持つ者、である。 組織の横断を希望する個人の中で、現実として希望する次の組織から受け入れられ難い特徴として、「人との関わり方」に自身のストロングポイントを見出している者があげられる。 ゲンバの話しとしては、いくら個人が上司と上手く接し、部下の育成もしっかりしてきた、とアピールしても、それ自体が積極的に評価される場面は多くはないと思われる。 日本の労働慣行として根強い年功序列の風土において、上司、同僚、部下と“上手く”接すことは、積極的な強みとはなり得ない現実がある。 このポータブルスキル(業種や職種が変わっても通用する『持ち運び可能な能力』)の3要素から、主体的なキャリア形成の視点からの示唆としては、まずは専門知識・技術を磨き、習得した専門知識・技術を活用し、課題を明らかにし、自身が主体となり課題解決を実行する、ことで、企業横断的な「持ち運び可能な能力」が備わっていると言えるようになるのではないか。 専門性を磨き、課題に対し自ら動く。 正しく「主体的」な活動が、主体的な生き方に繋がるのではないだろうか。 【引用・参考文献】 ・「『キャリアチェンジプロジェクト』について」一般社団法人人材サービス産業協議会 ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

新卒で就職、その後の自立は

2020年度学校基本調査によれば、2020年3月卒、57万3,947人の大学生の卒業後の進路は77.7%(446,082人)が就職、11.3%(64,627人)が進学という結果となった。 ちなみに10年前の2010年3月卒、54万1,428人の卒業後の進路は60.8%(329,190人)が就職、15.9%(86,039人)が進学であったことから、就職率は上昇しており、進学率は減少している、といったトレンドが見られる。 8割弱の大学生が3月の卒業と同時に企業や団体に就職し、キャリア形成をスタートさせる。 初職として就職した企業や団体において、長期勤続を前提とした教育制度、配置制度、処遇制度の下で、キャリアを積み重ねていく。 わが国においては、主体的にキャリアを切り拓いていく一つの方法である起業に対する希望が、他国に比べて極端に低いことが指摘されている。 ちなみに、一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの報告書によれば、日本において起業家が成人人口に占める割合(Total Early-Stage Entrepreneurial Activity: TEA)は3.7%と調査対象国67ヵ国、66番目の低さである。 ここでは、慣例化された学校卒業者の一括採用・就職後に、主体的にキャリアを考え、起業した者の傾向を見てみよう。 独立行政法人経済産業研究所が発表した「起業活動と人的資本:RIETI 起業家アンケート調査を用いた実証研究」(2013年)においては、7023人のアンケート調査によって起業の意識と実行の傾向について明らかにしている。 7023人のサンプルの中で、大学卒業以上の学歴の者で「起業を計画した」割合は31.1%(2,201人)。(4,822人は起業の計画をしたことはない) さらに「起業を計画した」者の中で、実際に「起業を実行した」割合は21.4%(1,501人)であった。 大学卒業(学士)、大学院修士、大学院博士の最終学歴別に見てみると、僅差ではあるものの「起業を実行した」割合が高かったのは大学卒業(学士)で68.9%、次いで大学院博士(67.8%)であった。 一方、起業が「成功した」と考える割合は、大学院博士が最も高かった。 さらに、「起業を実行した」1501人の内、一度も会社に入社せずに起業した者は全体の17.0%であり、「3社以上に雇用」されてから起業した者の割合は28.3%と最も高い割であった。 ちなみに、「1社に雇用」されてから起業した者は18.5%、「2社に雇用」されてから起業した者は25.7%、「3社以上に雇用」されてから起業した者は28.3%となっている。 ここからは、雇用された社数が増える程、起業する者の傾向が増えることが読み取れる。 但し、「起業を実行した」者の自己評価による、起業が「成功」したかどうかについては、「1社」もしくは「2社に雇用」されてから起業した者が最も「成功した」と認識しており、「一度も会社に入社せずに起業した者」および「3社以上に雇用」されてからの起業者の「成功」認識が低いことに注意が必要となる。 自立的なキャリア形成の一つの形である起業、1社もしくは2社に雇用され、職務経験を経てから起業することで、成功する確率が上がることが示唆されている。 【引用・参考文献】 ・「令和2年度学校基本調査結果の概要」文部科学省(2020) ・「平成25年度起業家精神に関する調査(GEM)」一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(2013) ・「起業活動と人的資本:RIETI 起業家アンケート調査を用いた実証研究」馬場遼太・元橋 一之(2013) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

何らかの職業に就いている社会人の1日の勉強時間は6分…。

2021年10月、国が統計法に基づき、国民の生活を実態を明らかにするため5年毎に実施している『社会生活基本調査』が行われようとしている。 『社会生活基本調査』は1976年の第1回調査から5年に一度実施されているため、前回調査は2016年の第9回調査がそれにあたる。 新卒者の就職相談をオンラインで行っていて、就活生が大きな悩みの一つが「ガクチ力」。すなわち、学生時代に力を入れた事柄は何か。 学生の本分は学業を修めるであることは揺るがない事実であるため、「ガクチ力」のトップに据えるべきは「学業」であるべきと思う。 自らが選択した学問領域に対して、どの程度修められたか、この点を重視し選考活動を進める企業は着実に広がりを見せている。 学生の本分である学業を修めた上で、更に「ガクチ力」を問われた際に、学業以外で力を入れたことを、志望する企業風土と関わらしめて主張することが、就職活動における「テクニック」の一つと考えられる。 2016年に行われた『社会生活基本調査』において、自律・自立した生き方を選ぶ上で、注目すべき結果が示されている。 Q19「学習・自己啓発・訓練について」。 仕事・学業として行うものを除き知識・教養を高めるため、仕事に役立てる(技術・資格取得を含む)ことをなどを目的とした学習・自己啓発について尋ねたところ、 15歳以上で何らかの職業に就き、1週間の内1日でも学習・自己啓発を行った国民は38.5%であった。 ちなみに、主な学習・自己啓発の内容としては、外国語12.2%、商業実務・ビジネス関係19.9%、家政・家事10.1%、芸術・文化10.6%となっている。 会社や学校からの指示ではなく、自ら何らかの学びを行っている国民は4割弱。 6割の社会人は、自ら進んでは学びを行っていないことが明らかになっている。 では、何らかの職業に就き、1日当たりどの程度学習・自己啓発の時間としているかを見てみると、6分という結果であった。 職業に就いている社会人の6割は自ら学んでおらず、 職業に就いている社会人の学びの時間を平均すると6分、 これが2016年に国が実施した調査が明らかにした国民生活の事実である。 今年の秋に行われる同様の調査において、5年間で国民生活がどのように変わったのか、とても気になるところ。 グローバル経済、社会は大きく変化し続けている。 グローバル経済の中の日本企業も変革を余儀なくされている。 一企業に就職し、個人はキャリア形成の全てを委ねる、企業は個人のキャリア形成に責任を持つ、 このような「理想的なモデル」は個人、企業双方にとって、理想ではなくなりつつある。 企業と個人との「働くこと」を通じた関係性は、変わらざるを得ない。 個人としてはますます自律・自立が求められるが、一方で、自立した生き方、働き方は人生を豊かなものにする可能性を大きく秘めていることも確かである。 自ら人生意義、働く意義を獲得するためにも、まずは個人が自立することが必要ではないかと5年前の調査から痛感した。 【引用・参考文献】 ・「平成28年社会生活基本調査」総務省統計局(2016年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

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