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会社選び

「今の会社で定年まで勤めたいと思わない」59%。日本企業の良さは失われた…?

2022卒者の内、2社以上の複数企業から内々定を得ている新卒者は62.5%。6割以上が複数社から内定を得て、4月1日の入社前までに6割上の新卒者が複数の内定先から1社に絞り込み、内定辞退を行う。 企業としては将来の基幹社員を確保すべく、自社への内定辞退を防ぐ対策に追われている。 内定辞退策のキーワードとして「新卒者のエンゲージメントを高める」が用いられることがある。 「エンゲージメント」が人事労務管理の場面で用いられる際は、従業員が会社に対して抱く愛着心や信頼関係を示す。 内々定を出し、10月1日の内定式を経て、4月1日の入社式を迎えるまで、新卒者が会社に対して愛着心や信頼関係を持てるように、採用担当者が定期的に会社の情報を届けるような策が展開されている。 従業員が会社に対して抱く愛着心や信頼関係を高める施策は、入社前の新卒者だけではなく、当然全ての従業員にとって必要な労務管理といえる。 現在では「崩れた」と言われてはいるが、未だ多くの企業で人事制度の根幹には新卒者一括採用、長期雇用、結果としての終身雇用、年功序列といった慣例が残されていると考えられる。新卒者一括採用、結果としての終身雇用、年功序列といった労働慣行は、世界でも稀な安定的な労使協調と、従業員の会社への高い忠誠心、愛着心、信頼関係=「エンゲージメント」を醸成したと考えられていた。 「かつて」の日本企業における従業員の高い忠誠心、愛着心は、世界的に稀であり「日本的経営」といった経営学の研究対象ともなり得た。 2017年、米国の調査会社であるギャラップ社が従業員の「エンゲージメント」の調査を全世界139ヵ国を対象に行ったところ、日本は「熱意あふれる社員(Engaged)」の割合が6%であり、調査対象国139カ国中132位と最下位クラスであった。 さらに「やる気のない社員(Not Engaged)」が70%、「周囲に不満をまき散らしている無気力な社(Actively disengaged)」の割合は24%であったことも分かった。 「かつて」は企業と従業員との「エンゲージメント」が非常に高いことで世界的に注目を集めた日本企業と「日本的経営」であったが、現在は「エンゲージメント」の世界的な低さでフォーカスされている。なぜ日本企業で働く従業員の「エンゲージメント」がここまで低くなったかについては、他で言及していきたい。 ギャラップ社の「エンゲージメント」調査の結果を裏付けるように、一般社団法人企業活力研究所が行った調査によれば「今の会社で定年まで勤め上げたいと思わない」と回答した34歳以下の従業員は59%に及んだ。 現在の若者にとって魅力ある会社とは一体どのような会社なのだろうか。 若者が働き続けたいと思う魅力的な会社とはどのような会社なのだろうか。 離職した後のキャリア成型はどのように考えているのだろうか。 今後明らかにしていきたい。 【引用・参考文献】 ・「就職プロセス調査(2022年卒)『2021年10月1日時点 内定状況』」就職みらい研究所(2021) ・「State of the  Global Workplace」Gallup(2017) ・「経営革新と『稼ぐ力』の向上に向けた仕事とキャリア管理に関する調査研究」一般社団法人企業活力研究所(2018) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 チャット不安悩み相談

入社する会社の決め手は「自らの成長が期待できる」。大切なのは入社後…。

10月1日の内定式も終わり、卒業後の進路が確定している2022卒者にとっては、3月までの残された学生時代を大切に刻んでいることと思う。 2021年10月1日時点の就職内定率は92.4%、コロナ禍にあっても企業の新卒者採用の意欲は衰えていない。一方、新卒者は10月1日時点で87.5%が進路を確定させ、10.8%、約1割の新卒者が就職活動を10月1日時点で継続している。 10月1日時点で87.5%が進路を確定させるまでには、10月1日の内定式前までに複数社から内々定を得た新卒者は62.5%と、半数以上が複数社から内々定を得ているという調査結果もあり、10月1日をおおよそのリミットとして内々定を得た会社の中から1社に絞り込む「会社選び」が行われている。 「就職氷河期」とは異なり、新卒者労働市場は企業の旺盛な採用意欲から、学生側の「売り手市場」が続いている。結果として、6割を超える新卒就活生が複数社から内々定を得て、内々定を得た会社の中から「会社選び」が❝一般的❞に行われることになった。企業側も内定辞退への対策を採用活動の一部として制度化させている。 では、複数社から内定を得た新卒者は、最終的に入社する1社に絞り込む際、最も重視した「会社選び」のポイントはどこにあったのだろうか。 株式会社リクルートキャリアの就職みらい研究所の調査によれば、「就職先を確定する際に決め手となった項目(2020年卒学生上位10項目)」は、 「自らの成長が期待できる」56.1%であった。 ちなみに2019年卒も「自らの成長が期待できる」が最も多い決め手ではあったが、その割合は47.1%であり、2020年卒はより「自らの成長」を就職先に求めていることが分かる。 一方で、「就職先を確定する際に決め手となった項目」の中で、 「会社・団体の知名度がある」(20.5%)、 「会社・団体の規模が大きい」(20.2%)、といった「大企業志向」と称されたマインドは選択の基準から後退している。 自らの成長機会をより見出せた企業に入社を決めることは、自立的なキャリア形成の面からは好ましい傾向といえる。 しかしながら、「就職先を確定する際に決め手となった項目」の中で、「ゼミや研究等、学校で学んできたことが活かせる」が2番目位に低い17.8%となったことは注意が必要と思われる。 就職・採用の❝ゲンバ❞において、たびたび「大学で学んだことは会社ではほとんど役に立たない」といったセリフを耳にすることがある。 確かに、大学で学んだ学問「そのもの」が直接仕事に役立つという職業は限られているかもしれない。 しかしながら、「働き方改革」が進む日本において、1時間で生み出す付加価値を高めるためには、従業員全員が持てる知識と知恵を全て動員して、生産性を高める必要がある。 顧客から求められている商品・サービスの核は何で、商品・サービスの質を高めるためにどの点を改善すべきで、具体的に改善を進めるプロセスをどのように構築していくか、などの生産性向上活動は、大学における様々な学問の基礎となる論理的思考力が発揮される場面といえる。 さらに事業転換を促されている業界において、事業転換を図るための精緻な現状分析や新たな事業展開のためのロードマップ作製には、やはりあらゆる学問の基礎となるデータから事実を推論していく分析能力をフル活用すべき場面といえる。 会社を選ぶ決め手に「自らの成長が期待できる」が最も多くの新卒者が共感していることは、自立の観点からは将来に明るい希望が持てる傾向といえる。さらに言えば、会社は4月に入社した新卒者に対し手厚く教育を施すが、その教育に加えて、社会人となった新卒者が自ら学んでいくことも期待したい。 企業横断的なキャリア形成を望む際も、自ら業を起こすことを望む際も、必要となるのは、さまざまなファクターを俯瞰し、社会的に有用な商品・サービスに構築するための論理力だと思われる。 仕事の基礎を成す論理力は、どのような学部学科に所属し、どのような学問を学んだとしても身につけられる素養といえる。 その意味で、「ゼミや研究等、学校で学んできたことが活かせる」ことが就職先を確定する際の決め手としてもっと重視されても良いのではないかと思う。 最後に、新卒者の半数以上が就職先を選ぶ際の決め手を「自らの成長が期待できる」としたことを、社会人になった後も、この原点を心に留めていて欲しいと願う。 自立的なキャリア形成には、会社から施される教育だけでは不足する知識、経験が必ず出てくる。長い職業人生の中で、望む働き方、生き方を再構築すべき時が来たとして、実現できるかどうかは、どれだけ主体的に知識と経験を得てきたかに掛かっていると思う。 社会人のスタートに自ら成長したいと願ったことを大事にして、研鑽を積み、「やりたいこと」を成し遂げて欲しい。 2016年、政府が行った「社会生活基本調査」によれば、 職業に就いている社会人の6割は自ら学んでおらず、 職業に就いている社会人の学びの時間を平均すると6分、 これが現在の社会人の実情であった。 これからの社会人に出る若者には成長を期待したい。 【引用・参考文献】 ・「就職プロセス調査(2022年卒)『2021年10月1日時点 内定状況』」就職みらい研究所(2021) ・「就職プロセス調査(2022年卒)『2021年9月1日時点 内定状況』」就職みらい研究所(2021) ・「就職プロセス調査(2020年卒)【確定版】『2020年3月度(卒業時点)内定状況』」就職みらい研究所(2021) ・「平成28年社会生活基本調査」総務省統計局(2016年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 チャット不安悩み相談

就職先は?会社名or職種

新卒者の就職相談の現場では、学生に卒業後の進路を尋ねることがあります。 卒業後の進路が決まっている学生の答えには、大きく2つのパターンがあることが気がつきます。 質問「卒業後の進路は決まりましたか?」 回答例①「はい、株式会社〇×△商事に決まりました。」 回答例②「はい、システムエンジニアに決まりました。」 もうお分かりかと思いますが、回答例①では卒業後に就職する「会社名」を答える一方、回答例②では卒業に就く職種を答えています。 以前は多くが就職先である「会社名」を答える学生が多かったですが、近年では、システムエンジニア、広報、ライターといった「職種」を答える学生が増えてきています。 自立的なキャリア形成の側面からは、特定の「職種」を自ら選び、専門性を高めようとする傾向は、好ましいことだと思います。 これまでは総合職の名のもとに、新卒で入社した会社の人事戦略に基づいて配置され、配置された職種で経験を積んでいくことが「あたり前」のように行われてきましたが、主体的なキャリア形成を望む若者が増えたことで、会社主導の配置配属制度はやや制度疲労を起こしつつあるのではないでしょうか。 望む職種を提供し、従業員が高いモチベーションを維持することで、結果として会社も好業績を上げることが好循環を生むのではないでしょうか。 総合職から、専門職へ。 個人と会社の利害が一致する、新しい人事処遇制度の構築が急がれます。 ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

会社の「選択理由」の変遷

大学から社会へ、新卒者はどのような理由で社会人第一歩目を歩みだす会社を選んでいるのだろうか。 公益財団法人日本生産性本部では、1969年から「新入社員働くことの意識調査」を実施しており、その調査結果から見てみよう。 1971年調査における新入社員が「会社を選ぶとき、あなたはどういう要因をもっとも重視」した項目は、「会社の将来性」が最も高く27%であり、次いで「自分の能力、個性が生かせるから」19%といった結果であった。 1971年調査時点で、会社選びで最も重視されていた「会社の将来性」ではあったが、1974年調査において「自分の能力、個性が生かせるから」が最も高い選択理由にあげられて以来、2019年調査までトップを守り続けている。 さらに象徴的なのが、「会社の将来性」を会社選びの重視項目にあげる新入社員は、漸次減少を続け、2001年調査では選択肢の中で最も選ばれない事項となった。2019年調査でも最下位となっている。 一方、会社の将来性は最重要事項ではなくなって久しいが、これをもって、現在の新入社員は「会社に頼らず、自立した働き方志向」になっていると言えるだろうか。 筆者が気になったのは、会社選びの重視項目の中で「技術が覚えられる」からが13.1%に止まっていること。 自立したキャリア形成を行うという点から重要になってくることが、個人が習得した技術・技能であると考えるが、会社選ぶの際には技術・技能の点があまり重視されていない傾向が見て取れることから、長期的な自立的キャリア形成について学ぶ機会が求められるのではないかと危惧している。 低技能、断片的・限定的熟練をキャリアで重ねるのではなく、高技能、職業的熟練を積みキャリアアップしていくことが、個人にも、わが国全体にとっても求められているのではないか。 【引用・参考文献】 ・「平成31年度新入社員『働くことの意識』調査結果」公益財団法人日本生産性本部(2019年) ―新卒就活生のためのオンライン就職相談 メッセンジャー・チャットアプリ

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